2014 Fiscal Year Annual Research Report
イネ属胚乳における父・母ゲノムのエピジェネティックな調和と軋轢の分子機構
Project Area | Correlative gene system: establishing next-generation genetics |
Project/Area Number |
23113003
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
木下 哲 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 教授 (60342630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河邊 昭 京都産業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10582405)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
なぜ、父・母由来のゲノムに機能差が存在するのか、その生物学的意義や、分子機構を明らかにするためには、倍数体間や種間の交雑を活用することが有効と考えられた。同一種内の交雑では、両親由来のゲノムはそのバランスが保たれており、胚乳発生は正常に保たれる。一方で、倍数体間や種間の交雑では、そのバランスは組み合わせに応じて、正(胚乳の過成長)または負(胚乳の矮小化)に交雑親和性の低下ともに顕在化する共通性が明らかになってきている。両者には顕著な共通性が見られることから、その違いは明らかではなかったが、イネ属の倍数体間交雑と種間交雑を詳細に比較することにより、倍数体間交雑では、胚乳発生の異時性と胚乳核の分裂速度に影響するが、種間交雑では胚乳発生の異時性にのみ影響することが明らかになった(Sekine et al, Plant J 2013)。この研究から派生して、2倍体と4倍体の組み合わせで母親ゲノムの脱落を示唆する結果が得られ、この意外な結果の詳細を詰める準備をはじめている。また、種間交雑で胚乳の過成長がおこり生殖隔離が見られる組み合わせの片親の倍数性を操作することで、胚乳の発生異常が抑制される分子機構で、想定される遺伝子発現の詳細を明らかにした。また、シロイヌナズナを用いた、これらの現象で鍵となるDNA脱メチル化によるエピジェネティック制御の新たな因子を明らかにした(Buzas et al 2014 PNAS)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナを用いた、胚乳における軋轢と調和に関わる新たな遺伝子の同定が進んだ。イネの研究では、予期していない結果が得られたことから、派生的な研究にも着手しつつ、当初目的の仮説の検証実験も進めている。総じて概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究により、エピゲノム解析を加速させること、具体的には、イネの種間、倍数体間交雑によるメチローム解析を推進する。加えて、イネのDNA脱メチル化酵素の変異体のメチローム解析も来年度はさらに進める予定である。当初研究目的の胚乳における軋轢と調和因子に関する仮説の検証は、準備が整いつつあるので、順次データを取っていく。さらには、研究推進の過程で派生的に着手した母親ゲノムの脱落のメカニズムに関してもその詳細を明らかにする準備を進めていく。
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Research Products
(5 results)