2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
23117004
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30282198)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 素道 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00511396)
井上 勲 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70168433)
|
Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 細胞内共生 / 色素体(葉緑体) / 進化 / 藻類 / 二次共生 / 寄生 |
Research Abstract |
研究項目1.半藻半獣原生生物ハテナ共生藻のトランスクリプトーム解析を行った。また、ハテナ共生藻に近縁な自由遊泳性ネフロセルミス培養株のトランスクリプトーム解析も行った。解析の結果、両者の遺伝子発現は一部が異なっていることがわかった。また、ハテナゲノム解析については、昨年度少数の細胞を用いた全ゲノム増幅では成功しなかったため、ハテナを含む天然のサンプルから直接DNA抽出を行い、次世代シーケンス解析を行った結果、全ゲノム増幅しなければ、ハテナゲノムが解読できることを見いだした。 研究項目2.二次共生における共生藻ゲノムの進化、宿主との相互作用:共生者ゲノムの進化について、ヌクレオモルフゲノム解読が3種について完了し、既報のBigelowiella natansを含む4種で比較ゲノム解析を行い、共生藻ゲノムの進化について結論を得た(論文準備中)。また、ヌクレオモルフの染色体が倍数化していること、ヌクレオモルフ遺伝子の進化速度が核ゲノム遺伝子の約3倍であること、その原因の一つとしてヌクレオモルフで分子シャペロンが高発現していることなど、新規の特徴を発見し、国際学術雑誌に報告した。さらに、共生者と宿主の分裂協調に関して、B. natansにおいて葉緑体-ヌクレオモルフ―核の分裂プロセスを微細構造レベルでほぼ明らかにした。 研究項目3.寄生性原生生物における二次葉緑体の機能と寄生性獲得との関連:パーキンサスの二次葉緑体を単離する目的で前年度に作成した細胞株が、株として不安定で精製実験に不適であったため、株が不安定化するメカニズムの解析と、組換えコンストラクトの改良を進めている。一方、縮退二次葉緑体の機能として想定される植物ホルモンについて解析を行い、アブシジン酸が合成されないことを明らかにした。これは縮退葉緑体の進化を考える上で重要な発見である。さらにミトコンドリアゲノムが、まったく新奇のゲノム構造を持つことを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各研究項目それぞれで若干の遅れはあるもののほぼ計画通り研究が進展している。特に研究項目2のヌクレオモルフゲノム解析では予定より早期にクロララクニオン藻におけるヌクレオモルフゲノムの進化について結論を得るに至り、さらに染色体の倍数化や遺伝子発現の偏りなどの新知見を蓄積することができ、予想以上の進展があった。また、研究項目3において、パーキンサスのミトコンドリアゲノムが新奇の構造を有することが発見されており、予定にない新発見である。研究項目1では、懸案であったハテナゲノム解読の技術的問題が解決し、今後順調に進展することが期待できる。遅れている点としては、研究項目3で二次葉緑体の単離法確立に予想以上に時間がかかっていることなどがあるが、解決策も見いだされており順調に進展することが期待できる状況にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究項目1:ハテナのトランスクリプトーム、ゲノム解析データをもとに、共生藻から宿主への遺伝子の水平転移(HGT)を、分子系統解析等により網羅的に同定する。 研究項目2:共生藻核ゲノムの進化:ヌクレオモルフゲノムにコードされているペリプラスチダルコンパートメント(PPC)タンパク質遺伝子と葉緑体タンパク質遺伝子について、核遺伝子との発現協調の確立機構を理解するため、B. natansを主な対象としてヌクレオモルフ-核(葉緑体)遺伝子の発現の関係を同調培養株を用いて明らかにする。 葉緑体へのタンパク質輸送:タンパク質の輸送経路や小胞体での選別機構の理解に向け、恒常的な遺伝子導入法を期間内に確立できるよう、電気穿孔法を用いて条件検討を進める。また、以前に確立した無傷葉緑体の単離法を用いて、葉緑体包膜の単離をすすめ、葉緑体包膜のプロテオームを実施し、ゲノム情報等を利用して既知の輸送装置複合体遺伝子を探索する。 葉緑体と核分裂の協調:B. natansの全ゲノム配列から推定された葉緑体分裂装置関連タンパク質のポリクローナル抗体作成をすすめ、葉緑体分裂装置タンパク質の詳細な局在と発現維持機構を解明する。細胞周期と細胞分裂の調節関連のタンパク質遺伝子にも着目し、それらの発現解析をすすめて、細胞周期における発現パターンを既知の他の光合成真核生物の発現パターンと比較する。 研究項目3:二次葉緑体の最外膜に局在するタンパク質に対してエピトープタギングを行った安定発現株を作出し、これを用いて免疫沈降を行うことでプロテオーム解析に充分な精製度を得る。並行して植物ホルモンをはじめとする縮退葉緑体の想定機能について解析を進め、寄生性獲得との関連を考える。またミトコンドリアの翻訳系に着目し、パーキンサスの二次葉緑体においてDNAが失われていることとの関連を検討する。
|