2013 Fiscal Year Annual Research Report
無細胞タンパク質合成系で動作する人工遺伝子回路の構築
Project Area | Synthetic biology for the comprehension of biomolecular networks |
Project/Area Number |
23119007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
陶山 明 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90163063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄田 耕一郎 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (00401216)
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Project Period (FY) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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Keywords | 合成生物学 / バイオテクノロジー / 生体生命情報学 / 遺伝子 / DNAコンピュータ |
Research Abstract |
多要素からなる人工遺伝子回路の動作を正確かつ迅速に計測する手法の開発については、手法のphoto-DEAN法が完成したので、それを用いて生細胞内に組み込まれた人工遺伝子回路と生細胞本来の遺伝子回路との干渉の有無と人工遺伝子回路の動作に及ぼす影響を調べる研究に着手した。必要となる変換テーブル分子の設計と合成、その混合液の調製を終え、予備的な測定を行った。計測対象に選んだ遺伝子の数は、大腸菌に組み込んだ人工遺伝子回路に含まれる遺伝子と大腸菌が本来もつ遺伝子回路の遺伝子の両方を合わせて117である。 GUV内での人工遺伝子回路の動作の実現と計測については、二つのシグナルRNA分子がGUV内に共存するときのみGFPタンパク質が発現される人工遺伝子回路を作製し、GUV内で正しく動作させることに成功した。また、GUV外に存在するシグナル分子によりGUV内の人工遺伝子回路の動作を制御するために、GUV外に存在するIPTGをシグナル分子としてGUV内のシグナルRNA分子の発現を制御する人工回路を構築した。試験管内での動作が確認できたので、GUV内の無細胞タンパク質合成系での実験に着手した。 核酸相互作用による転写制御を利用して工学的に利用価値の高い人工遺伝子回路を合理的に構築する手法の開発については、動的モジュールの開発とモジュールを組み合わせてネットワークを構築する研究を進めた。その結果、RTRACSのモジュールの中で最も基本的なコンバータモジュールと二入力ANDモジュールについて、モジュールの反応を改良することにより、入力RNAの値に応じて出力RNAの値をダイナミックに変化させることに成功した。また、3つのRTRACSモジュールを用いて排他的論理和(XOR)の演算を実現する人工回路を設計して作製し、特性を調べる予備的な実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展し、達成度は約80%である。実績報告書に記載した論文以外に、3報の学術論文を投稿することができた。しかし、いくつかの研究項目が次年度に持ち越しとなった。 多要素からなる人工遺伝子回路の計測法については、単一GUV内あるいは単一細胞内の人工遺伝子回路の動態を計測できるほどにはphoto-DEAN法の感度を向上させることができなかった。10 zmoを超える定量感度を実現できない原因は明白になっているので、すれを踏まえて次年度、いくつかの新たな改良を試みることにする。 また、RTRACSの基本モジュールをダイナミックに動作させる反応システムを構築する研究については、反応を改良することによりダイナミックな動作を実現することに成功したが、その特性が定量的に再現できる反応モデルを構築するところまでは研究が進まなかった。反応モデルの構築は次年度に持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果に基づいて研究目標を達成するために、多要素人工回路実現-1、多要素人工回路実現-2、手法性能向上の研究を実施する。 多要素人工回路実現-1については、柘植班が大腸菌内に構築しているアントシアニン・カロテノイドを合成する人工回路を利用して研究を行い、多数の要素の組み合わせにより生成される人工遺伝子回路の無細胞タンパク質合成系での動作を調べる。また、いくつかの人工回路については、GUV内だけでなく大腸菌内での動作も計測する。そして、両者で動作にどのような違いがあるのか、その原因はどこにあるのか、大腸菌が本来もつ遺伝子回路と人工遺伝子回路との間の相互干渉に原因はないのか、などを調べる。これらの実験・解析結果を基に、生細胞より実験が容易に行える無細胞タンパク質合成系での実験結果を利用して生細胞での人工回路を合理的に実現する方法を構築するための手懸かりを得る。 多要素人工回路実現-2については、二つのシグナルRNAで標的遺伝子の発現を制御するモジュールのダイナミックな特性を定量的に再現できる反応モデルを構築する。そして、構築したモデルを用いて、多数のモジュールからなる回路を計算機で設計する方法を開発する。この設計法を用いて、アントシアニン・カロテノイドを合成する人工遺伝子回路の一つの遺伝子について、そのmRNA 量を一定の値に維持する回路を設計して構築する。 手法性能向上については、photo-DEAN法の感度をさらに高める研究を行い、GUVや生細胞一つでも人工遺伝子回路の動作の計測が可能な感度を実現する。また、膜タンパゥ質を利用して膜に小さな孔を形成することにより、GUV内での人工遺伝子回路の長時間動作の実現を試みる。
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Research Products
(20 results)