2011 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギー情報とエピゲノム情報のクロストーク機構の解析
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
23116005
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳澤 純 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50301114)
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Keywords | エピゲノム / 代謝 / 転写 |
Research Abstract |
本研究では、ヒトのからだが適正なエネルギーフローを維持するための「エネルギー動的平衡制御システム」について、エネルギー代謝のボトルネックである核小体に焦点を当て解析を進めている。今年度は、核小体に局在し、細胞のエネルギー代謝を制御するタンパク質複合体eNoSCの主要構成因子であるNMLについて、その遺伝子欠損マウスを用いて個体レベルでの解析を進めた。NMLは、肝臓において特に発現が高く、その遺伝子欠損マウスは、9割が胎児期に死亡する。出生した1割について解析を進めたところ、肝臓でのリボソームRNAの転写とタンパク質合成が有意に上昇しており、AMPの増加とATPの低下が認められた。その結果、NML遺伝子欠損マウスの肝臓ではAMPの濃度上昇に伴って活性化するkinase,AMPKの活性化が認められた。細胞内でのAMPKの活性化は、エネルギー産生を上昇させる方向に働く。すなわち、解糖系の亢進とTCAサイクルの活性化、脂肪のβ酸化の促進である。本研究者らは、肝臓細胞中での解糖系、TCAサイクル、脂肪のβ酸化について解析を進め、NML遺伝子欠損マウスでは、β酸化のみが亢進していることを見出した。NML遺伝子欠損マウスに高脂肪食を与えたところ、wild-typeに比べ、体重上昇が有意に抑制され、また、肝臓への脂肪蓄積も認められなかった。一方、NML遺伝子欠損マウス中での解糖系とTCAサイクルについては促進はほとんど認められなかった。NML遺伝子欠損マウスでは、脂肪酸の代謝が上昇しているにも関わらず、ATP濃度は低いままである。これは、TCAサイクルが亢進しないため、脂肪を分解してもAcetyl-CoAで止まってしまうためと考えられる。実際、NML遺伝子欠損マウス細胞中のAcetyl-CoA濃度はwild-typeに比べて著しく高いご現在のところ、AMPKが活性化するにもかかわらず、何故NML遺伝子欠損マウス中ではβ酸化の亢進しか見られないのかは不明である。今後はそのメカニズムについても解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NML遺伝子欠損マウスの解析がほぼ終了に近づいている。また、NML阻害剤についてもin silicoでの設計は終了している。しかしながら、合成が困難であるなどの問題点もあり、今後の解決が必要な課題も出てきでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
NMLの解析は順調に進み、当初計画以上の成果が得られている。また、エネルギーフローを制御する新たな核小体因子についてもスクリーニングを進めている。NML阻害剤に関しては、上述したようにin silicoでの設計は終了しているが、構造が複雑であること、細胞透過性の問題、NMLの活性をいかに測定するかなどの問題が出てきている。合成に関しては、単なる外注ではなく、企業などとの共同研究も視野に入れ進める必要が出てきている。ただ、NML遺伝子欠損マウスの表現型から、NMLの阻害は脂肪の分解に繋がると考えられることから、もしかすると一部の挑戦的な製薬メーカーなどが興味を持ってくれるかもしれない。
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[Journal Article] The E3 ubiquitin ligase activity of Trip12 is essential for mouse embryogenesis2011
Author(s)
Kajiro M, Tsuchiya M, Kawabe Y, Furumai R, Iwasaki N, Hayashi Y, Katano M, Nakajima Y, Goto N, Watanabe T, Murayama A, Oishi H, Ema M, Takahashi S, Kishimoto H, Yanagisawa J
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Journal Title
PLoS One
Volume: 6(10)
Pages: e25871
Peer Reviewed
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[Journal Article] Novel nucleolar pathway connecting intracellular energy status with p53 activation2011
Author(s)
Kumazawa T, Nishimura K, Kuroda T, Ono W, Yamaguchi C, Katagiri N, Tsuchiya M, Masumoto H, Nakajima Y, Murayama A, Kimura K, Yanagisawa J
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Journal Title
J.Biol.Chem
Volume: 286(23)
Pages: 20861-20869
Peer Reviewed
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