2012 Fiscal Year Annual Research Report
Manufacturing technology in prehistoric southwest Asia
Project Area | Ancient West Asian Civilization as the foundation of all modern civilizations: A counter to the 'Clash of Civilizations' theory. |
Project/Area Number |
24101004
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三宅 裕 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60261749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 建速 東海大学, 文学部, 教授 (20408058)
小高 敬寛 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (70350379)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 古代の技術 / 国際研究者交流 / トルコ / パイロテクノロジー / 土器 / プラスター / 銅冶金術 / 石器の加熱処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度に当たる平成24年度は、これまでに調査をおこなってきたトルコ共和国の遺跡から出土した資料の分析を中心に研究を進めた。土器新石器時代の遺跡であるサラット・ジャーミー・ヤヌ遺跡出土の土器、プラスター、銅鉱石については、研究分担者の松本と研究代表者である三宅が中心になって担当した。遺跡自体や周辺の土壌を含め波長分散型蛍光X線分析による成分分析を進め、土器資料については併せて偏光顕微鏡による岩石学的な観察もおこなった。新石器時代初頭のハッサンケイフ・ホユック遺跡から出土した資料については、三宅と研究協力者が中心となって分析・研究を進め、特にパイロテクノロジーの前身として注目される石器の加熱処理についての検討をおこなった。研究分担者の小高は、西アジアの初期の土器資料を収集し、平成25年3月にイギリス、ケンブリッジ大学に所蔵されている資料の調査をおこなった。 平成25年3月には、トルコ共和国から研究者を招聘し、南東アナトリアの先土器新石器時代をテーマとしたシンポジウムを開催した。ハッサンケイフ・ホユック遺跡とグシル・ホユック遺跡の成果についての発表があり、工芸技術のあり方について検討した。また、平成25年3月に研究集会を開催し、松本がサラット・ジャーミー・ヤヌ遺跡出土の土器の胎土分析の結果について発表した。3つの時期が存在することが確認されている本遺跡出土の土器は、最も古い第1期の土器は他の2つの時期と比べて使用されている粘土が異なっていることが指摘され、出現期の土器は外部からもたらされたものである可能性も考慮する必要が出てきた。 平成25年1月には、三宅が日本考古学協会、中国考古学会、東南アジア考古学会、日本西アジア考古学会が合同で主催した『アジア考古学四学会合同講演会』において、これまでの西アジアにおける銅冶金術に関する研究成果をまとめた講演をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初の計画通り、これまで調査をおこなってきたトルコ共和国における遺跡の資料の分析・研究を順調に進めることができた。特に、パイロテクノロジーに関連する重要な資料である土器については、遺跡周辺の土壌を含む試料を分析することができたことにより、南東アナトリアにおける土器出現の背景について、具体的なデータを基に語ることができるようになったことの意義は大きい。今後、周辺地域の遺跡から出土した資料についても分析を進めることができれば、より広い視野から西アジアにおける土器の起源の問題にアプローチしていくことができるようになると期待される。また、海外の研究者の協力を得て、イラクからの資料についても調査を開始することができた点も大きな進展である。 石灰・石膏プラスターや銅冶金術については、現在資料の理化学的な分析を進める一方で、銅の重要な産地であるトルコとイランの発掘報告書などを集めることができ、今後の研究を進めていく基盤をある程度整えることができた。 また、日本に招聘した研究者とは強固な関係を築くことができ、今後の共同研究に向け現在双方で検討を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も基本的には自らが手がけた調査から得られた資料を中心に分析・研究を進めていくことが基本となる。新石器時代初頭のハッサンケイフ・ホユック遺跡については、現在も併行して発掘調査が進められており、新たに出土する資料についても本研究の対象として積極的に分析などを進めていく計画である。また、筑波大学にはシリアやイランなど、西アジア各国の遺跡から出土した資料が収蔵されており、そうした資料についても必要に応じて分析・研究を進め、比較材料を増やしていきたいと考えている。 また、古代の工芸技術研究の分野で第一線で活躍している海外の研究者とも密接な連携を取りながら、そうした研究者を日本に招聘してシンポジウムを開催するなどして、情報交換を進めるとともに、共同研究へと発展させていくことを目指す。 さらに、本研究組織の現メンバーだけでなく、関連した分野の研究者とも連携を取り合いながら、古代西アジアのパイロテクノロジー、あるいは工芸技術全般について多方面からアプローチしていきたい。その成果は、本領域研究の一環として出版が計画されているシリーズ図書の中に盛り込んでいく予定である。
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Research Products
(7 results)