2012 Fiscal Year Annual Research Report
数理形態学と階層構造科学の融合による積層構造体の力学特性発現機構の解明
Project Area | Materials Science of synchronized LPSO structure -Innovative Development of Next-Generation Lightweight Structural Materials- |
Project/Area Number |
23109010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中谷 彰宏 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50252606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 英治 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (80180280)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | 格子欠陥 / 構造・機能材料 / 透過型電子顕微鏡 / 変形体力学 / 非線形力学 |
Research Abstract |
本計画研究では、実験・計測科学と計算力学の融合研究によって、シンクロ型 LPSO構造を起源とする物質系の力学特性と変形メカニズムを解明し、高次不整合を媒介とする新しい理論体系を確立する。そのさらなる普遍化・体系化により、新しい変形・力学理論の構築を行うことを目的としている。具体的には、外力負荷下のキンク帯の形成について、シンクロ型LPSO構造の特異な微視的幾何構造と新奇な力学特性の表裏一体の関係を、透過型電子顕微鏡による高分解能観察とイメージング、および非リーマン幾何学に基礎をおく不連続場のマルチスケール理論を用いた階層型シミュレーションによって浮彫りにする。そして、回位(disclination)の概念を拡張した高次不整合を媒介とする階層科学による力学と数理形態学による幾何学を結び付けるエネルギー論に関する学理を展開する。 平成24年度は、Mg-1at%Zn-2at%Y合金押出材のLPSO相内に形成されるキンク帯近傍の微細構造をHAADF-STEM法ならびにSTEM-EDX法による観察・元素分析を行った。その結果、押出時に形成されるキンク帯は母相よりも硬質な金属間化合物近傍で顕著に形成され、キンク境界における溶質濃化領域が解消されることによってキンク帯が不動化することで強化に寄与することが示唆された。一方、離散転位塑性論によるキンク褶曲の力学解析を行い、ディスクリネーションによるキンク帯の成長を記述するためのモデリングの基礎を示した。精緻な力学理論を構築するためには格子欠陥の導入に伴う格子回転と格子歪みの表現が本質的であることが明らかになった。実験で観察されるキンク帯の結晶学的な方位と近傍に形成される格子欠陥に関する理論モデルについてディスカッションを行い、高次の格子欠陥モデリングによる学理構築の可能性を丁寧に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き「顕微鏡観察によるキンク境界の格子欠陥構造の解明」、「離散格子不整合理論の有限変形論の定式化」、「非線形動力学による非線形局在モードの解析」を中心とした研究を実施してきた。得られた研究成果は、当初計画を着実に遂行しているだけでなく、領域内外の研究者との交流や連携研究の過程で「領域内の他の研究者が何に疑問を感じ、どういう考えで研究を進めているか」が領域スタート時点よりもクリアになった。さらに本計画研究で今後の何をなすべきかがより具体的に鮮明になってきたことが大きな収穫であり、得られた知見を今後の研究推進に積極的に活用することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、科研費の補助事業の継続課題として、研究経費・研究組織は当初計画のままに一切変更を加える必要はなく、研究内容も基本的に当初計画のとおり推進できる。そしてその範囲で、研究組織の博士研究員の2名からの協力が継続して得られることを前提に役割分担を明確にし、ディテールの部分で具体的なテーマを設定して下表のロードマップにしたがって研究を推進する計画を立案する。
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