2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Particles Physics opening up the Tera-scale horizon using LHC |
Project/Area Number |
23104002
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
徳宿 克夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (80207547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
受川 史彦 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 教授 (10312795)
海野 義信 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (40151956)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / ヒッグス粒子 / 標準理論 / ピクセル検出器 / 耐放射線検出器 |
Research Abstract |
本研究ではLHCでの国際協力で建設されたアトラス検出器を用いてヒッグス粒子を直接発見し、ゲージ対称性の破れと質量の起源の謎の解明を目指す。 世界最高エネルギーの陽子陽子衝突型加速器LHCは、昨年に引き続き順調に稼働し、重心系エネルギー7TeVから8TeVにあげて運転して2012年には積分ルミノシティー20fb-1のデータを収集できた。 2012年6月までに収集したデータをもとに、7月にはついにヒッグスの見られる新粒子の発見論文を発表した。その後のデータも含めた解析を進めた結果、この新粒子が、2光子やZやW等の弱い相互作用を媒介する粒子に崩壊するモードがあることが確立し、また、この粒子のスピン・パリティも0+と無矛盾で、ヒッグス粒子であることをほぼ確定できた。 ヒッグス粒子のもう一つの性質である、フェルミ粒子への崩壊の観測に関しては、タウ粒子対への崩壊過程の探索を進め、11月には暫定結果を京都の国際会議で発表した。まだ崩壊を観測できる感度に至っていないが、標準理論の予言するヒッグス粒子と矛盾しないデータが得られた。この崩壊モードの検証へ向けて感度を上げる努力を進めている。 この崩壊の確定および、ヒッグス機構の精密検証には、さらに多くのデータが必要で今後10年以上にわたって研究を進めて行く必要がある。そのための感度を上げるための測定器の改良が重要になる。 n-in-pタイプのピクセル検出器の試作を行った上で、放射線損傷の影響を国内外のテストビームで試験した。センサー構造で放射線の影響が大きい場所が特定できさらなる改良設計を進めた。今後の放射線照射に当たって、作業者の被爆をさらに軽減するための装置を導入することにしたが、製作に時間がかかることがわかったので、この製作を繰越して実行し、実際次年度のテストビームで活用できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画2年間のデータでヒッグス粒子の発見を達成することができた。当初は2012年までには3σ程度の感度かと考えていたが、年度半ばで発見まで進むことができ、2光子に崩壊するモードでは7σの感度で新粒子の存在を揺るぎないものとできた。 これにより、新たなステップとして、今後はこの粒子の性質の精密測定に進むことができる。この粒子が、標準理論のヒッグス粒子と同様に真空の量子数と同じスピン0を持つことを確定できれば、これまでに発見された粒子とは全く別種類の素粒子が発見されたことになる。この粒子の性質を精査することで、素粒子の標準理論を超える新しい原理の発見につながる可能性がある。 この成功は、LHC加速器の順調な運転を受けてデータ収集が順調に進んだことが第一要因であるが、測定器の順調な運転と、光子、ミューオン、タウ粒子など、ヒッグスが崩壊して出て来る粒子を捉えるアルゴリズムの改良を進めたことも大きな要因である。 さらに精度を上げるためのピクセル検出器の開発も順調に進んでおり、放射線による劣化の問題点を特定出来つつある。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒッグスの発見の目的は既に達成できたので、ここからは、この粒子の精査を進める。今回発見した質量126GeVの粒子が、標準理論の予言するように唯一のヒッグス粒子なのか、あるいは他にも仲間の粒子が存在するのかは、この宇宙の成り立ちを理解する上で鍵となる問であるので、引き続き別な質量領域での探査を進める。並行してこの粒子の崩壊モードの精密測定を行い、標準理論を超える現象の発見を進める。 LHCは、2013-2014年の間改造を行い、2015年に重心エネルギーを13-14TeVにあげて再稼働する。このためこの2年間はこれまでに収集したデータの精査を進め、アルゴリズムの改良で探査感度を上げていく。特にτ粒子の同定方法の改善を進める。 一方で、長期に渡るヒッグス粒子の研究においてピクセル検出器を刷新することが重要であることも再認識したため、引き続き新しいピクセルセンサーの開発を進めていく。実際の入れ替えは2020年頃になるが、この研究期間内に、耐放射線性能を満たした新しいセンサーデザインを確立させ、量産が可能な状態まで到達させる。
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