2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Brain Environment |
Project/Area Number |
23111005
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
内匠 透 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (00222092)
|
Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 遺伝子 / 脳、神経 / 脳神経疾患 / 神経科学 / 動物 |
Research Abstract |
Translocated in liposarcoma/Fused in sarcoma(TLS/FUS)ノックアウトマウス胎仔脳において野生型と異なるスプライシングのパターンを示す遺伝子の中で、タンパクの機能に変化(異常)が期待されるEnahに着目し、その機能とTLS/FUSとの関係を培養細胞を用いた発現系で解析した。その結果、Enahのアクチン結合能はTLS/FUS-KOマウス胎仔線維芽細胞(MEF)細胞において 低下し、TLS/FUS-KO胎仔脳で増加するスプライシングバリアントであるEnah+11aはTLS/FUS-KO MEFにおいてアクチン結合能の低下を示さなかった。このことから、TLS/FUSがアクチン細胞骨格再編成に関与し、Enahの特定の部分がその再編成に関与していることが予測される。この結果は、我々が以前に報告したTLS/FUSが細胞骨格関連タンパクの輸送に関わっているという結果と関連する可能性があり、細胞骨格におけるTLS/FUSの重要性を示唆するものである。さらに、これらをALSとの関連に発展させるため、ALS変異TLS/FUSを発現するMEFにおいても同様の解析を行い、上記のTLS/FUS-KO MEFと同様の結果を得た。このことから、ALS変異型TLS/FUSが細胞骨格の変化を引き起こす可能性が示唆された。 また、TLS/FUSが核内構造体であるパラスペックルの構成タンパクのひとつであることから、TLS/FUS-KO細胞におけるパラスペックルの形成を調べ、TLS/FUS-KO細胞ではパラスペックルの形成が不全になることを見いだした 。このことは、TLS/FUSがパラスペックルの正常な構成に必要な分子であることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、TLS/FUSノックアウトマウス胎仔脳において野生型と異なるスプライシングのパターンを示す遺伝子の中で、タンパクの機能に変化(異常)が期待されるEnahに着目し、その機能とTLS/FUSとの関係をin vitro、特に培養細胞を用いた発現系で解析してきた。その結果、Enahのアクチン結合能が TLS/FUS-KO 細胞およびALS変異型TLS/FUS発現細胞では低下することを見いだした。また、TLS/FUS-KO胎仔脳で増加するスプライシングバリアントであるEnah+11aはTLS/FUS-KO細胞やALS変異型TLS/FUS発現細胞においてもアクチン結合能の低下を示さなかった。これらは、TLS/FUSと細胞骨格に関する新たな知見であり、TLS/FUSの変異が細胞のアクチン細胞骨格の異常、さらには変性を引き起こす可能性を示唆するものである。このことと、我々が以前に報告したTLS/FUSが細胞骨格関連タンパクの輸送に関わっているという結果を踏まえると、 TLS/FUSと細胞骨格との関連をより深く調べることは、TLS/FUSの変異が引き起こす神経疾患病態解明への新たなアプローチになると考えられる。 RNA代謝におけるTLS/FUSの機能解析については、TLS/FUSとhnRNP Hが複合体を作ること、C末端を欠いた変異型TLS/FUSではその結合が起こらないこと、さらには TLS/FUS-KO細胞では核内RNA粒子であるパラスペックルの形成が不全になることを見いだした。現在、これらの複合体の形成・機能とTLS/FUSとの関連についてさらなる解析を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を踏まえ、TLS/FUS と神経変性との関連を、RNA代謝機能、細胞骨格における機能の両面から解析していく予定である。 RNA代謝と運動神経変性との関係はこれまでにも重要性が指摘されてきたが、我々のグループではTLS/FUSとhnRNP Hが複合体を作ること、C末端を欠いた変異型TLS/FUSではその結合が起こらないことを見いだしたので、hnRNP HをTLS/FUSの重要なパートナーと考え、TLS/FUSとhnRNP Hを蛋白質として合成した人工RNA顆粒を用いて、細胞内RNA顆粒を解析中である。また、TLS/FUSの核内における機能に関して、TLS-KO細胞で核内構造体パラスペックルの形成が不全であるという結果が得られたので、今後は ALS変異TLS/FUS発現細胞でのパラスペックルの解析を行い、その変化と神経細胞死の関連を明らかにしていく予定である。 細胞骨格については、TLS/FUS-KO細胞およびALS変異型TLS/FUS発現細胞を用いたEnahの機能解析を引き続き行う。Ena/VASPファミリータンパクが機能を相補的に補完していることを考慮し、EnahのみならずVASPおよびEVLとのダブルノックダウンやトリプルノックダウンも行うことで、TLS/FUSとEna/VASPファミリーとアクチン細胞骨格の関係をより詳細に解析する。 さらに、細胞骨格に関連する現象として、細胞の硬さ、および硬さに対する 感受性が考えられる。例えば、神経組織は柔らかい組織であり、柔らかい基質上で間葉系幹細胞を培養すると神経分化が促進されることから、神経細胞の生存に適した環境は柔らかい環境であると考えられる。そこで、ALS変異型TLS/FUSの発現が、細胞の硬さ、および硬さに対する感受性を変化させるかを調べ、そのことが神経変性病態の新たな一面であるかを明らかにする。
|
Research Products
(2 results)