2014 Fiscal Year Annual Research Report
生体センサー腸上皮によるバイオスクリーニング法の開発
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
23102003
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 再生医療研究センター, 教授 (50451935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 哲也 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70265809)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腸管上皮 / 初代培養 / 天然物リガント / 活性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究を推進した結果、以下の成果を得た。 1.ヒト消化管生検組織より培養腸上皮オルガノイドを樹立し、継続的に培養するのみならず、凍結保存し、任意のタイミングで培養を再開することも可能であることを確認した。また、本培養法が消化管全域(空腸・回腸・結腸・直腸)のいずれの部位から採取した検体からも同様に実施可能であることを確認した。 2.上記培養系を用い、複数の生理活性物質を添加した際、オルガノイドの急速な腔外液の流入に伴う膨張現象(swelling)が誘導されることを確認した。本現象は生体内に内在する複数の生理活性物質、及び天然物リガンドであるForskolinによって誘導可能であることが明らかとなった。誘導可能な活性物質の特性から、コレラ感染症の際に生体内で惹起される上皮細胞内cAMPの上昇とCFTRを介したClイオンの急速な分泌をin vitroで再現したものと考えている。 3.上記にて確認したswelling現象を定量的に評価するスクリーニング系を構築するため、3Dスキャナーを用いたオルガノイドの形態評価法の開発を進めた。その結果、96 ウェルプレートを用いた培養系と新規開発された高速3Dスキャナーによる多重撮影スキャン・定量的画像解析を最適化することにより、swelling現象を定量的かつ多検体同時に評価可能な手法を確立し、これにより候補化合物のEC50等の算出が容易に可能となった。 これらの結果から、本計画が目指していた培養腸上皮オルガノイド構築を制御する天然物リガンドのスクリーニング系として、培養腸上皮オルガノイドのswellingを指標とした活性評価系の構築に成功した。本スクリーニング系の活用により、ヒト腸管上皮を介した体液制御を調節し得る天然物リガンドの大規模探索・評価が可能となることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究を推進した結果、マウス腸管上皮のみならずヒト腸管上皮においても培養腸上皮オルガノイドを安定して樹立する手法の確立が可能となった。また、同手法により消化管各部位から、その部位別特性を保持したまま培養が可能であり、かつ凍結保存により任意のタイミングで再培養・評価に用いる事も可能としている。このような手法により、天然物リガンドがヒト腸管上皮に発揮し得る活性評価が容易に実施可能となるのみならず、部位別の活性特性や背景疾患の有無による応答の差異なども評価可能となり、生理機能や病態と密接に関連したスクリーニング法を確立する上で不可欠の技術であると考えている。また、上記により樹立したヒト培養腸上皮オルガノイドを天然物リガンドの活性評価法としてswellingを指標とした活性評価系の構築に成功している。本評価系に用いた指標は生体内に於いてコレラ毒素により誘導される腸管上皮細胞内のcAMPの上昇とCFTRの活性化、これに引き続く大量のClイオン分泌をin vitroで再現し得ているものと考えている。従って、同病態に対し有効な活性を有する天然物リガンドのスクリーニング系として活用が可能であるのみならず、swellingを制御可能な天然物リガンドの解析により、消化管上皮を介した新たな体液制御機構が明らかとなることも期待できる。培養腸上皮オルガノイドを用いた高効率な天然物リガンド・スクリーニング系の樹立とこれを用いた新たな生体機能解析基盤の提供、は本分担研究の重要な目標の一つであり、今年度の研究推進によりその主たる目標を達成し得ていることから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上記により樹立したスクリーニング系を用い、ヒト培養腸上皮オルガノイドのswelling応答を制御するリガンドの評価を更に推進したい。候補リガンドとして、内因性生理活性物質とその誘導体等に加え、領域内の天然物リガンド・ライブラリも対象として推進したい。また、本年度研究に於いてヒト培養腸上皮オルガノイドへ安定して遺伝子導入する技術についても概ね確立済みであることから、同技術を用いた各種レポーター遺伝子を導入し、スクリーニング系として発展させることも課題に挙げたい。具体的には腸上皮幹細胞マーカー(Olfm4, LGR5)、分化マーカー(MUC2, Pla2g2a)、分化制御シグナル活性(Notch, Wnt)及び細胞増殖をモニター可能なFucciシステム等を蛍光蛋白でリアルタイムに追跡可能な系を構築し、これを同時にルシフェラーゼ・レポーター活性としてスクリーニング可能な測定系として発展させること、を推進する計画である。同研究の推進により、ヒト腸管上皮幹細胞の維持ならびに同細胞より増殖・分化する過程を経時的かつ定量的に追跡可能なスクリーニング系の運用が可能となり、天然物リガンドが有する未知の活性が明らかとなることが期待できる。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] RIPK3 regulates p62-LC3 complex formation via the caspase-8-dependent cleavage of p62.2014
Author(s)
Y. Matsuzawa , S. Oshima, Y. Nibe, M.Kobayashi, C. Maeyashiki, Y. Nemoto, T. Nagaishi, R. Okamoto R, K. Tsuchiya, T. Nakamura, M. Watanabe.
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Journal Title
Biochem Biophys Res Commun
Volume: 456(1)
Pages: 298-304
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Fluorescent labelling of intestinal epithelial cells reveals independent long-lived intestinal stem cells in a crypt.2014
Author(s)
N. Horita, K. Tsuchiya, R. Hayashi, K. Fukushima, S. Hibiya, M. Fukuda, Y. Kano, T. Mizutani, Y. Nemoto, S. Yui, R. Okamoto, T. Nakamura, M. Watanabe
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Journal Title
Biochem Biophys Res Commun
Volume: 454
Pages: 493-499
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Distinct Expression Patterns of Notch Ligands, DLL1 and DLL4, in Normal and Inflamed Mice Intestine2014
Author(s)
Hiromichi Shimizu, Ryuichi Okamoto, Go Ito, Satoru Fujii, Toru Nakata, Kohei Suzuki, Tatsuro Murano, Tomohiro Mizutani, Kiichiro Tsuchiya, Tetsuya Nakamura, Katsuto Hozumi, Mamoru Watanabe
Organizer
The 2nd Annual Meeting of Asian Organization for Crohn's and Colitis
Place of Presentation
Seoul (Korea)
Year and Date
2014-06-21