2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Law and Human Behavior |
Project/Area Number |
23101010
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
仲 真紀子 北海道大学, 文学研究科, 教授 (00172255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白取 祐司 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10171050)
城下 裕二 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90226332)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 司法面接 / 被害者 / 目撃者 / 被疑者 / 出来事の報告 / 記憶 / 情報収集アプローチ / NICHDプロトコル |
Outline of Annual Research Achievements |
司法面接とは,被害者,目撃者となった可能性のある子どもから,精神的な負担をかけずに,より正確な情報を引き出そうとする面接法である。警察白書等の統計によれば,近年,犯罪件数は減少しているものの,虐待やDV等,親密な関係性のなかで起きる子どもへの加害は増加しており,司法面接法の改善やその研修プログラムの開発は重要な課題となっている。本研究課題の目的は,司法面接法とその研修プログラムを,3つのアプローチ,すなわち【1】実験・調査等の基礎研究,【2】専門家への研修,【3】実事例の検討により研究し,開発・改善することである。26年度は以下の活動を行った。 【1】基礎研究:①実験・調査:第一に,前年度に引き続き,「時間語彙」に関し,会話データを収集した。第二に,「オープン質問とクローズド質問の評価」につき,前年度の市民・学生のデータに加え,心理,福祉,司法の専門家から資料を得た。第三に,司法面接研修の評価の一貫として,「面接者はどのような情報を収集し,どのような情報を伝達すべきと考えているのか(収集すべき情報,伝達すべき情報)」につき調査した。これらの成果を国内外の学会で報告した。②論考:実事例の面接支援や録音録画の評価が,供述分析の方法にどのような変化をもたらしたかを,法と心理学会のシンポジウムで討議し,学会報告としてまとめた。③国際共同研究:英国のLa Rooyほかと共同し,世界各地の司法面接の現状や,研修における工夫や課題について検討し,国際誌に投稿した。また,英国のWalshらが編者となった英文書籍の「被害者への面接」の章を執筆した。 【2】研修:北海道大学で3回(計6日間),児童相談所職員,警察官,検察官,家庭裁判所職員等約80名に司法面接研修を実施した。 【3】実事例:幼児,知的障害者を含む15件の現実の面接を支援/分析し,関係者に情報提供を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【1】基礎研究,【2】研修,【3】実事例の検討のそれぞれで実質的な成果を挙げたため,上記の判断とした。以下,【1】の「収集すべき情報,伝達すべき情報」と【2】の研修について,具体的に述べる。 【1】「収集すべき情報,伝達すべき情報」:司法面接は,普段の出来事(スクリプト記憶:パパはいつも叩く)ではなく,特定の出来事(エピソード記憶:パパが昨日叩いた)に関する情報を得る事を目指している。それは,事件の対象となるのは特定の日時,場所で起きた出来事であり,被疑者の防衛権を守るためでもある(その日時,場所のアリバイを示すことで,加害の疑いを退けることができる)。また,司法面接では,正確な情報をより多く得るために,面接での約束事(「本当のことを話してください」「知らないことは知らないと言ってください」「どんなことでも全部話してください」等)を示し,たくさん話すことを促す。このことの理解における研修の効果を調べるため,研究1では,心理司,福祉司,司法関係者(警察官・検事等)等計98名,研究2では計110名を対象に,研修前後に調査を実施した。「パパが叩いた」という事例を示し,収集すべき情報15項目(人物,場所,出来事,パパの性格*,子どもの気持*等),伝達すべき情報12項目(面接での約束事,話したくなければ話さなくてもよい*,面接者の体験*等)を示し(*は重要度の低い項目),調査1では選択式,研究2では4件法で,回答を求めた。その結果,研究1,2とも,*項目に関する理解は,研修前後で有意に向上した。これらの成果は日本心理学会,発達心理学会,国際応用心理学会議等で報告した。【2】研修:北海道大学で2014年6,10,11月の3回(計6日間),司法面接研修を実施した。福祉,司法,医療の各領域からの参加があったため,多職種連携によるロールプレイを促進した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度も,司法面接支援室を拠点とし,以下の活動を行う。 【1】基礎研究:①時間語彙:26年度に収集した「時間語彙」を含む会話資料の分析を進める。②「オープン質問とクローズド質問」の評価:26年度には,非法曹の市民・学生のデータに加え,専門家のデータを収集した。これを踏まえ,裁判員となり得る市民・学生と専門家の見方の違いにつき検討する。③司法面接研修の効果:これまでの実験・調査により,研修が面接の質を向上させること(オープン質問をより多く,クローズド質問をより少なく使う)や,それに伴い,被面接者の報告量が増えること,また,研修を受けることで,収集すべき情報,伝達すべき情報につき,理解が高まることなどが示された(26年度成果)。しかし,現場で司法面接を実施したことがないとする専門家も少なくない。そこで,専門家が,何を司法面接の実施に関わる阻害要因と考えているのかについて調査を続ける。特に,研修の効果に関する主観的な判断,司法面接を行う場合の自信,機関における実施可能性,多職種連携を行うことの利点や課題等について調査する。④最終年度であるので,これらの成果を広く国内外のシンポジウム等で発信し,公表する。また,研修プログラムに反映させ,専門家・実務家自身が,司法面接の実施や独自の伝達研修に活かせるようにまとめる。 【2】研修:昨年度に引き続き,北海道大学において6月,10月,11月に計3回(6日),司法面接研修を実施する。対象は児童相談所職員,警察官,検察官,家庭裁判所職員等とする。 【3】実事例:昨年度に引き続き,要請に応じて司法面接の実施・支援を行う。何度も聴取されることによる精神的二次被害を低減するために,多機関連携のコーディネートを強化する。また,収集すべき情報,伝達すべき情報に関する知見を活かし,面接の計画立案を重点的に支援する。
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