2011 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク分解系障害による脳内環境変調と神経変性メカニズム
Project Area | Brain Environment |
Project/Area Number |
23111002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 良輔 京都大学, 医学研究科, 教授 (90216771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
漆谷 真 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 准教授 (60332326)
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / プロテアソーム分解系 / TDP-43 / 神経外伝播 / トランスジェニックマウス / Rpt3 |
Research Abstract |
近年多くの神経変性疾患が何らかのミスフォールドタンパク質の蓄積と深く関連することが明らかとなり、孤発性疾患と遺伝性疾患で共通する病因の存在が強く示唆されるようになった。我々の研究目的は、神経変性を来す未知の蓄積タンパクの同定と、既知の蓄積タンパク質TDP-43について、それらが関連する病態パスウェイの解明を目的としている。 1.運動ニューロン特異的プロテアソームノックアウトマウスの解析(高橋) Cre-loxPシスデムを用いて、運動ニューロン特異的に26SプロテアソームのRpt3サブユニットをノックアウトさせ、進行性に運動機能障害とALS様病理所見を呈する運動ニューロン病マウスモデルを確立した(投稿準備中)。ALSの発症機序の探索として、現在、コントロールマウス(VAChT-Cre)、ミュータントマウス(Rpt3flox/flox;VAChT-Cre)の各3匹より脊髄の取得、cDNAマイクロアレイの結果を得た。 2.TDP-43のミスフォールディングが関連する病的パスウェイの探索研究(漆谷) テトラサイクリン誘導型TDP-43恒常発現ヒト神経細胞株(SHSY-5Y)を過剰発現型(野生型、FALS型)と細胞質型で構築し、変動遺伝子のcDNAマイクロアレイを用いた解析を行い、両者間で異なる変動遺伝子パターンを示すことを確認した。さらにRNA結合部位であるRRM2ドメインの核脱出シグナル内に、TDP-43の構造と機能維持に重要なアミノ酸があることを突き止めた。さらに当該部位に対するモノクローナル抗体の作出に成功し、本抗体がALS患者と培養細胞でミスフォールドしたTDP-43を認識することを発見し、論文投稿をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運動ニューロン特異的にプロテアソーム機能障害を引き起こすコンディショナルマウスの作出に成功し、新たなALSのモデルマウスを得た。現在投稿直前である。ALSの発症機序の探索として、現在、コントロールマウス(VAChT-Cre)、ミュータントマウス(Rpt3flox/flox;VAChT-Cre)の各3匹より脊髄の取得、cDNAマイクロアレイの結果を得ており、現在研究計画通りに進行している。TDP-43の細胞局在の違いによる遺伝子変動、主に発現低下遺伝子の違いが判明し研究標的が予定通り特化しつつある。TDP-43の構造と機能維持に重要な局所アミノ酸、ドメインの同定と抗体作製による解析を行い、論文を投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
コントロール3匹、ミュータント3匹より回収出来た運動ニューロン特異的プロテアソーム障害マウスの脊髄の発現タンパク質を検討することで、周辺環境変調をきたす因子や経路の同定を目標とする。この検討には、変異SODITgマウスで保有している自然免疫関連の発現分子データとも比較し、横断的に重要な因子を検索する予定である。また、レーザーマイクロダイセクションを用いることにより、26Sプロテアソーム欠損運動ニューロンを集め、運動ニューロン内での異常発現物質の検討を行い、運動ニューロンから放出される毒性分子とその下流の分子を明らかにしていく予定である。(高橋) 誘導型TDP-43発現細胞株の解析から同定された変動分子や、TDP-43のキー構造に対する特異抗体を用いてTDP-43の伝播性の解析を行う。そのため、本年度は発現増加が確認されたSNARE関連タンパク質の機能解析、IRES-GFPを有する野生型細胞株の樹立と、胎児脳(脊髄)にプラスミドを発現させる子宮内エレクトロポレーション法の確立と、評価を行う。(漆谷)
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