2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
24109005
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山子 茂 京都大学, 化学研究所, 教授 (30222368)
|
Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 高周期典型元素 / テルル / 炭素ラジカル / ラジカル重合 / リビングラジカル重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
光反応による有機テルル化合物の活性化が極めて効率的に起こることから、有機テルル化合物を用いたリビングラジカル重合により合成した、成長末端にテルル基を持つ「リビングポリマー」を光により活性化し、反応生成物を解析することで、ラジカル重合における停止反応を定量的に解析できる可能性を提案した。さらに、代表的なモノマーである、スチレン、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸メチル(MA)に適応したところ、スチレンとMMAの停止反応は従来知られているように、それぞれ結合反応と不均化反応が主な停止機構であったが、従来明確にはされていなかった、分子量や温度の効果を正しく求めることに成功した。すなわち、従来は温度が高くなると不均化反応が増える、という報告が多いのに対し、温度が高くなると結合反応が多くなることを明らかにした。 一方、MAの停止反応では、ポリマー末端ラジカルの反応は高選択的に不均化反応であり、従来教科書にも記載されている結合反応という内容と異なることを明らかにした。さらに、アクリレートの重合ではバックバイティング反応により、ラジカルが成長末端からポリマー鎖中に移動することが知られているが、この反応によりポリマー鎖中ラジカルが生成すると、複数の反応が競合し重合系が複雑になるが、その中の主な反応経路として、β-ラジカル解離によるポリマー末端にα,β―不飽和結合を持つマクロモノマーの生成と、それに対する成長末端ラジカルの付加、それに引き続く不均化反応により、高分子量体のポリマーが生成することを明らかにした。従来の停止機構の解析では、本研究のような分子レベルでの生成物の解析をしていないことから、このような反応を考慮していなかったため、成長末端反応の反応性を見誤っていた可能性が高いことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究提案を行った、テルル化合物の価数を変えることで熱的なラジカル生成を高度に制御する、という課題については、化合物の不安定さから、極めて困難であることがわかった。その一方、有機テルル化合物の光に対する高い活性を利用することと、光反応の特徴を活かすことで、ラジカル重合の停止機構の解明という、基礎的で重要な課題の解決が可能であることを明らかにした点は新しい可能性を示す興味深い成果であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ラジカル重合は産業的に最も汎用性の高い高分子化合物の合成法であると共に、その重合機構もすべての高分子化学の教科書に記載されている基本的重合法である。一方、停止機構により、生成ポリマーの分子量と末端構造が変わるため、停止機構は最終的な高分子材料の物性までにも影響を与える重要な段階である。それにもかかわらず、これまでの理解は十分でなかったことを昨年度までに明らかにした。そこで、今後においては、その機構解明を他のモノマーへと拡大すると共に、新たに明らかになってきた疑問についても解明を行う。すなわち、一般に化学反応では温度が高くなるとエントロピーが増大する方向に反応が進みやすくなることから、高温では不均化反応が有利になると考えられるのに対し、我々は逆の結果、すなわち、高温で結合反応が有利になるとの結論を得た。この原因を明らかにすると共に、さらに一歩進んで、この原因を明らかにすることで、停止反応における不均化と結合反応の選択性を制御する可能性を探る。これまで、停止反応の制御が試みられた例は全くなく、極めてチャレンジングでかつ興味深い研究テーマと考えられることから、その達成を図る。さらに、ラジカル重合停止反応では、二つのラジカルのスピン状態が三重項から一重項に代わる必要があることから、一見単純な反応に見えるが、実際は極めて複雑である。適当な共同研究者との共同研究により、理論的解明も含めた検討を行う。
|
Research Products
(21 results)