2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Law and Human Behavior |
Project/Area Number |
23101005
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
高木 光太郎 青山学院大学, 社会情報学部, 教授 (30272488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇中 洋 大谷大学, 文学部, 教授 (10319478)
森 直久 札幌学院大学, 人文学部, 教授 (30305883)
大橋 靖史 淑徳大学, 社会学部, 教授 (70233244)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | 被疑者面接技法 / 虚偽自白防止 / 供述心理学 / 法心理学 |
Research Abstract |
平成25年度はまずイギリス、アメリカ、および日本の取調べ技法の比較検討を行い。日本の取調べ実務におけるコミュニケーションの構造的特性と、そこに作用する自白圧力の特性の解明に向けた研究を行った。3カ国の取調べの特性を確証/実証(取調官の仮説と合致する情報の収集/被疑者の供述を通して犯行体験の有無を確認)、反省/情報(被疑者から反省の弁を得ることを重視する/被疑者から事件についての説明を得ることを重視する)という2次元で整理したところ、日本における冤罪など重大な問題のある取調べは確証と反省が重視されている傾向があることが確認された。また比較的適切と評価できる取調べの場合は、情報収集を重視しつつ取調べの過程で確証から実証への移行がみられることが見出された。このうち確証が重視される傾向はアメリカのREIDテクニックにもみられた。しかし反省を重視する傾向についてはイギリス、アメリカの取調べでは確認できなかった。 以上の分析を通して見出された日本の取調べにおける反省を重視するという特異的な傾向は、取調べの過程で被疑者に不必要な圧力をかけることに結びつく危険性があることから、なんらかの是正的な対応が必要となると考えられる。しかし、予備的に実施した文化心理学的な検討によれば、日本の捜査や裁判においては被疑者・被告人による反省と供述の信用性を不可分に結びつけて捉える強い文化的傾向性があり、その是正は容易ではない可能性が示唆されている。したがって日本において有効に機能する取調べ技法を提案する場合には、反省をめぐる文化的信念の解明と、それに対する対処方策の検討が不可欠となると予想される。平成26年度は、この点についてさらに実証データの収集を含めて検討を深めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は日本の取調べにおいて「被疑者による反省」が重視されているという極めて重要な知見を得ることができた。しかし、この知見を得るためにイギリス、アメリカ、日本の取調べの比較分析に時間を使ったため、予定していた捜査関係者等へのインタビュー、捜査面接技法のプロトタイプの提案という研究課題を達成することができなかった。しかし「被疑者による反省」の重視という問題を見出すことによって、インタビューおよびプロトタイプの提案について非常に明確な指針を得ることができた。このため研究の進展状況としては「おおむね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に日本の取調べにおける「被疑者による反省」の重視という重要な知見を得ることができた。これによって捜査関係者等へのインタビュー、捜査面接技法のプロトタイプの設計、模擬取調べ実験の計画、などに非常に明確な指針を得ることができている。今年度は、この指針にしたがって着実に研究課題を達成していくことをめざす。また「被疑者による反省」の重視という現象については、文化心理学的な視点からのさらなる検討が必要であると考えられるので、これについても平行して研究を推進していく。このように研究課題に当初予定よりもやや広がりが生じたため、平成26年度から連携研究者を1名追加し、より効率的な研究実施をめざすこととした。
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