2014 Fiscal Year Annual Research Report
磁性金属元素ブロックの三次元空間制御による新機能性高分子の創成
Project Area | Creation of Element-Block Polymer Materials |
Project/Area Number |
24102012
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 靖哉 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80324797)
|
Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 高分子 / 希土類 / 錯体 / 発光 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属元素が規則的に配列した金属元素ブロックは、金属イオン単独とは異なる興味深い光・電気・磁気特性を示す。この金属元素ブロックを三次元的に空間制御および分子レベルで機能化することで、従来の無機材料や高分子材料を超えた新領域の機能物質を構築できる。 これまで我々は磁性金属元素として希土類を選択し、希土類元素が三次元的に配列することによる光磁気機能の発現の研究を行ってきた。平成26年度では、希土類元素ブロックを高分子化した感温特性を有する発光体「カメレオン発光体」の発光メカニズムの詳細を検討した。具体的には、カメレオン発光体は温度によって発光色が変化する。この発光メカニズムを検討するため、カメレオン発光体の発光中心であるEu(III)イオンとTb(III)イオンの混合比を変化させて、そのエネルギー移動効率の計測を行った。計測の結果、Eu(III)イオンの混合費が少なくなると、エネルギー移動効率が低下することがわかった。 これらの希土類元素ブロック高分子は高分子鎖が水素結合などの相互作用により結合しているため、水および有機溶媒に不溶性である。この粉体をナノ粒子化することで、希土類元素ブロック高分子を有機媒体に均一に分散することが可能になる。ここで我々は希土類元素ブロック高分子のナノ粒子化を検討した。ミセルを用いた水溶液中での検討を行ったところ、平均粒径66nmのナノ粒子が得られることがわかった。このナノ粒子の熱分析測定(TG-DTA測定)を行ったところ、その分解温度は300℃以上あり、ナノ粒子化しても熱耐久特性は維持していることが明らかになった。さらに、希土類元素ブロック高分子のナノ粒子の発光特性を評価したところ、アセトン溶液中におけるナノ粒子の発光寿命は、バルク粉体の発光寿命と一致することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に報告して全世界的に有名になった感温機能性の高分子発光体「カメレオン発光体」の発光メカニズムを検討し、テルビウムイオンかたユーロピウムイオンへのエネルギー移動効率が希土類イオンの混合比によって大きく変化することを初めて明らかにすることができた。これまでのエネルギー移動は一般にドナーとアクセプターのエネルギーのオーバーラップによって議論されてきたため、本研究成果は従来のエネルギー移動の解釈を大きく変えるものである。さらに、その感温機能特性を微細制御(感温感度の温度領域を最適化)することにも成功した。新しい学術研究を発展させただけでなく、材料科学の立場からも大きな成果である。 さらに、これまで水や有機溶媒に不溶であった希土類錯体高分子をナノ粒子化することにも成功した。このナノ粒子化技術は、溶液中におけるミセル会合挙動を材料合成へと応用した初の試みであり、錯体合成と界面科学が融合した新しい研究成果である。ナノ粒子化しても熱耐久特性や発光特性が失われていないことを示差熱分析およびレーザーを使った発光寿命測定により明らかにした。このナノ粒子化により、カメレオン発光体を含む様々な希土類錯体高分子を材料へと展開することが可能になった。本研究は新しい機能物質創成の観点からの重要成果であり、かつ産業応用展開も見据えた重要成果である。 以上のことから、平成26年度の研究成果は、当初の計画以上に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
希土類錯体ポリマーは、錯体部位を連結する「有機分子ユニット」によって構造および物性変化がおこる。つまり、系統的な「有機分子連結ユニット」の検討は、希土類錯体ポリマーに新しい機能を与えると考えられる。 今後は、これまで構築してきた希土類錯体ポリマーの形態制御を行うため、有機連結ユニットの機能化を行う。具体的には、希土類錯体ポリマーの鎖間(分子間)相互作用を妨げる「エチニルユニット」を導入し、希土類錯体ポリマーの分子間相互作用を弱める。この分子設計により、希土類錯体ポリマーの結晶化を妨げ、ガラス化(アモルファス化)することを目指す。希土類錯体ポリマーのアモルファス材料化は新しい有機材料化学を切り開き、産業への応用展開(ディスプレイ素子、エレクトロルミネッセンス素子、LEDへの応用など)を導くと考えられる。本研究を推進することで、有機材料の新展開を目指す。 さらに、希土類錯体の熱耐久特性を向上させるため、希土類錯体を三次元的に固定化するカルボニルユニットを有機連結配位子として初めて導入する。この新規カルボニルユニット導入により、希土類錯体ポリマー間の結合が強くなり、高い熱耐久特性を示すことが考えられる。現在の希土類錯体ポリマーの熱耐久温度は300℃であるが、新しい有機連結ユニットの導入により、熱耐久温度400℃を目指す。400℃を超える有機分子材料はこれまで報告例がないため、本研究は有機材料の「無機化」とも言える新しい研究展開と位置づけられる。
|
Research Products
(14 results)