2015 Fiscal Year Annual Research Report
金属や半導体のクラスターおよびナノ粒子からなる元素ブロック
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
24102004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 明 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (40182901)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 無機高分子 / 無機元素ブロック / ナノ材料 / クラスター / 光電子材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、有機材料同様の反応性や加工性と無機材料の安定性と半導体特性を有した種々の無機元素ブロック材料系を創成することを目的とする。それらを用いた新規光電子機能材料の開拓に貢献できれば、その出口として環境負荷の低い新規プロセスおよびデバイスへのブレークスルーにつながることが期待される。元素ブロックとしては、金属ナノ粒子系や無機半導体ナノ粒子系を対象物質として、それら元素ブロックをビルディングブロックとすることによって、自在な光電子物性の制御が可能な材料系の開拓を行うことを目的としている。平成27年度は、POSS(polyhedral oligomeric silsesquioxane,多面体オリゴメリックシルセスキオキサン)と金属ナノ粒子とのハイブリッド系材料における特異な自己組織化構造の形成と、表面増強ラマン(SERS,Surface Enhanced Raman Scattering)を用いた超高感度センサーに関する検討を行った。octa-vinyl POSS (OV-POSS)と銀(Ag)ナノ粒子とのハイブリッド膜においては、クロススター状の特異な階層構造形成が観察された。Agナノ粒子が増えるほど,クロススター状構造の分岐が増加し,逆にAgナノ粒子が減るほど分岐がなくなり,POSS結晶本来の単斜晶形に近づくことが示された。これらの結果からは,POSSの結晶化がPOSSの結晶面上のAgナノ粒子によって阻害されることによって分岐構造が形成されるといった,速度論支配によるPOSSの自己組織化が起こっていることが示唆された。このような階層構造を加熱することによって、クロポアとマイクロポアが共存したような多孔質構造のAg膜が形成された。このようなAg膜を用いたSERSセンサーを用いることによって、物の表皮に付着した化学物質の超高感度検出が可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、金属および無機半導体系の元素ブロックを用いた新規光電子機能材料の開拓とそれらを用いた環境負荷の低い新規プロセスおよびデバイスの開発を目的として研究を行っている。環境負荷の低い低温での塗布型のデバイス形成プロセスとして、酸化チタンナノ粒子と高分子系高誘電体とのハイブリッド系において、シリコンとのヘテロ接合型の太陽電池においては10%を超える変換効率を達成し、その効率向上の機構をTOF(Time-of-Flight)法を用いて検討したところ、高誘電率系のポリマー材料とのハイブリッドにおいて顕著なキャリア移動の向上が起こるいことが分かった。また、塗布型の電極材料の開発を目指して、金属ナノ粒子を用いたレーザー直接描画上によって、低抵抗の透明導電膜を得ることができている。また、太陽電池用のエネルギーストレージデバイスを目指して、レーザー直接描画法よる平面型マイクロスーパーキャパシタ形成に関する検討を行った。これによって、平面型マイクロスーパーキャパシタとしては、これまでで最も高いエネルギー密度を達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、携帯型の様々な電子機器の開発が進められているが、それらにおいてキーデバイスとなるのが二次電池をはじめとするエネルギーストレージデバイスである。今後、携帯型の電子機器は、身に着けることのできるウェアラブル型の電子機器へと進化していくことが予想されており、それによるネットワーク接続型健康管理の普及などの将来像も描かれている。そのようなウェアラブル型電子機器用のエネルギーストレージデバイスに要求される特性として、衣類への装着を考えた場合には、軽量・薄型・柔軟であることに加えて折り曲げ等の衝撃にも耐性があること、高速充電が可能であること、さらには将来のワイヤレス充電技術との相性が良いことなどがあげられる。平面型構造のフィルム状マイクロスーパーキャパシタはこれらの要求を満たす特性を有しているものの、二次電池に比べてエネルギー密度が低く駆動時間が短い点が課題となっている。平成27年度までの検討してきた平面型スーパーキャパシタに、金属酸化物系元素ブロックの酸化還元特性を付与することによって、さらなる高エネルギー密度化を目指した研究をおこなう。また、これまでに研究を行ってきた酸化チタンナノ粒子系を組み込むことによって、光蓄電型のエネルギーストレージデバイスの開拓を目指す。
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