2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Ancient West Asian Civilization as the foundation of all modern civilizations: A counter to the 'Clash of Civilizations' theory. |
Project/Area Number |
24101004
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三宅 裕 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60261749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 建速 東海大学, 文学部, 教授 (20408058)
小高 敬寛 東京大学, 総合研究博物館, 特任助教 (70350379)
前田 修 筑波大学, 人文社会系, 助教 (20647060)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | パイロテクノロジー / 土器 / 銅冶金術 / プラスター / 西アジア / 新石器時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も昨年度に引き続き、研究代表者らが発掘調査を手がけたトルコ共和国の新石器時代の遺跡サラット・ジャーミー・ヤヌとハッサンケイフ・ホユックから出土したパイロテクノロジー関連資料の分析を中心に研究を実施した。 新石器時代の初頭の遺跡であるハッサンケイフ・ホユック遺跡からは、大量にフリント製の打製石器が出土しており、その中には表面に光沢の認められる資料が存在する。これについては、石器製作時に原石を熱して加工しやすくするための加熱処理が施されていることが想定されていた。この資料についてはすでに予備的な研究を進めていたが、本年度から新たに研究分担者を加え、実験考古学的手法を用いた本格的な研究に着手した。石器の加熱処理はパイロテクノロジーの先駆けとも言えるものであり、アフリカではすでに中期石器時代にそうした例が存在することが知られているが、西アジアでは今のところ最古の事例である。加熱温度や加熱時間に関する詳細なデータを得ることができ、ある程度厳密な温度管理がなされていたことがわかってきた。 西アジアにおける出現期の土器が出土している、サラット・ジャーミー・ヤヌ遺跡からの資料の分析では、土器の製作技術に関連する分析を進めた。 農学関係者の協力を得て、現代の家畜の糞を収集し、その糞に含まれる繊維にどのような特徴があるのか明らかにし、それと実際の土器に含まれている繊維の痕跡の比較研究を進めた。こうした分析により、家畜の糞が土器の中に混ぜられていたことがほぼ確実になった。 パイロテクノロジー以外にも、西アジア先史時代の工芸技術について研究の進展がみられた。ハッサンケイフ・ホユック遺跡からは墓の副葬品として石製容器が出土していたが、分析をおこなった結果、石材が緑泥石岩(クロライト)であることが確認された。これにより、石材の産地の同定も可能になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も当初の計画通り、これまで発掘調査をおこなった遺跡から出土した先史時代の工芸技術に関連する資料を中心に順調に分析・研究を進めることができたと評価することができる。特に、今年度から新たに研究分担者を加え、パイロテクノロジーの前身とも言える石器の加熱処理のについても研究を本格的に開始することができたことは大きな進展であったと言える。遺跡の周辺から採集したフリントの石材を対象に、焚火や電気窯を用いて実験考古学的研究をおこない、加熱温度と加熱時間が石材にどのような変化を与えるのか詳細なデータを得ることができたことは大きな意義がある。また、その成果の一部を国際学会で発表したことで、アフリカの石器の加熱処理を研究している研究者とも情報交換をおこなうことができ、今後共同研究に発展させていく道が拓かれた。 土器の製作技術については、土器に混和された植物繊維が家畜の糞由来のものである可能性が高いことが判明し、具体的な動物を特定するために、実際の家畜の糞を入手して分析を進める態勢が整ったことは大きな前進であった。土器の型式学的分析においては、これまでの成果の一部を国際学会で発表する機会があり、西アジアの出現期の土器を研究している研究者と情報交換をおこなうことができた。土器やプラスター、銅冶金術を含めたパイロテクノロジーの技術的発展の様相については、これまでの研究成果を英文で論文をまとめ、投稿することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は概ね順調に進展しており、今後も引き続きこれまでの方針に沿って研究を進めていくが、次年度は本研究の最終年度に当たるため、これまで以上に成果の取りまとめとその発信にも力を注いでいきたい。 石器の加熱処理や土器の製作技術の研究では、実験考古学的手法を積極的に導入し、先史時代の技術の実態の解明に努め、銅冶金術の研究でも自然銅などを対象にした実験考古学的研究を進める。また、パイロテクノロジー以外の工芸技術についても、シリコン樹脂を使用したレプリカ法による分析をおこない、遺物に残された製作工具痕などについて顕微鏡による観察を進め、製作技法の解明を進める予定である。 年度の後半には、西アジアの工芸技術について研究している研究者を集め、本研究の成果の検討とパイロテクノロジーの系譜をテーマとした総括的な研究会を開催し、そこでの成果を出版物としてまとめたい。
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Research Products
(11 results)