2013 Fiscal Year Annual Research Report
非コードDNA領域によるゲノムDNA再編成制御機構
Project Area | Functions of non-coding DNA region for genome integrity |
Project/Area Number |
23114003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 邦史 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90211789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 由起 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (50391917)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | 非コードDNA / 組換え / クロマチン / エピゲノム / 偽遺伝子 |
Research Abstract |
近年の個別ゲノム解析から、動的に再編成を受けるゲノムDNAの姿が示されつつある。DNA再編成は、非コードDNA領域を介して複層的に制御されている。本研究では、ゲノム再編成の中核を担う「インターメア(非コード機能配列)」要素として、「DNA組換えのホットスポット」、「長大遺伝子間領域」、「反復配列」などに着目し、機能性シス配列の機能解析や種間比較などによる同定と、それらに特徴的なクロマチン修飾や結合因子の探索を行う。また、ゲノム再編成における非コードRNA転写や染色体高次構造の役割を明らかにする。独自に開発したゲノム再編成系を用いて、DNA再編成に重要な非コード配列領域の抽出・解析を行う。 今年度のChIP Seq実験により、染色体接着位置(コヒーシン結合部位)で、ゲノムワイドに減数分裂期組換えが抑制されている現象を見出した。また、この部位では、組換えを開始する因子の結合はあるものの、その働きが抑制されること、さらには組換えホットスポットの形成に関わるとされる「ヒストンH3K4のメチル化」レベルが低下していることを見出した(Itoら、Genes Cells, 2014)。さらに、全世界の野生マウスについて、組換えホットスポットを規定するヒストン修飾因子Prdm9の配列を解析し、この因子のDNA結合に関わるZnフィンガー繰り返し配列が著しい配列多型を持つこと、またこの多型をもたらすと予想される「ホットスポットの痕跡」がイントロン領域に存在することを明らかにした(河野ら、DNA Res., 2014)。 印南班、中山班、小林班とともに分裂酵母34種の比較ゲノム解析を完了した。また、酵母などでの大規模ゲノム再編成を多検体で解析する情報解析ツールの解析を行ったほか、他の領域の班員との共同研究を多数実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初めに機器故障などがあったものの、他班との共同研究は最終的に順調に進捗し、5件以上の共同研究で成果を得つつある。例えば、印南班らと共同で実施した分裂酵母の比較ゲノム解析では、非コードDNA領域の動態に関して興味深い成果が得られつつあり、印南らが現在論文を執筆中である。この成果は、重要な非コード配列要素の抽出に利用可能な重要なデータであり、残りの期間で興味深い情報が得られることが期待される。 ChIP Seq実験については、ツール開発や実験条件の最適化が完了し、順調にデータが蓄積している。その中で、印南班との共同研究により、コヒーシン結合部位に組換えコールドスポットが存在することが明らかになった。またこの領域に特徴的なヒストン修飾パターンが、組換え抑制をうまく説明するものであることがわかった。 マウスやヒトの組換えホットスポットのクロマチン修飾を行うと考えられるPrdm9については、遺伝研の城石研と共同研究により、その高速進化の実体が地理的分布とあわせてはじめて明らかになった。また、組換えホットスポットを形成する遺伝子自体が、組換えホットスポットになっており、これによりマウスでは組換え部位を高速に変化させている姿が明らかになった。 大規模ゲノム再編系の研究に関しては、基本的データの取得が完了しつつあり、論文執筆の段階にある。鳥類抗体遺伝子の偽遺伝子配列の解析も、次世代シークエンサーを用いた新しい方法を利用して、新規に配列取得に成功した例が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、他班との共同研究が数多く進行中である。これらの共同研究成果を取りまとめて行くほか、今年度から参加する公募班などとの共同研究も新に開始したい。分裂酵母の比較ゲノム解析は論文発表を行う予定である。さらに、得られた配列データをもとに重要な非コード配列要素の抽出を行っていく。これにより、非コード配列要素(インターメア要素)を抽出し、遺伝子ターゲティングなどによりその機能を解析していく。 ChIP Seq実験やRNA Seq解析などについては、Nexteraなどの新規の技術も取り込んで、ハイスループット解析を行う。de novoRNA Seqデータの解析法を最適化し、近年重要性が高まってきた「非モデル生物」などでの利用拡大を目指す。 ゲノムの動的性質を担うトランス因子に関しては、①減数分裂期組換えの制御因子リエゾニンの生化学的・構造的解析、②Prdm9のノックイン・マウス作成による機能解析(遺伝研の城石研と共同研究)を行う。また、予備的に重要性が示唆されているヒストンH2A.Zの減数分裂期の組換えにおける役割を検証する。 大規模ゲノム再編系については、ゲノム進化過程(ゲノム重複など)を模倣した実験を行う。また、植物や酵母などの実施例を増やし、インターメア要素とゲノム再編成の関係を多面的に解析していく。分裂酵母の長大遺伝子間領域の非コードRNA転写やヒストン修飾のゲノムワイド解析についても、論文発表を目指す。
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Research Products
(29 results)