2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Molecular Science for Nanomedicine |
Project/Area Number |
23107003
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
福田 紀男 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (30301534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
照井 貴子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10366247)
小比類巻 生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40548905)
大山 廣太郎 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (70632131)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノバイオシステム / 生体情報・計測 / 医用画像・バイオイメージング / バイオイメージング / 分子・細胞生理学 / 筋肉生理学 / 分子心臓学 / 生物物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋細胞ならびにin vivo心臓において、以下の研究を行った。 Ⅰ)幼若心筋細胞を用いた研究: 1)ラット培養幼若心筋細胞のZ線(α-actinin)にAcGFPを発現させ、各生理的条件下でのサルコメア長変化を解析した。サルコメア長の計測限界は3 nmであった(i.e., SL nanometry:J Gen Physiol 2014)。さらに、SL nanometryを赤外レーザーによる熱刺激法と組み合わせ、ラットの体温よりもわずか~1°C高い条件において高速(~10 Hz)のサルコメア振動(HSOs)が惹起されることを見出した(BBRC 2015)。HSOsはin vivo心臓において不整脈の発生に関与している可能性がある。2)1)の方法に基いて、AcGFPの代わりにCa濃度依存性に蛍光波長を変えるYC Nano-140をラット培養幼若心筋細胞のZ線に発現させ、SL nanometryを行った。その結果、世界で初めて、細胞内局所のイオン(Ca)濃度と分子(α-actinin)位置情報を抽出することに成功した(論文作成中)。3)マウスiPS細胞を分化誘導し、拍動するiPS心筋を得ることに成功した。これらの細胞には筋原線維が規則正しく形成されており、サルコメア長は約2.0 umであった。 Ⅱ)動物個体を用いた研究: 1)マウスin vivo心臓において、心筋細胞内のナノ分子情報を3次元的に抽出できる新たな顕微システムを開発した。このシステムを用い、マウスin vivo心臓において、心筋細胞内のサルコメアの動きやCaの動きを高空間(20 nm)・時間(100 fps)分解能で3次元的に捉えることに世界で初めて成功した(論文投稿中)。2)In vivo拍動中の心臓表面の心筋細胞に赤外レーザーを照射した。その結果、数℃の加温によって心筋細胞の収縮が増強することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、マウス個体の心臓から心筋細胞内局所の生体分子の挙動やイオン動態をnm精度で抽出できる顕微システムを開発し、生体分子の集団がどのようにして心臓拍動のリズム調節機構を生み出しているかを、物理学や化学、数学の原理に基づいて解き明かすことを目的としている。その上で、各心疾患病態の分子メカニズムを解明する。H26年度、申請者らは、AcGFPを心筋細胞のZ線に発現させ、3 nmの精度(カメラ速度:50 fps)でサルコメア長変化を計測することのできる系の構築に成功した(J Gen Physiol 2014)。また、Ca濃度依存性に蛍光波長を変えるYC Nano-140をZ線に発現させ、世界で初めて心筋細胞内局所のCa濃度とサルコメア長の同時計測に成功した(論文作成中)。さらに、赤外レーザーによって温度を上昇させると、生体温度よりも~1℃高い条件において、高速のサルコメア振動(HSOs)が惹起されることを見出した(BBRC 2015)。HSOsは、不整脈発生の根源となっている可能性があり、この発見は心臓の病態生理学において大きな意義を有していると考えられる。これら細胞レベルでの成果に加え、H26年度、in vivo心臓において、心筋細胞内のナノ分子情報を抽出できる新たな顕微システムを完成させた。すなわち、マウスin vivo心臓において、サルコメアの動きやCaの動きを高空間(20 nm)・時間(100 fps)分解能で捉えることに世界で初めて成功した。サルコメアやCaの動態解析はいずれも申請者らが独自に開発したものである。今後、これらの技術を駆使することによって、健常マウスにおける心臓拍動の機能解析や心疾患モデルマウスにおける病態解析を、in vivoにおいてnmレベルで行うことが可能になるであろう。よって、現在までのところ、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)申請者らは、Ca制御タンパク質であるトロポニンに変異を有する拡張型心筋症マウスと肥大型心筋症マウスを有している。マウス心臓においてマッピングを行い、病態心筋において興奮収縮連関がどのように変化しているかをin vivoナノイメージングによって定量化する。申請者らは、Ca濃度に依存して蛍光波長を変化させるYC Nano-140を心筋細胞のZ線に発現させることに成功している。したがって、AcGFPのみならず、YC Nano-140をin vivoマウス心臓のZ線に発現させ、心臓の様々な部位において、心筋細胞内局所のCa濃度とサルコメア動態の同時計測を行う。健常マウスにおいてデータを得た後、病態マウスを用いた検討を行う。 2)申請者らはマウスのiPS細胞を心筋細胞に分化させることに成功している。現在、iPS心筋細胞を効率よく精製し、マウス心臓に移植、その機能をin vivoナノ計測によって詳細に検討する手法を開発中である。よって、これらの細胞を健常マウスおよび各心疾患モデルに投与し、iPS細胞が機能を発揮するメカニズムをin vivoにおいてnmレベルで明らかにする。 3)申請者らは、単離心筋細胞に赤外レーザーによって熱(~5℃)を与えると、収縮が生じることを報告している(BBRC 2012)。この収縮にはCa変化がともなわないため、不整脈を惹起しない新しい医療装置の開発につながるものと期待される。H26年度に得られた知見に基づき、心臓のどの部位にどの程度の熱を負荷すれば心臓の機能を効率よく向上させることができるかを系統的に探る。 4)申請者らは、サルコメア自励振動(SPOC)の数理モデルを開発している(Prog Biophys Mol Biol 2011)。このモデルに基づいて、心筋細胞やin vivo心臓において得られたサルコメア動態のデータをシミュレートする。
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