2012 Fiscal Year Annual Research Report
Development and mechanistic analysis of new PKC ligands as anti-cancer agents
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
23102011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
入江 一浩 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00168535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳田 亮 香川大学, 農学部, 助教 (10598121)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プロテインキナーゼC / シグナル伝達 / debromoaplysiatoxin / bryostatin / phorbol ester / 発がん促進 / がん細胞 / 増殖抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋天然物 bryostatin 1 (bryo-1) は,副作用の少ない抗がん剤として期待されているが,天然からの単離収率はきわめて低く,供給面が大きな問題となっている.本研究代表者らは,天然発がん促進物質であるdebromoaplysiatoxin (DAT) の単純化アナログ (aplog-1) が,プロテインキナーゼC (PKC) にnMオーダーで結合し,bryo-1に匹敵するがん細胞増殖抑制活性を示すことを見いだした.本研究では,aplog-1をリードとして,合成が容易で化学的に安定なbryo-1等価体を開発するとともに,本化合物を分子プローブ化することによってその標的タンパク質群を明らかにし,創薬につながる知見を得ることを目的としている.今年度の研究成果は以下の通りである. まず高活性アナログを開発する目的で,aplog-1のスピロケタール部分の10位にメチル基を導入した.その結果,昨年度合成した4位あるいは12位メチル体とは異なり,10位メチル体はPKCδのC1Bドメインに対してサブナノモルオーダーで結合した.また,多くのヒトがん細胞株に対して,aplog-1よりも10倍以上高い増殖抑制活性を示した.さらに,本化合物の発がん促進活性をマウス皮膚発がん2段階試験により評価したところ,DATとは異なり,DATの5倍量の塗布によっても腫瘍を形成しなかった.以上の結果より,10-methyl-aplog-1は,新しいタイプの抗がん剤シーズになる可能性が示唆された.一方,aplog-1の側鎖の芳香環に様々な置換基を導入して定量的に解析した結果,がん細胞増殖抑制活性の変化は,分子疎水性の変化によって支配されていることが判明した.本知見に基づき,aplog-1の側鎖のフェノール性水酸基を介してFLAG-Tagあるいはプロパルギル基を導入した分子プローブの合成を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、aplog-1の高活性アナログを開発する目的で,スピロケタール部位の10位にメチル基を導入した誘導体を新たに合成した.その結果,昨年度合成した4位あるいは12位メチル体とはまったく異なり,PKCδのC1Bドメインに対してサブナノモルオーダーで結合し,多くのヒトがん細胞株に対して,aplog-1よりも10倍以上高い増殖抑制活性を示した.さらに本化合物は,マウス皮膚での発がん2段階試験において発がん促進活性をまったく示さなかったことから,bryo-1に代わる新しい抗がん剤シーズになる可能性が示唆された.本化合物は,特許申請するとともに,京都大学新技術説明会においても発表を行い,複数の製薬企業が興味を示している.以上のことから,当初の計画以上に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果を受けて,来年度は,10-methyl-aplog-1のがん細胞増殖抑制活性をさらに高めた誘導体の開発を行う.具体的には、スピロケタール部位の4位あるいは12位に不斉メチル基を導入し,さらなる活性の向上を目指す.昨年実施したaplog-1の側鎖の構造活性相関の結果より,更なる活性の増強が期待できる. 一方,本化合物のがん細胞増殖抑制機構を,bryo-1の標的酵素の一つと考えられているprotein kinaseδ (PKCδ) に焦点を当てて解析する.そのために必要なコントロールとしてのリガンド(PKCδに結合しないaplog-1誘導体)の設計と合成を進めている.
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