2011 Fiscal Year Annual Research Report
レアメタルを用いないカップリング反応による精密合成設計
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
23105006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北 泰行 立命館大学, 薬学部, 教授 (00028862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土肥 寿文 立命館大学, 薬学部, 助教 (50423116)
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Keywords | 典型元素 / 有機触媒 / 脱希少資源 / ヨウ素 / 環境調和 / 合成化学 / 高活性化学種 / 炭素骨格構築 |
Research Abstract |
これまでの触媒の概念は遷移金属などの高い触媒能を鍵とするものが主であったが、金属の使用は資源枯渇、環境負荷、毒性等の面で懸念があり、環境調和型で持続可能な新しい合成技術としてヨウ素触媒を用いた新しい分子変換システムは注目に値する。本研究では天然に豊富なヨウ素を鍵として用い、初年度はまず、ヨードニウム化合物の構造と反応性の相関について詳細に研究し、ビアリール類やスピロ環状化合物の独創的合成法に関する以下の成果を得た。 1、芳香環に対する独自に有する極めて効率の良い直接的ヨウ素導入法と、生成するヨウ素を含んだ新規中間体の金属類似の反応性を利用し、金属試薬や触媒を全く用いずに不活性な炭素-水素結合に対して新規結合形成を行う斬新かつ応用性の高い反応をいくつか実現した。特に、官能基化されていない芳香族に対する新規クロスカップリング法について、その基質汎用性の拡大に成功した。 2、自己会合を促す分子設計を施すことにより、通常は不安定なある種のヨードニウム化合物の安定化と自在活性化に成功し、炭素不飽和結合に複数の官能基を網羅的に導入する新規合成手法を開発した。合成的に価値の高い応用として、本法を多官能基化されたキラルスピロ化合物の新規合成法として確立した。 3、独自に開発した架橋型ヨードニウム反応剤の持つ高い反応性と再生能を活かし、これらをヨウ素分子触媒として適用し、その高い触媒活性能を実証した。これを基に既存のヨウ素触媒プロセスの抱える効率面の包括的な解決を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に掲げた当初の研究目標について、概ね問題なく達成できている。また、研究成果の公表についても順調に行えている。研究経費についても、予定どおり無駄なく活用できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、ヨウ素が本来持つ性質を超えた化学挙動についてさらに探求し、金属を用いる合成に匹敵する日本発の新規手法の開発に挑戦している。日本に豊富なヨウ素資源を活かした有機分子触媒の開発と分子変換システムの構築は、世界的な資源ナショナリズムの進展の中で有意であり、各種元素の代替としても大いに魅力的である。本研究を通じ、ヨウ素が金属元素の反応挙動と極めて類似していることが明らかとなり、今や毒性の大きな鉛や水銀等の重金属酸化剤の代替としてだけでなく、レアメタルとも競争し得る元素となりつつある。ヨウ素を用いるこのような合成法は、一般に官能基を足掛かりとして結合生成を行う金属を用いる方法に比べ、より入手困難な多数の官能基を持つ生成物を得るのに都合が良い。そこで次年度は、初年度の研究内容をさらに深化させるとともに、物質創成やモノづくりを志向した分子変換への応用を目指したい。
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