2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Molecular Science for Nanomedicine |
Project/Area Number |
23107003
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
福田 紀男 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (30301534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小比類巻 生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40548905)
大山 廣太郎 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (70632131)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | ナノバイオシステム / 生体情報・計測 / 医用画像・バイオイメージング / バイオイメージング / 分子・細胞生理学 / 筋肉生理学 / 分子心臓学 / 生物物理学 |
Research Abstract |
細胞、個体の二方向から研究を行った。 (I)心筋細胞を用いた実験:ラットの幼若心筋細胞のZ線にAcGFPを発現させ、サルコメアの動態解析を行った。サルコメア長の測定精度は、世界最高となる3 nmであった(50 fps)。これらの幼若心筋細胞は電気刺激に応答し、サルコメア長の短縮・伸展が認められた。さらに、Caイオノフォアにて処理を行い、Caポンプ機能を阻害した上で幼若心筋細胞を低濃度のCa溶液に暴露すると、サルコメアの鋸波状の自励振動(Cell-SPOC)が観察された。これらの結果は、生理的な拍動条件下、幼若心筋細胞においてもサルコメアの自励振動機構が駆使されていることが示唆される。また、AcGFPの代わりにCa濃度に応じて蛍光強度を変化させるカメレオンをZ線に発現させることに成功した。サルコメアの短縮にともなってZ線(カメレオンの発現部位)の蛍光強度が上昇し、伸展にともなってそれが低下した。 (II)心筋細胞における熱依存性収縮実験:我々は、温度が上昇することによってCa非依存性に心筋細胞が収縮することを報告している(BBRC 2012)。昨年度、in vitro motility assayを用い、数℃の温度上昇によってアクトミオシン分子の活性が上がることを示した。さらに、幼若心筋細胞から任意のサルコメアを一つ選び、それに熱を与えることによって収縮を惹起することに成功した。 (III)In vivoマウス実験:In vivoマウス心臓において、単一サルコメアの動きを共焦点下に観察した(カメラ速度:100 fps)。すなわち、α-actinin-AcGFP発現組み換えアデノウイルスベクター(ADV)を作製し、これを麻酔・開胸したマウスの心臓に投与した。ADV投与2~3日後に心臓を摘出し、表面から共焦点観察を行った。心臓を停止させた静止時のサルコメア長は~2.0 umであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らは、本研究を通して、cardiac nano-medicine(心臓ナノ医学)の創成を目指している。H24年度は、その土台となるcardiac nano-physiology(心臓ナノ生理学)に関して研究を行った。申請者らの具体的な目標は、mmレベルの動きをともなう小動物個体の心臓から心筋細胞内局所の生体分子の挙動やイオン動態をnm精度で抽出できる顕微システムを新たに開発し、これを基盤として生体分子の集団がどのようにして心臓拍動のリズム調節機構を生み出すかをphysical sciencesの言葉を使って明らかにすることである。また、各心臓病のモデル動物を使い、心筋細胞ナノ領域における生体分子の挙動やイオンの動態がどのように変化して心拍のリズム破綻につながるかを明らかにする。H24年度、申請者らは、幼若心筋細胞を用いて、サルコメア長を3 nmの精度で解析できる実験系を構築することに成功した。この実験系を使うことにより、今後、例えば変異遺伝子などを組み入れることにより、病態時の収縮、弛緩の変化について、nmの精度で解析を行うことが可能になる。また、in vivoマウスを用い、心筋細胞内のサルコメア長変化をnm精度で計測する上で必要な基盤技術を開発した。これらの成果に加え、心筋細胞が温度に対して感受性を持っていることを見出し、この仕組みを分子レベルで明らかにした。よって、おおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度、以下の研究を行う。 1)In vivo心筋細胞内のCaならびにサルコメア情報を積み重ね、それらを心電図や心臓内圧などのマクロ情報と組み合わせる。これにより、Ca濃度上昇とそれに伴うサルコメアの収縮が心臓各部でどのようになっているかを系統的に理解する。また、心筋弛緩時に重要な役割を担っているKについても情報を得る。近年、心筋の再分極過程(Kチャネルが主に寄与)の異常が致死的な不整脈を惹起することが明らかにされている。各心疾患モデル(拡張型心筋症、肥大型心筋症、心筋梗塞、異型狭心症など)を用いて、致死的な不整脈が出現する仕組みを明らかにする。 2)iPS細胞は再生医療の切り札として、様々な疾患に対する臨床応用が期待される。これは、心疾患についても例外ではない。しかしながら従来型の心臓研究では、in vivoにおけるiPS細胞の効果を分子レベルで定量的に明らかにすることは困難である。そこで、iPS細胞をマウスの各心疾患モデルに投与し、iPS細胞がどのようなメカニズムで心臓に定着し、どのように機能を発揮するかを明らかにする。申請者らはすでにマウスiPS細胞の培養系を有している。 3)申請者らは最近、アクトミオシン分子の結合・解離に基づいたサルコメアの自励振動(SPOC)の数理モデルを開発することに成功している(Prog Biophys Mol Biol 2011)。現在のところ、このモデルはサルコメア一個を単位とした“ユニット”モデルであるが、これを直列化するとともに、CaやKなどのイオン情報も組み入れる。さらに、2次元、3次元化し、合胞体としての心臓モデルを完成させる。その上で、in vivoイメージングの実験をシミュレートし、アクトミオシン分子の結合・解離速度の変化やイオン拡散速度の変化がどのように心拍のリズム破綻をもたらすかを計算機の上で明らかにする。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Depressed Frank-Starling mechanism in the left ventricular muscle of the knock-in mouse model of dilated cardiomyopathy with troponin T deletion mutation ΔK2102013
Author(s)
Inoue T, Kobirumaki-Shimozawa F, Kagemoto T, Fujii T, Terui T, Kusakari Y, Hongo K, Morimoto S, Ohtsuki I, Hashimoto K, Fukuda N
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Journal Title
J Mol Cell Cardiol.
Volume: 63
Pages: 69-78
DOI
Peer Reviewed
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