2014 Fiscal Year Annual Research Report
無細胞タンパク質合成系で動作する人工遺伝子回路の構築
Project Area | Synthetic biology for the comprehension of biomolecular networks |
Project/Area Number |
23119007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
陶山 明 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90163063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄田 耕一郎 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (00401216)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 合成生物学 / バイオテクノロジー / 生体生命情報学 / 遺伝子 / DNAコンピュータ |
Outline of Annual Research Achievements |
【1. 多要素人工回路実現1】、【2. 多要素人工回路実現2】、【3.手法性能向上】の3つの研究を行った。【1】については、柘植班が作成した解糖系の人工遺伝子回路の大腸菌内での動作を調べた。効率の異なる人工遺伝子回路について、回路上の遺伝子と大腸菌ゲノム上の遺伝子の転写産物の絶対量をPhoto-DEAN法で計測した。解析の過程で、重要な標的遺伝子の一部について、プローブ配列の特異性に問題があることがわかった。そこで、標的以外の転写産物との非特異的結合の影響を評価できる新しい設計法を開発し、これまで以上に特異性の高いプローブ配列が設計できるようにした。それらの配列を基に、MTTセットを再度調製する準備を行った。【2】については、GUV内に入れた、二入力AND型遺伝子発現制御モジュールをGUV外のシグナル分子で制御してGFPを発現させる実験を行った。その結果、外部シグナル分子によるシグナルRNAのGUV内での合成制御とGUV内のシグナルRNAによるGFP発現制御については成功したが、両者を一緒にした回路ではまだ課題が残った。また、二入力AND型遺伝子発現制御モジュールのダイナミックな入出力特性の実験結果を定量的に再現できる反応モデルを構築した。人工遺伝子回路が大きくなると、モジュール性や接続性の高さが重要となる。3つの論理ゲートモジュールからXOR回路を構築する実験と正規直交配列のハイブリダイゼーション速度の配列依存性の解析から、高いモジュール性と接続性を実現するための配列設計法と回路設計法を確立した。【3】については、一つのGUVや生細胞で人工遺伝子回路の動作を調べるために、Photo-DEAN法の感度をさらに高める研究を行い、新しい2種類の改良法を開発した。また、顕微鏡下で一つのGUVや生細胞に対してPhoto-DEAN法を適用するための手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究に関しては、総合的な達成度は約70%である。【多要素人工回路実現1】については、使用していたプローブ配列の問題点が浮上し、研究の進行が大幅に遅れた。しかし、その結果、これまで以上に特異性の高いプローブ配列が設計できる新しい方法を開発することができた。この配列を用いて再実験を行えば、最終年度には当初の目標を達成できると考えられる。【多要素人工回路実現2】、【手法性能向上】については、少し未着手、未解決の課題が残ったが、かなりの程度で目標が達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的を達成するために、これまでの研究成果に基づいて、【多要素人工回路構築法1】、【多要素人工回路構築法2】、【手法性能向上】の3つの研究を完成させる。【多要素人工回路構築法1】については、特異性を高めた新しいMTTセットを用いて、柘植班が作成した、効率が様々に異なる解糖系の人工遺伝子回路の大腸菌内での動作を再度調べる。また、それらの人工遺伝子回路の動作を試験管内およびGUV内の無細胞タンパク質合成系でも調べる。そして、それらの間で動作がどのように違うのか、その原因はどこにあるのか、大腸菌が本来もつ遺伝子回路と人工遺伝子回路との間の相互作用に原因はないのか、などを明らかにする。これらの実験・解析結果を基に、生細胞より実験が容易に行える無細胞タンパク質合成系での実験結果を利用して生細胞での人工回路を実現する方法を構築する。【多要素人工回路構築法2】については、GUV外のシグナル分子を用いて、GUV内に入れた二入力AND型遺伝子発現制御モジュールの動作を制御してタンパク質を発現させる研究を完成させる。また、これまでの研究成果を用いて、多数のRTRACSモジュールからなる人工遺伝子回路を計算機で設計する方法の基盤を完成させる。この設計法を用いて、標的遺伝子のmRNA 量を一定の値に維持する回路を設計して実験により動作を確認する。これにより、RTRAVSのモジュールを利用して複雑な人工遺伝子回路が合理的に構築できることを示す。【手法性能向上】については、これまでのPhoto-DEAN法の感度をさらに高めた改良版のPhoto-DEAN法の感度と正確度の詳細な評価を行い、手法を完成させる。また、その手法を用いて、顕微鏡下で一つのGUVや生細胞内の人工遺伝子回路の動作を計測できることを示す。
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Research Products
(11 results)