2013 Fiscal Year Annual Research Report
量子線を用いた精密構造解析によるLPSO構造の材料特性発現機構の解明
Project Area | Materials Science of synchronized LPSO structure -Innovative Development of Next-Generation Lightweight Structural Materials- |
Project/Area Number |
23109003
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
相澤 一也 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主席 (40354766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 滋 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主席研究員 (50360821)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | LPSO / マグネシウム / 中性子 / 放射光 / 結晶構造 / 力学特性 |
Research Abstract |
J-PARCでは、LPSO合金力の変形機構解明を目指してLPSO合金で提案されているキンク変形とMg合金で知られている双晶変形に注目した18R Mg85Zn6Y9一方向凝固材及びAZ31合金のAE同時測定圧縮応力下その場中性子回折実験解析を進めた。AZ31合金に関しては、中性子回折では{1 0 -1 2}<1 0 -1 1>変形双晶が観察されると共にAE信号では、応力負荷直後からすべりのスケールフリー性を表すべき乗に従ったAEエネルギー分布が観測され且つ双晶変形に起因するピークが発生することを明らかにした。Mg85Zn6Y9に関しては、降伏点近傍までAE信号が観測されず且つ中性子回折により、キンク変形前駆現象と考えられる底面ひずみの増加を明らかにすると共にキンク変形に起因する回折ピーク変化の定量的評価に成功した。以上から、LPSO合金のキンク変形とMg合金の双晶変形は、異なる変形機構であることを示した。 SPring-8では、精密な結晶構造の解明を目指してBL40XUピンポイント構造計測装置を利用し、18R Mg85Zn6Y9一方向凝固材、14H Mg85Zn1Gd2熱処理材、Mg29Al3Gd4結晶、14H MgZn5Y7一方向凝固材に関して微小単結晶回折を実施し、回折データの収集に成功した。現在、詳細なデータ解析中であるが、Mg29Al3Gd4結晶については、これまでのTEM観察では不明であった各原子位置の微小な変位に関する情報を明らかにした。また、微小領域での力学特性解明を目指して微小試料応力印加試験装置を利用したマイクロラウエ実験を実施し、Mg85Zn6Y9試験片を少しずつ圧縮しながら、マイクロラウエパターンの変化を測定することに成功し、圧縮応力の増加と共に試料片が変形し約6 MPaから塑性変形が始まっている様子を明らかにした。現在、詳細な解析を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、世界トップクラスの大型量子線施設J-PARC(中性子)、SPring08(放射光)の最新鋭装置群(SuperHRPD、匠、大観、BL02B2、BL13XU、BL40XU等)を駆使して世界最高精度でLPSO相の結晶・組織解析を行い、結晶構造解析では、定量的な結晶構造情報、組織(高次構造)解析では、応力、温度を外場としたシンクロ型LPSOの物質の形成過程、応答を明らかにすることである。これらにより、シンクロ型LPSO構造の材料特性発現に関する学理構築に貢献する。 今年度までに、従来の応力下その場中性子回折実験に加えてAE(アコースティックエミッション)信号測定を組合せたその場測定法を確立し、Mg基シンクロ型LPSO物質の主要変形機構であるキンク変形の特徴を、Mg基シンクロ型LPSO相の母物質であるMg相の主要変形機構である双晶変形と対比してその違いを明らかにすると共に、結晶構造の定量的評価が順調に進捗している。またシンクロ型LPSO相の微小領域での応力応答の定量的評価を可能とする放射光圧縮応力下マイクロラウエ実験法を確立し、キンク帯先端部のひずみ解析が可能な技術開発を達成した。 上記成果を元に、今後シンクロ型LPSO相の精密な結晶構造、形成過程、強化機構に関する知見を得ることが可能と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、J-PARCにおいては、中性子小角散乱測定と中性子回折を組合せた10H単相、14H単相のLPSO結晶構造解析を実施し、18R単相の結果と比較する。また本領域研究で導入した高温変形ステージを使用して、高温でのMg85Zn6Y9一方向凝固材の応力応答を明らかにする。更に低温荷重負荷装置を使用して、低温でのMg85Zn6Y9一方向凝固材の応力応答を明らかにする。これらの実験により、低温から高温までのLPSO構造の応力応答の基礎的知見を得る。またA01-2班と連携し、高温中性子回折実験によりLPSO相形成過程をその場観察し、これまで計算状態図的検討及び電子顕微鏡観察等で得られた知見と比較する。 SPring-8においては、18R Mg85Zn6Y9一方向凝固材、Mg29Al3Gd4結晶、Mg85Zn1Gd2熱処理材、MgZn5Y7一方向凝固材の結晶構造解析を進めると共に、今年度導入した微小試料応力印加試験装置を利用して、18R単相 Mg85Zn6Y9試験片等のマイクロラウエ実験を実施し、微小領域でのLPSO構造の応力応答の解明を目指す。
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Research Products
(15 results)