2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | New development in astrophysics through multimessenger observations of gravitational wave sources |
Project/Area Number |
24103005
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
神田 展行 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (50251484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田越 秀行 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30311765)
大原 謙一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00183765)
高橋 弘毅 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (40419693)
伊藤 洋介 東京大学, 大学院理学系研究科, 助教 (60443983)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 重力波観測 / コンパクト連星合体 / ブラックホール / 超新星 / 一般相対性理論 / 宇宙物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
KAGRAの最初の観測運転のデータの転送を本計画研究で準備した計算機システムでリアルタイムに受信、記録した。これに合わせて重力波イベント探索のためのパイプラインの開発を進めた。またイベント探索だけでなく、このデータを用いて検出器の状態評価などの解析も着手された。また本年度は米国LIGO実験での重力波の初観測にともない、その解説も研究の一環として行った。見つかった重力波の源は、先に計画研究A05とともに検討を行っていた初代星(Population III)である可能性があり、たいへん重要なトピックに着目していた事が示された。 1. クラスタ計算機のストレージ増強:KAGRAの観測データを受信・記録するためにストレージを増強し、計288 TiB のデータ保管を可能にした。 2. KAGRAからのデータ転送:本件度末(2016年3月)にはKAGRAが最初の観測をおこなった。本計画研究のクラスタ計算機にも自動でデータ転送を受け取るように構築した。岐阜県神岡鉱山内のKAGRA検出器から本システムにデータファイル転送完了するまでの待ち時間は約3秒である。 3. KAGRA解析ライブラリ KAGALIの整備:解析ライブラリの整備が急速に進んだ。 4. A05(理論)班との連携で進められていた第3世代星起源の連星合体重力波探索についての研究を、共著論文や国際会議で発表した。30太陽質量前後のブラックホール連星が重力波源になることを予想し、なおかつKAGRAやLIGOにとって検出しやすい信号(周波数帯域や振幅など)であることを示していた。LIGOによって初観測された重力波は、まさにこの質量のブラックホールであった。5. A03, A05班との連携した重力波とニュートリノの同時観測の研究について、第1段階での研究(超新星コアの回転判別の可能性)を査読付き学術論文に発表した。6. A01, A02 と連携して、重力波イベントのアラートをどのように受け渡すかの、技術的な面での検討が進んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の4年目であり、予定されていたKAGRA観測データについて、短時間での連続的な受信を成功した。イベント探索パイプラインも調整中であり、本計画研究の大きな目標である連続的なデータの受信と解析を達成できる見込みができた。 KAGRAのデータ解析ライブラリであるKAGALI (KAGRA Algolithmic LIbrary)の構築がだいぶ進み、本年度はエンドユーザーへ配布するヴァージョンの作成まで、ほぼ進行している。共同研究をより円滑にするプログラム環境が整いつつある。 本計画研究では、重力波イベントからどのような物理学的知見を得られるかをデータ解析の立場で研究することも重要視していた。初めて達成された重力波観測が、大質量ブラックホール連星からのものであったことは、この研究に大きな刺激をもたらした。大質量ブラックホールの起源に迫る研究としてはA05班との連携で進められていたが、一方で、この重力波波形が実際に観測されたことは、今後の探索パイプラインの設定に影響がある。すなわち、中性子星連星の場合に比べてずっと低い周波数帯域や時間的に短い信号波形を十分に考慮しなくてはならない。また、数十太陽質量のブラックホールであれば、もっと軽いものであれば不可能であったブラックホール準固有振動の解析が可能になる。準固有振動はブラックホール時空の解明し、時空の性質を探る基礎物理的な研究の対象となる。したがって、今まで以上に物理研究としての重力波観測の意義が重要になった。 本研究で雇用している計4名の研究員は、これらの研究で活躍し、いくつかのテーマで中心的役割をはたして学術論文や国際会議での発表を行っている。また、2名の研究員は平成27年度末をもって、他研究機関の特任助教や学術振興会の海外研究員に就くことができた。このように若手研究者の育成も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は最終年度であり、解析パイプラインの一応の完成と、重力波イベントアラートを出せるようにする(技術的な意味で。すなわちアラートが生じた場合に各種観測に提供できる仕組みを達成する)のが目標である。 計算機システムについては、パイプラインに必要な計算能力をできるだけ増強し、KAGRAほかのデータの解析に備えてゆく。 ソフトウエア面では、重力波探索パイプラインと解析ライブラリKAGALIの第1版を完成させたい。 重力波イベントを発見した場合のアラート発信システムについては、米国LIGOが構築した GraceDB と呼ばれるシステムに、我々の結果も載せられるよう、技術的協力を開始したところである。本年度のうちに、実際のKAGRAのイベントは難しい(KAGRA本体の運転計画や感度のため)が、技術的にアラート発信を可能にしたい。GraceDBは、LIGOのフォローアップ観測をおこなったA01,A02の計画研究はすでにここから情報を受けており、我々のアラートも可能になれば国際重力波解析網、フォローアップ観測網に加わるための技術的な問題をクリアすることになる。 最終年度として、積極的な研究成果の発表を行って行く。また育成してきた若手が研究者として定着できるように、昨年度以上に促進する。
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Research Products
(42 results)