2023 Fiscal Year Annual Research Report
社会があれば知性はあるか:甲殻類・水圏無脊椎動物の社会と認知能力を捉え直す
Project Area | Cognitive Evolutionary Ecology: A new approach for the study of the origin of animal intelligence and its relation to complex society |
Project/Area Number |
23H03870
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石原 千晶 (安田千晶) 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (80771451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹下 文雄 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (00723842)
三浦 収 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (60610962)
磯村 尚子 沖縄工業高等専門学校, 生物資源工学科, 教授 (90376989)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 認知能力 / 水圏無脊椎動物 / 個体識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来、原始的な神経系しか持たない水圏無脊椎動物は、社会も単純で、認知能力が低いと考えられてきた。しかし近年、これらの想定に対する反証が相次いでいる。本研究課題は、社会環境への適応が認知能力の進化を促したとする社会的知性仮説に基づき、甲殻類(ヤドカリ・シオマネキ)・刺胞動物(イソギンチャク)・扁形動物(二生吸虫)の社会と認知能力をより詳細に調査して、水圏無脊椎動物の認知能力の再評価につなげる基盤の構築を目指している。
2024年度は、研究代表者と3名の分担者がそれぞれ個別に研究を進め、次年度・次々年度を見据えた、情報の収集および研究基盤の構築に従事した。研究代表は、本研究課題の最終目標であるヤドカリの真の個体識別(複数の既知個体を区別する能力)の検証に利用可能な新たな実験系を探索した。そのなかで、これまで繁殖期のメスをめぐるオス間闘争を介した Familiar recognition(既知個体と未知個体を区別する能力)が知られているテナガホンヤドカリにおいて、非繁殖期かつメスが不在の状況においても、オスが相手のオスに対し、Familiar recognition を示す可能性を示唆する結果を得た。これにより、真の個体識別検証の視野が広がった。本成果は年度末の生態学会にて予報的に発表済みである。 分担者については、それぞれ、シオマネキにおける Familiar recognition の予備的な検証および鏡像自己認知の研究手法の模索、二生吸虫における新たな繁殖分業種の発見、イソギンチャクにおける系統解析および予備的な野外調査などを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は今後につながる研究基盤の構築を目指し、研究代表および3名の分担者が個々の研究対象種について新たな実験系の開発や対象種の基礎データ収集に従事した。予報的ではあるものの、一部の成果について発表できたものもあり、本区分と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究代表者、分担者が共に各自のテーマを継続し、成果報告や内容のとりまとめを進める。一方、分担者間での専門分野が異なるため、互いの強みを生かした共同研究の可能性についても模索する。
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