2023 Fiscal Year Annual Research Report
電気/光エネルギーを駆動力とする小分子の活性化と自在変換
Project Area | Green Catalysis Science for Renovating Transformation of Carbon-Based Resources |
Project/Area Number |
23H04903
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
正岡 重行 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (20404048)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 錯体化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上に豊富に存在する単純かつ安定な小分子を有効に利活用することは、人類社会の持続的発展において極めて重要である。本研究では、小分子を基盤原料とする有機分子骨格の自在構築法の確立を目標とした研究を展開する。特に、二酸化炭素や水などの地球上に豊富に存在する安定小分子を原料に、様々な低反応性有機分子の自在変換を可能とする新たな学理の構築をその最終目標とする。 当研究室では、柔軟な多電子酸化還元能と配位不飽和サイトを有する金属五核錯体を用いることで、水の酸化反応やCO2還元といった小分子変換反応を高効率で達成してきた。この成果に立脚し、2023年度の研究では、本5核錯体骨格の中心金属をNiとしたニッケル5核錯体を利用することで、多電子移動を伴う二酸化炭素の活性化を鍵戦略とする、より温和な条件下でのアルケン類のヒドロカルボキシル化反応を目指した。その結果、スチレンの電気化学的ヒドロカルボキシル化を、印加電圧3.0 Vにおいて最大89 %収率・最大91%ファラデー効率を達成することができた。この結果は、10 Vもの非常に高い印加電圧を必要とする既報の研究とは対照的であり、また高い収率とファラデー効率を両立するものであった。更に、反応機構を調査したところ、Ni5が2電子還元されたのち、CO2が相互作用することで、活性種であるNi5-CO2付加体が生成することが反応進行のカギであることが示された。続いてNi5-CO2付加体がスチレンとカップリングすることでラジカルアニオン中間体が生成し、最終的にプロトン化を経て目的物であるカルボン酸が生成することが判明した。 以上より、金属錯体への電気化学的刺激の印加により、小分子を活性化し、生じた活性種を用いて低反応性有機分子を変換できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、二酸化炭素や水などの地球上に豊富に存在する安定小分子を原料に、様々な低反応性有機分子の自在変換を可能とする新たな学理の構築を目標としている。そのカギとなるのは、金属錯体をメディエーターとし、光・電気化学的刺激を駆動力に、安定小分子を活性化することである。前項でも述べた通り、これまでに、独自の着眼点に基づく金属錯体触媒系の開発を行い、未踏の効率での低反応性有機分子変換に成功した。以上の理由から、進捗状況を「(3)おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の進捗により、研究代表者の提唱する安定小分子の活性化のための戦略の有効性が示された。今後は、この概念をさらに発展させ、戦略の一般化に取り組む所存である。より具体的には、(i)反応に用いる駆動力を電気のみならず光に展開させること、(ii)活性化する小分子をCO2に加え水や窒素へも拡張することを基本方針とする。本方針に基づき、種々の反応開発を精力的に実施し、最終的には「電気/光エネルギーを駆動力とする小分子の活性化と自在変換」を達成する。
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