2014 Fiscal Year Annual Research Report
数理形態学と階層構造科学の融合による積層構造体の力学特性発現機構の解明
Project Area | Materials Science of synchronized LPSO structure -Innovative Development of Next-Generation Lightweight Structural Materials- |
Project/Area Number |
23109010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中谷 彰宏 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50252606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 英治 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (80180280)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 格子欠陥 / 構造・機能材料 / 透過型電子顕微鏡 / 変形体力学 / 非線形力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画研究では、実験・計測科学と計算力学の融合研究によって、シンクロ型 LPSO構造を起源とする物質系の力学特性と変形メカニズムを解明し、高次不整合を媒介とする新しい理論体系を確立する。そして、そのさらなる普遍化・体系化により、新しい変形・力学理論の構築を行うことを目的としている。 平成26年度は、Mg-6at%Zn-9at%Y一方向凝固材と、Mg-5at%Zn-7at%Y合金押出材のLPSO相内に形成されるキンク帯近傍について、HAADF-STEMを用いた原子レベルからの微細構造観察を行った。低角のキンク境界ではランダムに配置したa転位が観察された。LPSO相の底面がゆるやかに湾曲したキンク境界が不明瞭な領域においても底面a転位の拡張と積層欠陥が観察された。またキンク境界先端の高倍率観察の結果、微細な三角形領域の存在が認められた。一方、底面のへき開やボイドなどは観察されず、キンク変形のこのような特徴がLPSO相の高い延性と関連していることを指摘した。 以上の実験に対応する理論モデルについて考察した。まずキンク境界を構成する転位列を連続分布転位でモデル化し、底面すべりの方向に格子の相対的な不連続なすべりが生じる条件で弾塑性変形を考え、変位、弾性ひずみと塑性ひずみ、弾性応力に対する閉形式の解を解析的に導出することに成功した。次にその適用例として、面内刃状ソミグリアナ転位双極子と回位双極子に対して底面すべりによって実現される変形場・力学場を求めた。また格子振動に対する幾何学的な非線形性を考慮すると現れる新奇の力学特性の解明に向けて、古典力場および第一原理計算から評価される力場のもとでフォノン分散関係を評価し、空間的なエネルギー局在化の可能性を示すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き「顕微鏡観察によるキンク境界の格子欠陥構造の解明」、「離散格子不整合理論の一般化力の定式化と理論解析による評価」、「非線形動力学による非線形局在モードの解析」を中心とした研究を実施してきた。研究の結果は、当初計画を着実に遂 行しているだけでなく、キンク構造が、格子欠陥構造の集合体、協調運動として階層性を持って現れること、およびその力学理論との関連を明らかにすることができたことが大きな成果である。得られた知見を今後の研究推進に積極的に活用することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、科研費の補助事業の継続課題として、研究経費・研究組織は当初計画のままに一切変更を加える必要はなく、研究内容も基本的に当初計画のとおり推進できる。そしてその範囲で、研究組織の博士研究員の2名からの協力が継続して得られることを前提に役割分担を明確にし、ディテールの部分で具体的なテーマを設定して研究を推進する計画を立案する。
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