2011 Fiscal Year Annual Research Report
コンドロイチン硫酸を中心とした糖鎖による神経活動の制御機構
Project Area | Deciphering sugar chain-based signals regulating integrative neuronal functions |
Project/Area Number |
23110003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
北川 裕之 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (40221915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 純一 鳥取大学, 地域学部, 教授 (30221401)
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Keywords | プロテオグリカン / コンドロイチン硫酸 / 硫酸基転移酵素 / 神経可塑性 / 眼優位性可塑性 / 臨界期 / 視覚野 / グリコサミノグリカン |
Research Abstract |
コンドロイチン硫酸(CS)は、外傷性障害を受けた成体脳において、再生軸索の伸長を阻害する主要な分子として知られる一方で、特定の硫酸化された構造をもつCSには、初代培養神経細胞の神経突起伸長を促進する働きがある。この一見矛盾した結果は、CSの硫酸化構造の違いに起因すると考えられる。最近、ペリニューロナルネット(PNN)に存在するCSと経験依存的可塑性の関連性が報告されているので、本年度は硫酸化構造を改変したマウスを用い、経験依存的可塑性にCSの硫酸化構造がどのように関わるのかを解析した。 CS鎖はグルクロン酸とN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)の二糖が数十回交互に繰り返し重合した直鎖状の糖鎖を基本骨格にもつ。生合成過程でGalNAc残基の大部分は、その6位もしくは4位が、コンドロイチン6-0-硫酸基転移酵素(C6ST-1)もしくは4-0-硫酸基転移酵素によって硫酸化される。我々は、脳の発生に伴うCS鎖の硫酸化パターンの変動を解析したところ、6硫酸化CSは発生初期に多く存在し発生に伴い減少するが、4硫酸化CSは発生に伴い増加し、結果として6硫酸化CSに対する4硫酸化CSの比率(4S/6S比)が顕著に増加することが分かった。マウス視覚野では、臨界期を挟んで、この4S/6S比の変動が起こることから、CS硫酸化パターンによって、臨界期が調節されるのではないかと考え、C6ST-1を過剰発現するトランスジェニック(TG)マウスを作成した。成体の野生型マウス視覚野では、ほとんどのPV細胞がWFAレクチン陽性のPNNによって覆われるが、C6ST-1 TGマウスでは、WFA陽性のPNN数が減少していた。さらに、C6ST-1 TGマウスは成体でも、眼優位性の可塑性を維持していた。したがって、発生に伴うCS鎖の硫酸化パターンの変動が、臨界期の終了に必要であることを示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、経験依存的可塑性にCSの硫酸化構造がどのように関わるのかを解析することが目標であったが、実験が計画以上に進展し、CSの硫酸化構造が眼優位性可塑性をin vivoで制御しており、その制御には抑制性神経細胞の成熟度が関係するという興味深い結果が得られ、Nature Neurosci.に報告できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に得られた結果に基づき、CS鎖による抑制性神経細胞の制御機構を明らかにすると共に、神経突起伸長の制御に関与するCS機能ドメインの解明も行い、CS鎖による神経活動の制御機構を明らかにしていく。
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Research Products
(32 results)