2013 Fiscal Year Annual Research Report
裁判員の判断過程に影響する認知的、および社会的影響に関する研究
Project Area | Law and Human Behavior |
Project/Area Number |
23101008
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊東 裕司 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (70151545)
|
Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 裁判員 / 事実認定 / 判断バイアス / 模擬裁判員実験 / 説示 / 模擬評議 |
Research Abstract |
本研究では、1.裁判関係者に対するインタビューなどを通しての、裁判員の判断に影響を与えると考えられる要因の洗い出し、2.模擬裁判員実験を通しての裁判員の判断に関する心理学的検討、3.これらの成果の法実務への応用、の3つの段階からなるサイクルを複数回すことによって研究を進めている。本年度は、まず第1段階の研究として、元判事1名と弁護士6名を対象にインタビュー調査を実施した。その結果以下の点が実験的研究で扱うべき問題点として浮かび上がった。(1)裁判員が、被告人の更生可能性を重視する傾向がある点が、判断にどのように影響するか。(2)裁判員が、自身の個人的経験に照らした判断をする傾向があるのか。あるとしたら、そのことが裁判員裁判の運用においてどのような問題につながるのか。(3)否認事件で有罪と判断された場合に、被告人の否認が量刑判断にどのように影響するのか。裁判官裁判と比べ、大きく影響することはないか。(4)裁判員の中に突出した意見を声高に述べるものが複数いた場合、評議はどのような影響をうけるのか。(5)裁判官の説示の与え方により評議はどのような影響を受けるのか。 第2段階の研究として、この結果も受け、約100名の模擬裁判員と17名の模擬裁判官により17の評議体を構成し模擬評議実験を行った。否認事件の模擬裁判ビデオを材料として、間接証拠による立証について具体的で十分な説示を行う条件と、一般的な説示を行う条件を設け、主に各裁判員、および評議体の有罪無罪の判断、その際の各証拠の扱い、および言語データの分析による評議プロセスの分析を行った。その結果、有罪判断の率、各証拠の証明力の評定に条件間で大きな差はみられなかった。説示が評議プロセスに与える影響については、現在分析を行っているところである。 第3段階については、2の実験を行った際に研究者、法実務家、一般聴衆を集め、意見交換を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
法実務家のインタビュー調査の実施、研究会の開催などに加え、他の班と共同で大規模な模擬裁判実験を行うことができた。これら、特に模擬裁判実験により、裁判員に対する質問紙の結果に加え、評議過程の録音などの豊富なデータを収集することができた。ただし、模擬裁判実験の実施を年度の終わりに設定する必要があり、録音データの書き起こしなどは既にほぼ終わってはいるものの、結果の分析が次年度回しとなってしまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
模擬裁判員の評議プロセスの検討を行うために2013年度の終わりに収集したデータの分析を最優先で行う。また、インタビュー調査については、今年度行った法実務家へのインタビューに加え、裁判や裁判員制度に興味を持つ一般市民に対するインタビューも行う。その他、評議プロセスを検討するための実験を、模擬裁判員による評議実験を含め、複数行い、法実務に対する提言につなげる。今年度に引き続き、他班との連携も強化して行っていく。
|
Research Products
(3 results)