2013 Fiscal Year Annual Research Report
少数分子反応ネットワーク理論の構築-少数性と階層性の観点からのモデリング-
Project Area | Spying minority in biological phenomena -Toward bridging dynamics between individual and ensemble processes- |
Project/Area Number |
23115007
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
冨樫 祐一 広島大学, 理学研究科, 特任准教授 (50456919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松崎 民樹 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30270549)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生物物理学 / 情報幾何学 / 生体高分子 / 反応拡散系 / 複雑ネットワーク / Dynamic Disorder / 1分子時系列解析 / 数理モデル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子機械・分子複合体において少数個の分子・サブユニットが協調動作する基盤となる力学的情報伝達機構について、前年度、粗視化分子動力学計算を用いて評価する手法を確立した。本年度は、この手法を領域内の実験対象である分子モーター等に適用(A03-2今田班、公募A02曽和班・矢島班と連携)したほか、解析を自動化して様々なタンパク構造データに適用する試みを開始した。また、実際の細胞における反応ネットワークは多成分かつ著しく不均一であるため、それを考慮したモデルを用いた少数分子性の影響の評価を進めた。 少数性生物学に関するあらゆる計測はS/N比が悪く、データの解釈に解析上のアーティファクトが現れる危険性がある。前年度に開発した、観測量から背後に存在する物理量の任意の関数を不偏推定する解析理論を大腸菌内のATP濃度分布(A01-1野地班が計測)の解析に適用し対数正規性の原因を検討した。複数の要素から構成されるパターン・動態を決定づけるモジュールを同定する方法論の基礎づけを行った。細胞内タンパク質のトラッキングデータ(A02-2前島班)などから局所的な拡散挙動を評価するための変化点解析プログラムを新規に作成した。このほか、F1-ATPaseの非定常な回転時系列データ(A01-1野地班)から背後に潜むエナジェティクスを解明するための時系列解析手法を検討した。また、フラストレーションの小さいファネル型エネルギー地形であればあるほど、タンパク質モデルに対して分散の大きい自由度ではゆっくりした時間成分の有効温度がunfoldingとともに“高温”から“低温”へ移行することなどを明らかにした。加えて、前年度に構成した、拡散時系列から非熱的ゆらぎを評価する手法について、本年度は、その適用条件を明確にしたほか、分子モーター(公募A02矢島班)など領域内の実験データへの応用を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究員の後任採用に時間を要したため、分子機械の力学応答・協調動作のモデル改良・解析に関して若干の遅れが生じ、繰越により4ヶ月間、研究期間を延長した。適任者を採用できたことで、以後の研究は、平成26年2月の着任後に開始した研究が同6月に論文投稿に至るなど、想定以上のペースで進展した。これにより、報告書作成時点で遅れは完全に解消している。これ以外の研究項目に関しては、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、領域内の実験研究者との連携を重視し、実際のデータに即したモデル化と理論展開を進めていく。特に、次年度から新たに加わる公募班との連携は、期間が2年間と限られているため急務である。当計画班は、領域内の様々な実験との連携が強みであるが、それゆえに、モデル化・解析において取り組むべき課題が、参画するメンバーの体制に比して多くなっており、領域内からの要望の全てに応えることが難しくなっている。本年度は新たな試みとして、第6回領域会議内にて総括班の協力の下、当班研究代表者のオーガナイズにより、少数性生物学の新たな研究展開につながる可能性はあるものの解析・解釈が困難なために活用できていないデータを検討する会合(少数性生物学データ検討会)を開催した。当班だけでなく領域全体の研究推進のため、次年度以降も、こうした取り組みを通じ、理論・計算を専門とする研究者、特に、理論系の課題を展開する公募班との協力体制を強化する。
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Research Products
(88 results)