2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Law and Human Behavior |
Project/Area Number |
23101010
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
仲 真紀子 北海道大学, 文学研究科, 教授 (00172255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白取 祐司 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10171050)
城下 裕二 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90226332)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | 司法面接 / 被害者 / 目撃者 / 被疑者 / 出来事の報告 / 記憶 / 情報収集アプローチ / NICHDプロトコル |
Research Abstract |
司法面接とは,被害者,目撃者となった可能性のある子どもから,精神的な負担をかけずに,より正確な情報を引き出そうとする面接法である。子どもが巻き込まれる事件や虐待通告が増加していることから,司法面接法の改善やその研修プログラムの開発は喫緊の課題である。本研究課題の目的は,司法面接法,およびその研修プログラムを,3つのアプローチ,すなわち【1】基礎研究(実験,調査,文献研究,国外調査等),【2】研修(専門家に研修を行い,研究成果を提供するとともに,フィードバックを得る),【3】実事例の検討により研究し,開発・改善することである。25年度は以下の活動を行った。 【1】基礎研究:①実験結果の分析:司法面接では,面接は録画され,後の判断に用いられる。昨年度実施した2つの実験(質問タイプと映像の撮り方が子どもの証言の評価に及ぼす影響)の結果を国内外で報告した。また,子どもの時間概念の発達につき,データ収集を行い,を分析し,国内で報告した。②論考:心理学鑑定が満たすべき要件について,米国の連邦証拠則や判例を参考にしながら考察し,論文を執筆し,公刊した。また,子どもへの面接法を,被疑者取調べ,家事事件での面接に拡張する試みを行い,論文を執筆した。③展望論文:英語による展望論文を2本公刊した。また,司法面接の現状に関する国際比較論文を,米英の研究者と共同執筆した。さらに,司法面接に関する発達心理学研究を,英語による書籍のチャプターとして執筆した。 【2】研修:北海道大学において3回(計6日間),司法面接研修を実施した。対象は児童相談所職員,警察官,検察官,家庭裁判所職員等であり,研修者数は約73名であった。 【3】実事例:14件の現実の面接を支援/分析し,関係者に情報提供を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【1】基礎研究,【2】研修,【3】実事例の検討のそれぞれについて,実質的な成果を挙げたことから上記の判断とした。以下,【1】の子どもの時間概念に関する分析と【2】の研修について,より具体的に述べる。 【1】子どもの時間概念の発達:事実確認おいては「いつ」と「どこ」の特定が重要である。しかし,実事例や,時間概念に関する先行研究は,この特定が容易ではないことを示唆している。特に時間については,順序(月曜日と水曜日ではどちらが先か),サイクル(週は繰り返される),構造(年の下に月,月の下に日)等の理解が,児童期を通じて発達すること,「いつ」への言及は「誰」「どこ」等に比べ遅れることなどが示されている。とはいえ,「昨日のことお話して」「おととい何があった」など,日を特定して出来事の報告を求めなければならない場合もある。本研究では,82人の4-15歳までの幼児,児童,生徒を対象とし,今日,昨日,おととい,一週間前といった特定の日を手掛かりとして出来事を検索することができるのか,また,そもそもどの程度時間を表す語彙を有しているのかについて調査した。その結果,すべての対象者が想起できたのは「今日」であり,昨日,一昨日でも報告率は下がること,1週間前は10歳児,1ヶ月前は14歳児でようやく8割であること,日時を表す語彙については,「今日」を中心に,時間的距離の近いところから理解,そして産出が可能になること,高学年であっても月の区別やうるう年の理解は十分ではないことなどが示された。これらの結果を,2013年9月の日本心理学会,2014年の3月発達心理学会において報告した。 【2】研修:北海道大学で2013年6月,10月,11月の3回(計6日間),司法面接研修を実施した。福祉,司法,医療の各領域からの参加があったため,多職種連携によるロールプレイが可能となった。研修では,特に意味記憶とエピソード記憶の区別に焦点を当てた。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度も,司法面接支援室を基盤とし,以下の活動を行う。 【1】基礎研究:①出来事を報告する語彙:前年度の時間語彙の調査の分析を進め,必要であれば補足調査を行う。語彙の習得と出来事の報告の関連性についても検討を行う。②子どもの証言の評価:司法面接により得られた情報を,市民がどのように受け止めるかを質問の種類(オープンか,クローズドか)については,概ね分析は終えているが,判断の理由につき,さらなる分析を行う。③司法面接研修の効果:司法面接研修を受けることが,被面接者から得られる情報量にどのような影響を及ぼすかを事前事後で調査し,分析する。特に,研修を受けることが,被面接者から得られる情報の質にどのような影響を及ぼすかや,研修の効果に関する主観的な判断,自身が司法面接を行う場合の自信や,機関においての実施可能性,多職種連携の利点,問題,実現可能性等についての意識を調査する。④質問の種類と報告との関連:すでに収集してある児童の面接を分析することにより,面接における面接者の発話の種類と,子どもの報告の量および質について検討する。④この他,面接における補助物(人形や描画)が報告の量や質に及ぼす影響,目撃証人の属性が供述証拠の信頼性評価に及ぼす影響,逆境にある子どもの言語能力,司法に携わる実務家の面接の特性等についても実験室,およびフィールドでデータを収集し,分析する。これらの基礎研究により得られる知見は,国内外の学会等で報告するとともに論文としてまとめる。 【2】研修:昨年度に引き続き,北海道大学において6月,および10月,11月に計3回(6日),司法面接研修を実施する。対象は児童相談所職員,警察官,検察官,家庭裁判所職員等とする。研修では,司法面接に関する専門家の意識を調査する。 【3】実事例:昨年度に引き続き,要請に応じて司法面接の実施・支援を行う。
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Research Products
(30 results)