2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子間相互作用ネットワークを駆使した革新的有機分子触媒による新反応開発
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
23105007
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹本 佳司 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20227060)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 祐輔 京都大学, 学内共同利用施設等, 助教 (90509275)
宮部 豪人 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (10289035)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | 有機触媒 / 不斉反応 / 水素結合供与分子 / 合成化学 / 複素環化学 / アレン化合物 / 反応機構 / カルベン触媒 |
Research Abstract |
アミノチオ尿素触媒が促進する不斉求核付加反応の詳細なメカニズムを実験化学的データに基づき解明することを目指し、反応中間体を模した基質の合成とスペクトル解析を行った。1H-NMR及びX線結晶構造解析の結果から、尿素部位の2つのN-Hプロトンがエノラート型のジケトン部位の酸素原子2つと水素結合していることを見出した。また、アミノ基はアンモニウムとなっており、予想していた中間体と似た構造となっていることを明らかにした。そこでBocイミンとのマンニッヒ反応を行ったところ速やかに反応は進行し、望みの付加体が単一のジアステレオマーとして得られた。これらの結果は、計算化学が提唱する反応機構を経てマンニッヒ反応及びヒドラジノ化反応が立体選択的に進行することを実験化学的に証明する結果である。 3-ブチン酸エステル類の触媒的不斉異性化反応による光学活性アレン類の合成はアトムエコノミーの観点からも効率的な合成法である。今回、改良型水素結合供与触媒がα位置換3-ブチン酸エステル類の動的速度論的分割に応用できることを見出した。すなわち、触媒は基質の異性化だけでなくα位のラセミ化反応を促進し、望みの光学活性三置換アレンを高収率、高エナンチオ選択的に与えた。α位に置換基を有する3-ブチン酸エステル類の不斉異性化反応はこれまでに全く報告がなく、本触媒反応が初の報告例となる。 アルデヒドとNHC触媒から生じるBreslow中間体を酸化することによって得られるアシルアゾリウム中間体は求核剤との反応により種々のカルボン酸誘導体へと容易に変換することができるため、近年注目を集めている。今回、適切なNHC触媒と酸化剤としてフェナジンを用いることでアルデヒドとチオールから種々のチオエステルを効率的に合成する手法を確立した。反応は非常に温和な条件で進行し、競合するチオールの酸化や還元体の求核性を制御できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、以下の4つの研究課題を計画した:(1)水素結合供与型有機分子触媒の触媒ライブラリーの充実と不斉触媒反応の開発、(2)アミノチオ尿素触媒反応の反応機構解明、(3)有機触媒を用いたラジカル反応の開発、(4)無保護の不飽和カルボン酸への不斉マイケル付加反応の開発。(1)については新しい触媒を5種類合成し、計画した4つの反応のうち、2つの触媒反応で有効利用できることを突き止め、内1つは論文化にも成功した。(2)については、当初計画した触媒と反応基質を連結した擬似複合体の合成に成功し、その3次元構造と分子内相互作用をエックス線とNMRで明らかにした。まだ完全な機構解明には至っていないが当初の計画を十分達成したと考えている。(3)については、ラジカル反応を促進する有機触媒の開発には成功したが、現在触媒反応への応用を探索している段階である。(4)については、分子間反応を促進する触媒の創製には至っていないが、分子内アザマイケル付加反応を加速するボロン酸触媒を見出すことができた。この結果は、今後のブレークスルーに繋がると期待できることから予想以上の成果を得たと考えている。以上の結果を総合すると概ね順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、これまで検討してきた4つの研究課題を継続して進展させる予定である:(1)水素結合供与型有機分子触媒の触媒ライブラリーの充実と不斉触媒反応の開発、(2)アミノチオ尿素触媒反応の反応機構解明、(3)有機触媒を用いたラジカル反応の開発、(4)無保護の不飽和カルボン酸への不斉マイケル付加反応の開発。さらに、最近NHC触媒とマイルドな酸化剤の組み合わせによりアルデヒドをカルボン酸を経由せずに直接カルボン酸誘導体(チオエステル)へ変換できる反応を見出したので、NHC触媒反応にも焦点を当てた研究を進める予定である。
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