2012 Fiscal Year Annual Research Report
Discovery of natural products that modulate cellular responses
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
23102006
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井本 正哉 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60213253)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / キサントフモール / VCP / 前立腺がん / アンドロゲンアンタゴニスト |
Outline of Annual Research Achievements |
①オートファジーはリソソームを介して非選択的にタンパク質を分解する経路であり, がんや神経変性疾患に深く関わっていることが知られている.オートファジーを制御する化合物をスクリーニングした. その結果, カルコン類であるXanthohumol (XN)にその活性を見出した. 次にXNの結合タンパク質の探索を行った. その結果, valosin containing protein(VCP)を見出した. VCPは小胞体内で蓄積した不良タンパク質を細胞質へ輸送するのに関わっていることが知られているが,近年autophagyとの関連が報告されている.そこで実際にVCPがオートファジーを制御しているか調べるためにVCPをknock downした結果, LC3-IIの発現上昇が見られた.さらにVCP-GSTのリコンビナントタンパク質を用いたin vitro binding assayの結果, VCPはXNに直接結合していることが示唆された. ②前立腺がんの治療にはアンドロゲンアンタゴニストが用いられているが,既存の臨床薬は種類及びその構造が限られており,長期投与による耐性細胞の出現が問題となっている.そこで,既存薬とは異なる骨格のアンドロゲンアンタゴニストの取得を目的とした.AR結合化合物予測プログラムにより選別された16の候補化合物に対し,実際にARに結合するかどうかをin vitroで評価した.その結果,既存薬とは異なる構造を有するT5853872,3001607を取得した.この両化合物ともにヒト前立腺がんLNCaP細胞においてアンドロゲンの1つであるDHT依存的に発現上昇するPSA mRNA及び細胞増殖を濃度依存的に阻害した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① オートファジーはユビキチン‐プロテアソーム系と並んで重要なタンパク質分解系であり,細胞の恒常性維持に貢献している.しかし,オートファジーの生物学的意義や詳細なメカニズムは不明な点が多い.さらに近年はがんや神経変性疾患などの難治性疾患との関連も注目されている.我々はこのオートファジーを制御する化合物を微生物培養液から探索し,キサントフモールがVCPに直截結合し,その機能を阻害することでオートリソソーム形成を抑制することを見いだした.キサントフモールはこれまでに多くの研究者によって様々な生理活性が報告されていたが,その標的タンパク質は不明であった.したがって今回,我々がキサントフモールの標的分子としてVCPを同定できたことは波及効果が高いと期待できる.また既存の VCP 阻害剤は何れもVCPのD2 ドメインかD1ドメインに結合するが,キサントフモールは初めてのNドメインに結合するVCP阻害剤であり,目標を越えるインパクトの高い成果を得ることができた. ② 我々が今回見いだしたアンドロゲンアンタゴニストは,細胞レベルでもアンドロゲン作用の阻害と前立腺がん細胞の増殖阻害活性を示したことから,細胞内のメカニズム解析を行なう上で有用な化合物であることが示された.さらに放線菌培養液からマクロライド系の新規化合物と推定されるアンドロゲンアンタゴニストを見いだしている.この化合物は極めて不安定であることから単離・精製は難航しているが徐々に安定化が解決されてきており,近い時期に構造が解明できると思える.この点からも研究成果は予定通り進捗している. ③ 神経変性疾患細胞モデルでの治療薬シードの探索研究においては,既知物質に目的の活性を見いだした.現在更に探索を継続中である.
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Strategy for Future Research Activity |
疾患の発症シグナルに作用する小分子化合物(リガンド)はがんおよびパーキンソン症の疾患モデル系を用いて天然物リガンドの探索・創製とその作用機構解析を通した疾患シグナル伝達の解明を目的とする. ①前立腺がんの悪性化の原因であり,男性ホルモンの一種であるアンドロゲンのアンタゴニスト(AR-A)は前立腺がん治療薬シードとなる.そこで,構造多様性を有する微生物二次代謝産物からAR-Aの探索を行なう.②オートファジーはタンパク質を非選択的かつ大規模に分解する経路である.そこで我々はオートファジー制御化合物を探索し,Xanthohumol(XN)が目的の活性を有することを見出した.本研究では XNのオートファジー制御活性の詳細な機構の解明と抗がん活性発現機構解析を目的とする.③また,これまでの細胞死形態であるネクローシスとアポトーシスに加えて,オートファジー細胞死が注目されている.そこでオートファジー細胞死の誘導剤を探索するために,Tet-OnシステムでATG7 をノックダウンする細胞システムを構築し,このシステムを用いてオートファジー細胞死誘導物質を探索する.④がん転移や薬剤耐性,さらにはがん幹細胞といったがんの悪性化と深い関与が示唆されている上皮-間葉転換(EMT)を制御する天然物リガンドを探索する.ここでは上皮マーカーのE-cadherinの発現上昇,間葉マーカーのN-cadherin・Vimentinの発現減少があればMET誘導活性のあるサンプルとしてヒットとする.
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