2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Deciphering sugar chain-based signals regulating integrative neuronal functions |
Project/Area Number |
23110004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小松 由紀夫 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (90135343)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / 糖鎖 / 可塑性 / 視覚野 / コンドロイチン硫酸 / 長期増強 |
Research Abstract |
視覚野のパルブアルブミン(PV)陽性細胞を取り囲む特徴的なペリニューロナル・ネット(PNN)は感受性期の制御に関与することが示唆されている。PNNの主要な構成分子であるコンドロイチン硫酸(CS)鎖の硫酸化パターンの変化が眼優位可塑性の感受性期の制御に関与する可能性を検討した。6位の硫酸化(6S)を担う硫酸転移酵素を過剰発現させたマウス(C6ST-1 TG)を用いた研究により、6Sから4Sへの硫酸化パターンの変化が感受性期の終了を制御することが分かった。このTGマウスでは感受性期が延長し、成長しても感受性期型の眼優位可塑性が見られた。 TGマウスでは、PV細胞の静止膜電位がより脱分極しており、活動電位の幅が広く、PV細胞の電気生理学的特性の一部に発達の遅れが見られた。このPV細胞の変化により視覚野の信号伝達に生じる変化を視覚刺激に対する視覚野細胞の反応により解析した。反応選択性は野生型と差が無かった。しかし、視覚刺激提示終了後もより長く反応が持続し、全体としては抑制がやや低下していると推定される。この抑制の低下が感受性期を延長する一因と考えられる。 TGマウスのシナプス可塑性をフィールド電位記録により解析した。長期増強を誘発するために、2Hz刺激を15分間与えた。野生型マウスでは、感受性期にはNi^<2+>により誘発が阻害される、T型Ca^<2+>チャネル依存性長期増強(T-LTP)が起きた。成長すると、2Hz刺激は長期増強を誘発したが、Ni^<2+>による阻害は見られず、T-LTPとは異なる長期増強であった。成長したTGマウスでは、長期増強はNi^<2+>あるいはNMDA受容体阻害剤の単独投与では抑制されなかったが、両者の同時投与により消失した。したがって、TGマウスでは、成長してもT-LTPあるいはそれに類似したNi^<2+>感受性の長期増強が起きるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コンドロイチン硫酸の硫酸化パターンの変化が感受性期を制御することを明らかにし、PV細胞の電気生理学的特性の変化がその制御を仲介する可能性を示し、糖鎖による視覚野可塑性の理解に貢献できた。硫酸化パターンの変化がT-LTPの年齢依存性の制御に関与することを示唆する所見を得たが、さらに詳細な解析を必要とする。
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Strategy for Future Research Activity |
コンドロイチン硫酸の硫酸化パターンの変化によるPV細胞の電気生理学的特性の変化が検出されたので、このPV細胞の変化が視覚野内の信号伝達、錐体細胞での長期増強をどのように制御するかを明らかにすることが、本研究課題において最も重要である。したがって、今後その解析を重点的に進める。ケラタン硫酸(KS)も感受性期の制御に重要な役割を果たすことが示唆されているが、KSノックアウトマウスが利用できるようになったので、コンドロイチン硫酸について行ったのと同様の解析を行い、両者の役割の相違を明らかにする。
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Research Products
(2 results)