2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム配列情報とエピゲノム情報の維持・変異のクロスレギュレーション
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
23116008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
菅澤 薫 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環・バイオシグナル研究センター, 教授 (70202124)
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Keywords | 遺伝子 / エピゲノム / 発現制御 / DNA損傷修復 / 変異 |
Research Abstract |
DNA修復、特に損傷認識段階の制御に関わるエピゲノム環境の解析を行うため、ヌクレオチド除去修復の損傷認識因子であるXPC、およびDDB2にそれぞれFLAG、HAタグを融合したタンパク質を安定発現する細胞株を用いてクロマチン免疫沈降(ChIP)実験系を構築した。細胞に紫外線照射後、経時的にクロマチンを調製してHA-DDB2を標的としたChIPを行ったところ、照射直後に一過性にヒストンとの相互作用が検出された。これらのヒストンについて、DNA損傷認識に特異的な翻訳後修飾が存在するかどうか、質量分析による網羅的解析を現在進めている。一方、FLAG-XPCは紫外線照射の有無にかかわらずクロマチンと結合していることがChIPにより見出されたが、紫外線照射後の時間経過に伴ってFLAG-XPCのゲノム上での分布が変化する可能性が定量PCRにより示唆されつつある。この系を利用して、転写、複製の進行と修復のタイミングとの関連について、解析を進めていく予定である。 一方、チミンDNAグリコシラーゼ(TDG)は元々塩基除去修復の開始に関わる酵素として見出されたものであるが、最近ではDNAの能動的脱メチル化への関与が示唆されている。TDGはSUMO化修飾を受けることが知られているが、ヒト野生型TDG、およびSUMO化部位のリジン残基をアルギニンに置換したK330R変異体をそれぞれTdg遺伝子欠損マウス由来の胎仔線維芽細胞を親株として安定発現させた。これらの形質転換細胞株におけるグローバルな遺伝子発現パターンをマイクロアレイを用いて解析することにより、TDG、およびそのSUMO化の有無がエピゲノム制御に与える影響を解析している。さらにTDGが細胞周期のS期やその他いくつかの条件下で分解されることを見出し、その分子機構と生物学的意義についても調べているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エピゲノムによるDNA修復の制御を解析する上でChIP系の確立が鍵となるが、初年度でXPCやDDB2を標的としたChIPは条件検討を終え、本格的な解析を進められる状況になっている。またDNA修復によるエピゲノム制御の観点では、特にTDGの動態解析からDNA脱メチル化の制御に関わる可能性がある新たな分子機構を見出しつつあり、研究は全体としておおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
紫外線照射に伴いHA-DDB2と共沈するヒストン修飾の網羅的解析、およびFLAG-XPCのゲノムワイドな分布変化の解析を引き続き進める一方、ヌクレオチド除去修復以外の修復機構、特に生命素子と関連したDNAメチル化損傷の修復因子について新たにChIP実験系の構築を目指す。また、TDGによる細胞の遺伝子発現パターン制御と、TDG自身の活性調節機構について解析を進めると共に、やはりDNA脱メチル化に関わることが示唆されているGADD45αについて、次年度に相互作用因子の解析を開始する予定である。
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