2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
23117004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30282198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 勲 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70168433)
松崎 素道 東京大学, 医学系研究科, 助教 (00511396)
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Keywords | 細胞内共生 / 色素体(葉緑体) / 進化 / 藻類 / 寄生虫 / 二次共生 |
Research Abstract |
本研究は、二次共生における異なる進化段階を代表する生物((1)一時的な色素体をもつ半藻半獣原生生物ハテナ、(2)オルガネラとしての色素体をもつが祖先共生藻の縮退核(ヌクレオモルフ)も有するクロララクニオン藻、(3)非光合成性の極端に縮退した色素体をもつ寄生生物パーキンサスとマラリア原虫)について、色素体への依存の仕方や程度、宿主-色素体の関係維持機構を解析し、それぞれの共生藻(色素体)と宿主の統合機構を明らかにすることで、色素体のマトリョーシカ型進化原理を理解し、色素体が駆動する進化・寄生化仮説を検証することを目的としている。そのために以下の3つの項目について重点的に研究を展開している。 1.細胞内共生藻のオルガネラ化初期段階プロセスの解明(井上):半藻半獣原生生物ハテナをモデルとして、ゲノム解析を進めてハテナ核ゲノムに転移した遺伝子推定と分裂関連遺伝子の探索を行なう。今年度は、ハテナ核ゲノムに転移した遺伝子推定のため、ハテナ共生藻Nephroselmis株の5'EST解析を行った。Nephroselmis株からRNA抽出を行い、外注により、次世代シーケンサーGSFLXTitaniumを用いて、各々210.824リード・208,483リードを取得した。得られた配列をアセンブルし,各々のリードから12,811コンティグ・7,730コンティグを得ることに成功した。それぞれのコンティグの中からBLAST検索により細胞分裂に関わる遺伝子を探索し、複数の細胞分裂関連遺伝子を同定した。 2.二次共生における共生藻ゲノムの進化、宿主との相互作用(石田):共生藻ゲノムの進化を比較ゲノム解析によって明らかにするために、既に先行してドラフト配列取得済の2種(Amorphochlora amoebiformis、Lotharella vacuolata)についてヌクレオモルフゲノム解読を完了し、さらに別系統に属しヌクレオモルフゲノムサイズが最も大きい(約1Mbp)Partenskyella glossopodiaについて配列解読を開始した。また、色素体へのタンパク質輸送機構の解明に向けて、B.natansの全ゲノム配列より核コード色素体タンパク質遺伝子配列を網羅的に取得し、色素体への輸送シグナル配列を比較して、多様なタンパク質輸送機構の存在を示唆した。さらに、クロララクニオン藻からの無傷色素体単離法を開発した。 3.寄生性原生生物における二次葉緑体の機能と寄生性獲得との関連(松崎):今年度は、パーキンサスの二次葉緑体を、ミトコンドリアとの物理的相互作用に注意しながら、単離する方法を検討した。オルガネラを蛍光タンパク質で標識した形質転換株を用い、オルガネラ形態を維持したまま細胞破砕を行う条件を見出したことで、今後行うプロテオーム解析の精度向上が期待できるようになったことは特筆すべき点である。またプロテオーム解析の効率を上げる目的で、次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を進めており、これにより暫定ゲノム配列の遺伝子情報を補完する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各研究項目それぞれで若干の遅れはあるもののほぼ計画通り研究が進展している。問題点としては、ハテナDNAからのゲノム増幅が今のところ困難である点である。
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Strategy for Future Research Activity |
ハテナDNAからのゲノム増幅が困難であることから、ゲノム配列の取得より先にトランスクリプトーム取得を先に行ない、遺伝子探索を行なったのちに個々の遺伝子についてゲノムから配列を取得することにする。
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