2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
24109007
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 茂弘 名古屋大学, 物質科学国際研究センター(WPI), 教授 (60260618)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | ホウ素化合物 / π電子系 / 有機エレクトロニクス / ボレピン / 電子輸送材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルボカチオンと等電子構造である3配位ホウ素を組み込むことにより,電子欠損型π電子系の創出が可能となる.本研究では,新奇な電子欠損型含ホウ素π電子系の創出と安定化に取り組み,この感応性化学種の応用開拓を目指す.本年度は,主に以下の2点について検討した. 【電子欠損型π電子系の安定化の新手法の確立】含ホウ素π電子系材料の設計では,いかに安定化するかが鍵を握る.本研究ではその一つの手法として構造固定による安定化を提案し,種々の平面固定ホウ素π電子系の合成を進めている.今回,ホウ素上のフェニル基を平面固定化したB-フェニルジベンゾボレピンの合成に成功した.この化合物も立体保護なしでも十分に安定であり,また,平面固定トリフェニルボランと同様のいくつかの特徴的なルイス酸性・反応性を示した.さらに電子供与性のトリフェニルアミン骨格を導入したドナー・アクセプター型π電子系が特に優れた蛍光特性を示すことを明らかにした. 【電子欠損型π電子系の電子状態解析】昨年度,吉尾(東大)との共同研究により,平面固定トリフェニルボランをメソゲンに用いたディスク状液晶の両極性電荷輸送能について明らかにした.本年度は,この特性をさらに深く理解するために,炭素類縁体である平面固定フェニルアントラセンの合成に取り組み,その基本骨格の電子供与性に富んだ電子特性について明らかにした.さらにこの骨格をメソゲンに用いた液晶の合成に成功し,それがホール輸送能のみを示すことをTOF測定により示した.この結果は,先のホウ素π電子系液晶の電子輸送能の発現に,ホウ素の電子欠損性が寄与していることを示唆する結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目指しているのは,含ホウ素π電子系の安定化法の確立と,得られる化合物の電子状態解析,有機デバイスへの応用である.昨年度には,「構造固定による安定化」で得られるボラン骨格の液晶化に成功し,吉尾(東大)との共同研究により,正孔,電子ともに輸送する両極性の電荷輸送特性を示すことが明らかにした.本年度は,この特性をより深く理解するために炭素類縁体の合成に取り組み,合成した平面固定フェニルアントラセンをメソゲンとする化合物が同様の液晶状態を形成するものの,ホウ素体とは大きく異なる電荷輸送特性を示すことを実験的に示し,ホウ素を骨格に組み込むことの効果を明らかにした.また,本研究の当初からの重要な標的化合物の一つである平面固定B-フェニルジベンゾボレピンの合成にも成功し,この骨格が平面固定トリフェニルボランと同様の反応性をもつと同時に,電子供与性トリフェニルボラン骨格との組み合わせにより優れた蛍光材料になることを明らかにした.電子欠損性π電子系の基礎的知見を着実に蓄積し,かつその応用の可能性も見いだしつつあり,順調に研究を遂行できているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに知見をもとに次の2点に焦点を当て研究を推進する. 【電子欠損型π電子系の開発と光機能性】すでに3配位トリアリールボランの平面固定化が,立体保護なしでも十分に有効な安定化の手段となりうることを示してきた.そして,平面固定化ジベンゾボレピンの合成に成功し,この骨格に電子供与性のトリフェニルアミン骨格を導入したドナー・アクセプター型π電子系が,極性溶媒中においても量子収率がほぼ1に近いという特に優れた蛍光特性を示すことを明らかにした.そこで本年度は,この物性発現の起源について更に深く理解し,成果を取りまとめたい.また新たに平面固定ジベンゾアザボリンの合成にも取り組み,窒素架橋部位の修飾によるホウ素のルイス酸性の制御に基づいた機能発現の可能性についても検討したい. 【電子欠損型π電子系のフォトクロミック機能の追究】これまでにジメシチルボリルアレーン類に光照射すると,興味深い環化反応が進行しスピロボラインダンを生成することを明らかにしてきた.この反応機構について吉澤(九大)ら,池田(阪府大)らとの共同研究により理論・実験の両面から解明に取り組んできたが,理論的検討の中で新たな知見が得られてきた.この結果をより詳細に理解し,成果を取りまとめる.この反応を基盤に他の光反応性ホウ素化合物の創製にも取り組みたい.
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Research Products
(19 results)