2013 Fiscal Year Annual Research Report
目撃証言の正確さを規定する要因および正確さを担保する識別・尋問方法に関する研究
Project Area | Law and Human Behavior |
Project/Area Number |
23101006
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
厳島 行雄 日本大学, 文理学部, 教授 (20147698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 聰 駿河台大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00156481)
北神 慎司 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (00359879)
高橋 雅延 聖心女子大学, 文学部, 教授 (10206849)
伊藤 令枝 日本大学, 理工学部, 助教 (60548056)
室井 みや 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (70339240)
山田 寛 日本大学, 文理学部, 教授 (80191328)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | 目撃証言心理学 / 識別方法 / 記憶の正確さ / システム変数 / 推定変数 / 耳撃証言心理学 / 裁判心理学 |
Research Abstract |
平成25年度は、国際的なジャーナルに成果を報告できた。これは、スキーマが記憶に及ぼす影響に関する研究成果で、今までスキーマというとシーンのスキーマや職業のようなスキーマであった。このプロジェクトの研究では、行動のスキーマとシーンのスキーマの両方を設定し、それぞれのスキーマの一致不一致で記憶にどのような影響が出るのかを検討し、シーンスキーマと行動スキーマとが相互作用することを明らかにした。さらに事後情報効果、言語隠蔽効果の研究成果も生み出した。 また情動と凶器注目効果に関しても国際学会で発表した。こちらは、眼球運度を指標にした研究から凶器への注目がきわめて早く行われること、また情動による耳撃にはネガティブな効果があることも示した。さらにシステム変数研究においては、識別後の確証的情報が目撃者の記憶の質の変更を起こさせ、実際には誤った人物を選んでも、自分の記憶の正しさを信じてしまうことを明らかにした。また識別におけるダブルブラインド法に関する実験研究を行ったが、従来言われているこの方法の安全性にも、反復識別を行わせるとその安全性が危ぶまれる可能性が見つかった。 皮膚感覚の研究では、実際に痴漢えん罪事件と言われている事件のシミュレーション実験を行い、この実験をもとに鑑定書を作成した。その事件では、無罪が確定した。さらにその研究結果が「法と心理学会」の優秀発表賞をもらうことになった。 最後に、研究成果の社会的還元ということで、昨年9月に北海道大学において、目撃者証言心理学の専門家養成講座を、3日間の合宿形式で実施した。合宿では実際の事件を例に目撃証言の基礎から鑑定に必要な方法論が展開され、実際の鑑定の実習まで行った。高度に専門的知識を必要とするために、博士後期課程以上の学歴者を対象としたが、きわめて評判がよく、その後のより高度な講座を望む声が多い。今後の展開を考えたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究がスタートして3年が終了した。目撃者の記憶を極力正確に引き出し、目撃者の記憶に否定的な影響を及ぼすような要因を排除する方法に関しては、国外で多くの研究が展開されいてる。これらの研究のレビューの進捗状況は順調に進んでいる。ただ、目撃者の記憶の正確さに影響する要因研究はきわめて膨大であり、その中で重要な鍵と成る要因研究を選りすぐり、また特に識別に関わる正確さに関する文献の収集は時間のかかる作業であることがわかった。これは、国内の研究者の数がまだまだ少なく、この領域の重要性(誤判防止、人権の保護等)にも関わらず、研究領域の広がりと深さがまだまだ行き渡っていないことの証であるかもしれない。しかし、そのような現実であれ、3本の研究の柱が重要であることがわかってきた。 1.研究領域を整理して、その下位領域を明らかにし、それぞれの領域のおける科学的知識の全貌を示すこと。2.それらの領域の概観から、識別に関わる部分の研究領域を明確にすること。3.2で行われた作業から、正しい識別研究に不足している、もしくはその研究を行うことで実務がより正確に行われるような研究を実践すること、である。 もちろん、社会的な還元を考える場合には、その還元の方法についても十分考慮する必要がある。本研究課題では、上に示した1、2、3のそれぞれ、そして社会的還元に関しても、セミナーや実際の鑑定を通しての還元が行われているが、最終的な目的であるガイドラインの策定に向けた、一層の知識の充実が望まれる。総括として、1と2に関してはその成果としての目撃緒言の心理学本の中で、基本的な枠組みを示せるところまできている。3の実験的検討も推定変数、システム変数に関する研究成果が出ている。最後の社会的還元でのガイドラインの策定は、具体的には26年度からの仕事となる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成について説明したところの遂行のプログラムをさらに強力に押し進めていくことが重要である。具体的には、1)文献の整理と体系化を進めること、2)目撃班での実験的事実の提供とその結果の位置づけ、3)1)と2)の関係性の整合的な解釈ないしは理論化を行っていく。さらに4)社会的還元の具体的方略の作成、5)ガイドラインの下敷きを作成すること、以上の5点を中心に計画を推進していくことが重要と考える。以下、それぞれの領域における推進方策を述べる。 1)文献の整理と体系化:これに関しては初年度から実施しているが、データベースの作成とともに展開中である。今後は、システム変数と推定変数、記憶の段階に応じた分類のような従来の区分に対応させた整理を進めていく必要がある。 2)たとえば、今回の実験的研究ではスキーマの記憶への影響が、実は従来の研究が示すシーンのスキーマや言葉から換気されるスキーマのような比較的静的なものではなく、特定のシーンの行動もしくは動作スキーマの存在を考慮すると、シーンと行動の両スキーマの相互作用によって我々の記憶が決定されること、そのためのエラーも存在しうることを示した。このことは、目撃者はいずれのスキーマを選択的に(それが自動的であれ意図的であれ)、使用したかに依存する可能性を示唆している。このような発見を記憶研究の枠組みに位置づけ、さらに目撃証言の心理学の中での位置づけを行う必要があることを示している。それを実践すること。 3)2)で述べたことを理論的背景の中で実践すること。 4)社会的還元に関しては、司法関係者への情報提供(講義、講演会、セミナーの実施等)、一般市民への知識の提供(新聞、雑誌、講演会など)を通し、実践を展開していく。そのような中で実際のガイドラインの説明を行う。特に司法関係者にはガイドラインの意味と実践(特に捜査側、検察)を呼びかける。
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Research Products
(35 results)
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[Presentation] Ear-witness under stress
Author(s)
Yukio Itsukushima & Yui Fukushima
Organizer
Society for the Applied Research in Memory and Cognition X
Place of Presentation
Rotterdam, Hotels Rotterdam Center
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