2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゴルジ体ストレス応答における糖鎖修飾の役割と神経機能への貢献
Project Area | Deciphering sugar chain-based signals regulating integrative neuronal functions |
Project/Area Number |
23110007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
吉田 秀郎 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (60378528)
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Keywords | ゴルジ体 / 小胞体 / ストレス応答 / 転写制御 / 神経 / ゴルジ体ストレス / 糖鎖 / 小胞輸送 |
Research Abstract |
ゴルジ体は分泌タンパク質の修飾や小胞輸送を担う細胞小器官である。ゴルジ体の量は細胞の需要に応じて厳密に制御されているが、その機構(ゴルジ体ストレス応答)の詳細や生理的機能についてはほとんどわかっていなかった。研究代表者はこれまでの研究によって、ゴルジ体ストレス応答を制御する転写因子TFE3を単離し、平常時にはTFE3はリン酸化されていると同時に、細胞質に局在しているが、ゴルジ体ストレス時(ゴルジ体の機能が不足する状態)にはTFE3の脱リン酸化が起こるとともに、核へ移行することを見いだした。 今年度は、TFE3のリン酸化部位を検索した結果、108番目のセリン残基(S108)がリン酸化に必須であることを見いだした。S108をアラニンに置換したTFE3-S108A変異体は細胞質に繋留されず、常に核に局在することがわかった。このことは、TFE3の細胞内局在性がリン酸化によって制御されていることを示している。 次に、ゴルジ体ストレス応答の生理的意義について検討した。神経細胞やグリア細胞では樹状突起が発達しており、小胞輸送が盛んなことからゴルジ体が重要な機能を果たしていると考えられる。そこで未分化な細胞がグリア細胞に分化する際にゴルジ体ストレス応答によってゴルジ体の機能が強化されているのではないかと考え、ラットC6グリオーマ細胞がアストロサイトやオリゴデンドロサイトに分化する過程を調べたところ、TFE3の脱リン酸化と核移行が誘導されることを見いだした。このことは、グリア細胞の分化にゴルジ体ストレス応答が重要な機能を果たしていることを示唆している。今後は、TFE3の発現を抑制した場合にグリア細胞の分化に影響が出るかどうか調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゴルジ体ストレス応答の中心的制御機構が転写因子TFE3の脱リン酸化であることを見いだすとともに、グリア細胞の機能にゴルジ体ストレス応答が関与していることを見いだしたことは、今後の研究発展のためのブレークスルーであり、今後様々な解析が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、グリア細胞だけでなく神経細胞を用いて同様の実験を行い、神経細胞機能にもゴルジ体ストレス応答が重要な役割を果たしていることを明らかにする計画である。また、ゴルジ体ストレス応答の機構解明のためにTFE3のリン酸化酵素と脱リン酸化酵素を同定し、その活性制御機構を解析することによって、ゴルジ体ストレスを感知するセンサー分子からTFE3の活性化に至る細胞内情報伝達経路を明らかにすることを目指している。
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