2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Synthetic biology for the comprehension of biomolecular networks |
Project/Area Number |
23119004
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
柘植 謙爾 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任講師 (70399690)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | ゲノムデザイン / 合成生物学 / 遺伝子発現制御 / 人工オペロン / 遺伝子集積 / バクテリア / 代謝経路 |
Research Abstract |
多要素が関与する代謝経路として、色素性物質の「カロテノイド」、「アントシアニン」の2つの代謝経路を具体例に取り上げ、以下の研究を行った。 「カロテノイド」グルコースからカロテノイドまでの生合成に関わる一連の遺伝子群について、遺伝子のソースの如何を問わず大腸菌で働く人工オペロンの構築を行っている。グルコースから中間代謝物質のイソペンテニル二リン酸までの経路については、大腸菌自身の遺伝子による「人工解糖系オペロン(大腸菌)」+「人工非メバロン酸経路オペロン(大腸菌)」以外に、「人工解糖系オペロン(酵母)」+「人工メバロン酸経路オペロン(酵母)」を構築し、2つの経路によるカロテノイド生産を行うことを目標にしている。昨年までに、「人工解糖系オペロン(大腸菌)」と「人工解糖系オペロン(酵母)」を構築したが、「人工非メバロン酸経路オペロン(大腸菌)」については、一部遺伝子が期待通りの発現制御が行われていないことが判明した。そこでこの原因となる遺伝子(dxr)について人工オペロン内の遺伝子配置を見直すことにより、期待したパフォーマンスを示す新たなオペロンの構築に成功した。また、「人工解糖系オペロン(酵母)」については、最初に構築したオペロンプラスミドはほとんど機能しなかったが、この大腸菌株の継代培養を繰り返したところ、大腸菌の本来持つ非メバロン酸経路の遺伝子をすべて取り除いても生育する株の取得に成功した。 「アントシアニン」植物で生産されるアントシアニンについて、本年度は、アントシアニン合成の中間代謝産物であるナリンゲニン以降の反応に集中して、実験を行った。ナリンゲニン以降のF3F、DFR、LDOX、3-GTの4つの酵素をそれぞれ精製し、これを様々な比率で混合してin vitroで反応させた。その結果、各酵素の量比によって、アントシアニンの合成量が大幅に変化することを見いたした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象としている2つの代謝経路「カロテノイド」と「アントシアニン」についてそれぞれの進捗状況は以下の通りである。 「カロテノイド」最大の難関と考えられた「人工メバロン酸経路オペロン(酵母)」については、当初非メバロン酸経路を欠損した大腸菌に導入しても、ほとんど働かない状況であった。しかしながらこの大腸菌株の継代培養を繰り返し行ったところ、HMG1遺伝子の変異導入により大腸菌非メバロン酸経路全遺伝子欠損株で機能するオペロンが得られた。さらにこの株に人工カロテノイドオペロンを追加導入することにより、カロテノイド生産が可能であることを確認できた。この結果は、当初予定していた平成26年度の研究内容の先取りした成果であり、この点において計画以上に進展していると言える。 「アントシアニン」生合成経路の中間体で非常に安価な基質のナリンゲニンから、最終産物であるアントシアニンの一種のペラルゴニジン-O-グリコシドまでに必要な4つの酵素(F3H,DRF,LDOX,3-GT)を組み換え大腸菌より精製し、これらの酵素の量比を様々に変えて、ナリンゲニンを出発材料にin vitroでの反応を行ったところ、特定の酵素の量比になると最終産物の生産量が増大することを確認できた。次に、in vivoでナリンゲニンよりも上流の基質であるチロシンから、ペラルゴニジンまで必要なの10遺伝子を導入した大腸菌を作成し、現在HPLCによる生産物の確認を行っている。陶山班との連携による、ジャイアントベシクルによるin vitro反応系については、その材料となる精製酵素の安定性に問題が認められ、現在精製条件を再検討中であり、この点で当初計画より若干の遅れがある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、「カロテノイド」、「アントシアニン」という2種類の色素化合物の生合成経路の人工代謝経路の構築を目標に以下のように行う予定である。 「カロテノイド」昨年度までに作製した、人工解糖系オペロン、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体オペロン、人工メバロン酸経路オペロン、カロテノイドオペロンの各オペロンをOGAB法を用いて1つのプラスミド中にまとめることで、グルコースからカロテノイドに至る一連の代謝経路を実行可能な遺伝子集積体を構築する。これを大腸菌に導入し、対応するゲノム上の遺伝子の削除を行う。ここで用いるオペロンは、カロテノイド合成経路以外は、ひとまず大腸菌由来の遺伝子で構成されたオペロンを用いる。この集積体で大腸菌ゲノム中の遺伝がある程度削除可能であることが認められたら、各オペロンについて、大腸菌遺伝子を用いたオペロンから真核生物である酵母遺伝子を用いたオペロンへと適宜変更を試みる。 「アントシアニン」昨年まで得られたナリンゲニン以降に必要な4つの酵素(F3F、DFR、LDOX、3-GT)の量比について、これを厳密に再現する人工オペロンの構築を行う。さらに、先行研究により開発されている、チロシンを出発材料にナリンゲニンを生産する系は、非オペロン性の遺伝子クラスターであるが、ここに用いられている遺伝子を上記のアントシアニンオペロンと連結して、チロシンからナリンゲニンを経由してペラルゴニジンを合成する一連のの代謝経路を持つオペロンをOGAB法により構築する。これらの人工オペロンを用いて、陶山班との連携のもとin vivtoチロシンからのアントシアニン生産を試みる。また同オペロンを大腸菌に導入し、in vivoでのチロシンからアントシアニンの生合成を試みる。
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Research Products
(16 results)
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[Presentation] Investigation of an artificial glycolytic operon toward bottom-up designing of a genome
Author(s)
Kenji Tsuge, Kenji Nakahigashi, Takashi Togashi, Masako Hasebe, Yuki Takai, Miki Hasegawa, Yasuyuki Igarashi, Naoyuki Sugiyama, Naomi Sato, Yoshiaki Hirayama, Yasushi Ishihama, Tomoyoshi Soga, Masaru Tomita, and Mitsuhiro Itaya
Organizer
UK-Japan Workshop
Place of Presentation
京都市
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