2011 Fiscal Year Annual Research Report
スフィンゴ糖脂質糖鎖による神経機能の健常性維持の分子機構
Project Area | Deciphering sugar chain-based signals regulating integrative neuronal functions |
Project/Area Number |
23110008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古川 鋼一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80211530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 健一 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 准教授 (50423059)
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Keywords | ガングリオシド / ニューロン / グリア / 神経変性 / 糖脂質 / ノックアウト / LTP / 1分子イメージング |
Research Abstract |
1. 新生児マウス脳からの初代培養ニューロンおよびグリア細胞膜上でガングリオシド近傍に発現する分子を、Enzyme-mediated activation of radical sources (EMARS) 反応と質量分析(MS) により同定するため、初代神経系細胞の分別培養系の樹立を目指した。また、これらの細胞の基本的なガングリオシド発現パターンおよびサイトカイン等の遺伝子発現を解析した。アストロサイトでは、種々の糖鎖の発現が認められが、グリア初代培養によるEMARS実験を行うには至らなかった。 2. シナプス伝達機能に重要なAMPA受容体に対するガングリオシド欠損の影響を検討するために、種々の変異マウス由来の海馬切片を用いて、シナプス可塑性を検討した。形態学的な変化が著明なGM2/GD2合成酵素KOに関しては、南京大学の陳博士との共同研究により、長期増強(LTP)の著明な低下を確認した。一方。本遺伝子を過剰発現させたTgマウスの海馬LTPについても、山形大学の五十嵐博士との共同研究により検討したところ、有意な低下を認めた。従って、複合型ガングリオシドの欠損、a-系列の過剰発現、ともにLTPの機能低下を招くことが示された。さらに、b系列ガングリオシド欠損のGD3合成酵素KOマウスの海馬LTPの測定を準備中である (宮崎大学 高宮博士との共同研究)。 3. 糖脂質糖鎖欠損による膜ミクロドメイン局在タンパク質の分布変化を、1分子イメージングにより検討した。そのために、C9蛍光標識GM1を細胞膜に取込ませ、超分解能イメージングによる検討を行った。GM1過剰発現細胞、欠損細胞による解析結果から、GM1同士の2量体化が確認された。現在、GPI-アンカータンパク質との相互作用のイメージングを行っている。(おもに、分担者である京都大学鈴木健一准教授が担当)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した、遺伝子変異マウスの脳からの初代培養神経系細胞の樹立に向けて、概ね必要な技術が確立して、今後の分別細胞グループの解析のための材料が確保できたこと。また、細胞株におけるEMARS反応に基づいたガングリオシド近傍分子の同定技術が確立できたので、今年度早々に、グリアを標的にしたEMARS解析が可能になっていること。 また、ガングリオシドの神経可塑性における役割を明らかにするために、長期増強などの記憶・学習能の解析を行い、ガングリオシド過剰発現、およびKO (欠損)マウスの海馬LTPの解析結果をまとめて公表できた。さらに、別のKOマウスに関するLTP測定を射程に入れており、これらの異なったガングリオシドのプロフィールを持つマウスの比較検討が可能になっていることは、着実な進展を示すものと考えられるから。 さらに、細胞膜ミクロドメインにおけるガングリオシド同士、またはガングリオシドと膜タンパク質との結合と相互作用の観察を目指しているが、そのために有用なガングリオシドのリモデリング細胞株を複数樹立して、実際にガングリオシド同士の2量体形成が明瞭に示されつつあることは、今後の様々な応用実験への基盤を成すものであり、大きな期待ができる条件が整ったと考えるから。
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Strategy for Future Research Activity |
初代培養のニューロンおよび各種グリアの分別培養が可能になってきたので、これらを用いて、神経系の炎症と変性のメカニズムの解明を目指す。とくに、ミクログリア、アストログリア等の炎症反応における個有の役割とニューロン傷害作用のメカニズムを明らかにする。 今年度こそは、EMARS反応によるガングリオシド近傍分子の同定を推進して、グリアの細胞膜におけるシグナル調節の破綻を、ミクロドメイン異常として捉え、ガングリオシドの健常性の作用機構の解明につなげたい。 GD3合成酵素KOマウスの海馬LTPの測定は、宮崎大学 高宮博士との共同研究であるが、他のKOマウスの脳組織に比べて炎症反応が弱いのが特徴的である。その点で、他のKOマウスに比して神経系組織の構築が維持されている状態でのb系列ガングリオシドの意義が分かるため、糖鎖機能の解析にとっての意義が大きい。また、行動異常の解析においても、本KOマウスでは予想以上の記憶・学習能の低下が認められているので、海馬のシナプス機能異常に関する興味深い解析結果が期待できる。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] TLR4-MD-2 complex is negatively regulated by an endogenous ligand, globotetraosylceramide in vascular endothelial cells.2013
Author(s)
Kondo, Y., Tokuda, N., Nishitani, C., Ohto, U., Akashi-TakKondo, Y., Tokuda, N., Nishitani, C., Ohto, U., Akashi-Takamura, S., Ito, Y., Uchikawa, M., Kuroki, Y., Miyake, K., Zhang, Q., Furukawa, K., Furukawa, K
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Journal Title
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
Volume: 110
Pages: 4714-4719
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Clostridium perfringens Alpha-toxin Recognizes the GM1a/TrkA Complex.2012
Author(s)
Oda, M., Kabura, M., Takagishi, T., Suzue, A., Tominaga, K., Urano, S., Nagahama, M., Kobayashi, K., Furukawa, K., Furukawa, K., Sakurai, J.
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Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 287
Pages: 33070-33079
Peer Reviewed
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