2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
24109007
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 茂弘 名古屋大学, 物質科学国際研究センター(WPI), 教授 (60260618)
|
Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
Keywords | ホウ素 / π電子系 / 光反応 / 光物性 / フォトクロミズム / 高配位 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルボカチオンと等電子構造である3配位ホウ素を組み込むことにより,電子欠損型π電子系の創出が可能となる.本研究では,新奇な電子欠損型含ホウ素π電子系の創出と安定化に取り組み,この感応性化学種の応用開拓を目指す.本年度は,主に以下の2点について検討した. 【電子欠損型π電子系の安定化の新手法の確立】含ホウ素π電子系材料の設計では,いかに安定化するかが鍵を握る.本研究では,速度論的安定化に適した立体保護基の開発,構造固定による安定化,5配位ホウ素構造の実現による安定化の3つのアプローチにより取り組んでいる.本年度は,新たな立体保護基の開発を進めるとともに,構造固定による安定化で得られる安定ボラン骨格を用いた液晶材料の開発に成功した. 【電子欠損型π電子系の励起状態,還元状態の電子状態解析】上記で合成したホウ素液晶は,トリフェニルボラン骨格の平面構造に由来して,カラム状にπスタックしたディスク状液晶を室温を含む温度域で形成する.この状態での電荷移動度の評価を吉尾(東大)との共同研究によりTOF法を用いて行い,両極性の電荷輸送特性を示すことを明らかにした.また,トリアリールボラン類の新たな光反応様式である1,6-水素移動反応の機構についても,吉澤(九大),池田(阪府大)との共同研究により引き続き検討し,その詳細を明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目指しているのは,含ホウ素π電子系の安定化法の確立と,得られる化合物の電子状態解析,有機デバイスへの応用である.昨年度には5配位構造の形成によりホウ素化合物の安定化が可能なことを報告した.本年度は,速度論的安定化に適した新たな立体保護基の設計,合成に取り組むとともに,もう一つの重要なアプローチである「構造固定による安定化」で得られるボラン骨格の液晶化に成功した.前者ではジベンゾボロールを対象とし,新たな立体保護基を導入した誘導体の合成した.熱的安定性に対する置換基の効果など,詳細な検討を進めているところである.また後者に関しては,平面固定トリフェニルボランをコア骨格に用い,3方向に共役を拡張した誘導体が,室温を含む温度域でヘキサゴナルカラムナー相を形成することを明らかにした.X線解析によるとカラム内の分子間面間距離は3.57オングストロームと密なπスタック構造をとり,ホウ素が一次元に並んだ分子配向を形成することがわかった.通常プロペラ構造をもつトリアリールボランでは実現が難しいと考えられてきた凝集構造を平面固定化により達成したことになる.吉尾(東大)との共同研究により,この液晶状態での電荷輸送特性をtime of flight (TOF)法により評価したところ,正孔,電子ともに輸送する両極性の電荷輸送特性を示すことが明らかとなった.本成果は,平面固定化ジベンゾボレピンなど,他の骨格にも展開可能な知見である.またこれらの成果の他にも,昨年度来取り組んでいるトリアリールボランの新たな光反応様式である1,6-水素移動反応の機構解明についても吉澤(九大),池田(阪府大)との共同研究により引き続き検討し,その詳細を明らかにし,現在論文作成中である.全体としては,当初計画に従って順調に進んでいることに加え,新たな展開もできており,順調に進点していると評価できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
電子欠損型π電子系として平面固定化ジベンゾボレピンの合成に引き続き取り組む.これまでにその合成にも予備的ながら成功しており,合成経路の改良による効率的合成の実現について検討を進めているところである.この化合物は,6π芳香族性に由来した安定性と特徴的な電子構造を併せもつ骨格であり,加えて,ホウ素原子の上下が空いており,分子間相互作用が十分に期待できる.今回,π共役骨格の拡張による液晶化にディスク状液晶の形成がトリフェニルボラン骨格で示すことができたので,この手法を展開することにより,分子配向を制御した平面固定ジベンゾボレピン類の合成に取り組み,高い電子輸送能の獲得を目指す.また,ホウ素置換ジベンゾボレピン以外でbora-Nazarov型の反応が進行する分子系の探索も引き続き進め,新たなフォトクロミック分子系としての応用の可能性についても探りたい.
|
Research Products
(16 results)