2013 Fiscal Year Annual Research Report
ゴルジ体ストレス応答における糖鎖修飾の役割と神経機能への貢献
Project Area | Deciphering sugar chain-based signals regulating integrative neuronal functions |
Project/Area Number |
23110007
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
吉田 秀郎 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (60378528)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | 神経 / 糖鎖 / ゴルジ体 / ストレス応答 / オルガネラ / 小胞体 / 小胞輸送 / 細胞生物学 |
Research Abstract |
糖鎖は様々な機能を担っているが、核酸やタンパク質に比べて研究が進んでいない。研究代表者は、糖鎖修飾の中枢であるゴルジ体を研究題材とし、糖鎖修飾能力を制御するゴルジ体ストレス応答を研究してきた。本研究課題では、神経細胞の機能にゴルジ体ストレス応答がどのように貢献しているか解析することによって、神経細胞における糖鎖の重要性を明らかにする。 前年度までの研究によって、哺乳類のゴルジ体ストレス応答を制御するTFE3経路を同定していたが、本年度の研究によって、TFE3経路がゴルジ体での糖鎖修飾の不全に応答して活性化されることを見出した。また、TFE3経路は通常時には転写因子TFE3がリン酸化されることによって細胞質に不活性な状態で繋留され、ゴルジ体ストレス時(ゴルジ体での糖鎖修飾が不全になった時)に脱リン酸化されることによって核に移行へ、ゴルジ体の糖鎖修飾酵素遺伝子の転写を誘導することもわかっていたが、本年度の研究によってリン酸化酵素CHUKがTFE3のリン酸化酵素の重要な候補分子であることを見いだした。CHUKにもTFE3にも二量体化ドメインであるHLH構造があり、この構造を介して両者が結合しているのではないかと考えている。また、ゴルジ体での糖鎖修飾を阻害したときに、TFE3経路以外の未知のゴルジ体ストレス応答経路が活性化されることを見出した。ゴルジ体ストレス応答は小胞体ストレス応答と同様(あるいはそれ以上)に複雑な応答機構を有していることが考えられる。更に、グリア細胞の分化過程でゴルジ体ストレス応答が活性化されることは見出していたが、本年度の研究によって、グリア細胞の分化にTFE3経路が必須であることを見いだした。以上の成果は、ゴルジ体ストレス応答の分子機構を明らかにするものであるとともに、神経系の細胞の機能にゴルジ体ストレス応答が重要な貢献をしていることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の究極の目標は、糖鎖シグナルが神経機能をどのように制御しているかを明らかにすることである。ゴルジ体では分泌タンパク質や膜タンパク質が非常に複雑な糖鎖修飾を受けるが、これらの糖鎖シグナルの意義はほとんどわかっていない。小胞体での糖鎖シグナルはN型糖鎖のグルコースが小胞体シャペロンであるcalnexinやcalreticulinへの結合を制御していることや、N型糖鎖のマンノースの状態が分解シグナルになっていることなどが知られている。このように、小胞体では糖鎖が分泌タンパク質の品質管理に利用されていることから、ゴルジ体でも同様に品質管理に用いられている可能性がある。本年度までの研究によって、糖鎖修飾の不全がゴルジ体ストレス応答を起こすことを見出した。このことは、特定の糖鎖構造が分泌タンパク質の品質管理シグナルに使われており、特定の糖鎖構造を持つ分泌タンパク質が蓄積するとゴルジ体ストレス応答によって糖鎖修飾酵素の発現を増強し、糖鎖修飾を完了させようとするのではないかと考えている。本年度の解析から、プロテオグリカンの糖鎖修飾を阻害したり、シアル酸修飾の材料をゴルジ体へ運ぶトランスポーターの発現阻害によってゴルジ体ストレス応答が起こることから、プロテオグリカンの糖鎖構造やシアル酸修飾がゴルジ体での品質管理を制御する糖鎖シグナルである可能性がある。今後、更にいろいろな糖鎖修飾阻害を検討することによって、糖鎖シグナルの実体に迫ろうと考えている。 また、様々な糖鎖修飾阻害によって、TFE3経路以外の未同定のゴルジ体ストレス応答経路が活性化されていることを見出した。今後、新規の応答経路を解析・同定することによって、ゴルジ体ストレス応答の全体像を明らかにできるのではないかと期待している。このように、本年度は本研究課題の完遂に関して重要な成果を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ゴルジ体での分泌タンパク質の品質管理を制御する糖鎖シグナルを同定するために、様々な糖鎖修飾阻害処理を行い、ゴルジ体ストレス応答が活性化されるか調べる計画である。具体的には、糖鎖の硫酸化修飾の材料であるPAPSをゴルジ体に輸送するトランスポーターSLC35B2やSLC35B3をノックダウンすることで糖鎖の硫酸化を阻害したり、フコース修飾の材料をゴルジ体に運ぶトランスポーターSLC35C1のノックダウン、あるいはフコース修飾を阻害する2-deoxy-galactoseで細胞を処理することを検討している。また、これらの処理をした時にどのような糖鎖構造が増えてくるか質量分析機によって調べる。最終的には、ゴルジ体ストレス応答のセンサー分子を同定し、特定の糖鎖構造との結合を調べることで、ゴルジ体での品質管理を制御する糖鎖構造を明らかにする。 一方、本年度の研究から、哺乳類のゴルジ体ストレス応答は複数の経路から成っていることが明らかとなった。小胞体ストレス応答の場合でも3つの応答経路があり、ゴルジ体は小胞体よりも複雑な区画からなっていることから、複数の応答経路が存在する可能性が高い。本年度の研究から、新規の応答経路の標的遺伝子を同定したので、次年度はプロモーター解析を行うことによってこれらの標的遺伝子の転写を制御する転写制御配列を同定するとともに、同定した転写制御配列に結合する転写制御因子を単離する。同定した転写制御因子の活性化機構を解析することによって、ゴルジ体内の糖鎖修飾不全を認識するセンサー分子から転写因子の活性化に至る細胞内情報伝達経路を明らかにし、ゴルジ体ストレス応答の全体像を明らかにするとともに、ゴルジ体での品質管理を制御する糖鎖シグナルの研究に貢献することを目指す。また、新規のゴルジ体ストレス応答経路が、神経系の細胞の機能に貢献していることも明らかにする。
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Research Products
(9 results)