2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経成長円錐の応答性を指標とした糖鎖機能ドメインの解析
Project Area | Deciphering sugar chain-based signals regulating integrative neuronal functions |
Project/Area Number |
23110005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
戸島 拓郎 独立行政法人理化学研究所, 神経成長機構研究チーム, 研究員 (00373332)
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Keywords | コンドロイチン硫酸プロテオグリカン / dystrophic endball / 軸索再生 / パキシリン / 軸索伸長 / 硫酸化構造 |
Research Abstract |
生体中枢神経組織の損傷部位に沈着するコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)は軸索再生を阻害する。CSPG濃度勾配を上る方向に伸長した軸索先端部はdystrophic endballとなり伸長を停止する。本年度はまず、硫酸化構造の異なる様々なCS糖鎖(A、B、C、D、E)を均一基質として培養脊髄後根神経節細胞に作用させ、軸索伸長に対する効果を検証した。CS鎖はグルクロン酸(GlcA)とN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)の2糖繰り返し構造から成り、CS-AはGalNAcの4位、CS-BはGlcAの2位とGalNAcの4位、CS-CはGalNAcの6位、CS-DはGlcAの2位とGalNAcの6位、CS-EはGalNAcの4位と6位が硫酸化されている。CS-A、B、Cは軸索伸長作用が無かったが、CS-DおよびEは軸索伸長を促進した。また、ラミニン基質上での軸索伸長は、CS-A、Bにより抑制された。このように、CS硫酸化構造の違いが突起伸長に対して異なる影響を及ぼすことが確認された。 また昨年度までの培養系を用いた研究により、接着斑の構成タンパク質であるパキシリンのリン酸化がCSPG(アグリカン)基質上でのdystrophic endballの前進を促進することを見出していたため、本年度は中枢神経損傷モデル動物を用いてこの効果を検証した。生体マウスの大脳皮質感覚運動野にリン酸化模倣型パキシリンをウィルスベクターを用いて遺伝子導入すると、下行性軸索の脊髄損傷部位での再生が軽度改善した。また、リン酸化模倣型パキシリンは視神経損傷部位での軸索再生も有意に改善した(マイアミ大学Vance Lemmon教授との共同研究)。これらの実験結果は次年度も引き続き検証していく必要があるが、本課題の培養系実験で得られた知見が動物個体レベルでの軸索再生に応用可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載したテーマ1の「糖鎖濃度勾配による軸索伸長阻害の分子メカニズム」に関しては、実験データは予備的ではあるが、糖鎖硫酸化構造の違いによって成長円錐の応答性が異なるという、次年度以降に向けての重要な知見が得られた。テーマ2の「動物個体レベルでの軸索再生実験」においては、おおむね予想通りの結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には今後も研究計画書どおりに研究を遂行して行く予定である。本年度の研究により、コンドロイチン硫酸糖鎖は軸索伸長を停止させるのみならず、特定の硫酸化構造を持つものは軸索伸長を促進することが確認されたため、今後はこの違いを十分に踏まえた上で発展的に研究を進める。
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Research Products
(7 results)