2012 Fiscal Year Annual Research Report
Crosstalk between stress response and metabolic regulation
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
23116002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本橋 ほづみ 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00282351)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 核酸 / 酵素 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酸化ストレス応答の鍵因子である転写因子Nrf2が、増殖シグナルにより機能変換を受け、代謝を変化させるという発見に基づき、代謝リプログラミングを支える分子機構として、次の2つの方向からアプローチしている。[1]酸化ストレス応答制御因子であるNrf2が、PI3K-Akt経路との間のポジティブフィードバックにより同化反応促進因子としての新たな機能を獲得する分子機構を解明する。[2]糖やアミノ酸代謝物が転写環境に与える影響を明らかにし、Nrf2の機能発現と機能変換に関わるエピゲノム制御機構を解明する。平成24年度には、以下の結果を得た。 [1]マウス肝臓を用いた複合体精製が難航したため、MEFを用いた解析を実施した。Keap1欠損MEFで、血清の有無による遺伝子発現の網羅的解析を行い、代謝関連遺伝子群が血清の存在下でのみNrf2によって活性化されるのに対して、解毒・ストレス応答系遺伝子群は血清の有無にかかわらずNrf2により活性化されることを見いだした。また、Nrf2抗体によるChIPアッセイから、血清の欠乏状態では、Nrf2の標的遺伝子へのリクルートが抑制されることを見いだした。 [2]前年度の解析から、IDH1変異を有する脳腫瘍患者の予後が良いことを見いだしていた。そこで、手術適応となった患者196症例の腫瘍組織を用いて、Nrf2の標的遺伝子の発現を調べたところ、IDH1変異腫瘍ではその発現が低下していた。変異IDH1を導入したグリオーマ由来の培養細胞では、Nrf2の遺伝子発現が低下し、かつ、Nrf2の核内蓄積量が低下することが明らかになった。また、これまでの報告通り、ヒストンのメチル化が亢進するという結果も得られた。さらに、メタボローム解析から、IDH1変異により、Nrf2機能低下時と同様、核酸合成の低下とグルタチオン合成の低下がおこることが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
項目[1]については、Nrf2複合体の解析が難航しているが、その場合に備えたMEFの実験から順調に成果が得られている。平成24年度にNrf2複合体の精製のための条件検討を綿密に実施したことから、平成25年度には、大きな進展があるものと確信している。 項目[2]については、臨床検体の解析が順調に進み、ほぼ当初の予想通りの結果となった。また、培養細胞を用いた解析において、臨床検体の結果を裏付ける内容のデータが得られており、現在、再現性の確認をしつつ、論文として発表するための準備をすすめている。そして、グリオーマ由来の培養細胞に対して、変異IDH1の導入がその増殖速度を低下させ、放射線や抗がん剤に対する感受性を高めることがわかったことから、変異IDH1が、Nrf2の恒常的安定化により悪性化を果たしているがん細胞に対する抗腫瘍効果を発揮するという仮説をもつに至った。抗がん剤としてのNrf2阻害剤の開発が難航している状況にあって、変異IDH1の利用が有効なNrf2抑制因子となる可能性を見いだした点は、当初の計画以上の進展をもたらす可能性がある。 さらに、平成24年度には、これまで受託解析に依存してきたメタボローム解析システムを立ち上げることに成功し、培養細胞、組織のいずれからでも安定した定量性のあるデータが得られるようになった。これは当初予定には含めていなかった点であり、計画以上の進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
項目[1]については、Nrf2複合体の精製と解析を最優先課題として進める。そのために必要なプロテオーム解析は、東北大学大学院医学系研究科の五十嵐和彦博士との共同研究として実施する。現在、この詳細についての打ち合わせを進めつつある。 項目[2]については、変異IDH1を発現するトランスジェニックマウスを作成することを予定していたが、変位IDH1が、Nrf2の恒常的安定化により悪性化を果たしているがん細胞に対する抗腫瘍効果を発揮するという仮説をもつに至ったことから、戦略を変更する。Nrf2が安定化しているがん細胞に対して、IDH1を導入して、その効果を、遺伝子発現、薬剤耐性、放射線耐性、Nrf2の発現量、蓄積量、クロマチン上の結合領域、エピゲノムの視点から解析を行う。 メタボローム解析システムとしては、今後同位体解析を行い、flux解析が可能となるようシステムを整える予定である。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Accumulation of p62/SQSTM1 is associated with poor prognosis in patients with lung adenocarcinoma.2012
Author(s)
Inoue D, Suzuki T, Mitsuishi Y, Miki Y, Suzuki S, Sugawara S, Watanabe M, Sakudara A, Endo C, Uruno A, Sasano H, Nakagawa T, Satoh K, Tanaka N, Kubo H, Motohashi H*, and Yamamoto M*.
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Journal Title
Cancer Sci
Volume: 103
Pages: 760-766
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Hydrogen sulfide anion regulates redox signaling via electrophile sulfation.2012
Author(s)
Nishida M, Sawa T, Kitajima N, Ono K, Inoue H, Ihara H, Motohashi H, Yamamoto M, Suematsu M, Kurose H, van der Vliet A, Freeman B, Shibata T, Ucnida K, Kumagai Y and Akaike T.
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Journal Title
Nat Chem Biol
Volume: 8
Pages: 714-724
DOI
Peer Reviewed
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