2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
24109013
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
時任 宣博 京都大学, 化学研究所, 教授 (90197864)
|
Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 高周期典型元素 / 低配位化学種 / 触媒 / 立体保護 / キレート配位子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、高周期典型元素の多様な配位・酸化状態を活用した分子活性化触媒の創製を目的として、低配位状態の高周期14族元素化学種や高周期15族元素配位子の設計、合成、および性質や反応性解明を行なっている。 本年度は、①特異な電子状態・分子構造を有するケイ素二価化学種の合成、②ゲルマニウム間三重結合化合物ジゲルミン(RGeGeR)を感応性化学種とした結合活性化・分子変換反応、③三つのC=P二重結合を[3]ラジアレン骨格に組み込んだπ受容性分子であるトリホスファ[3]ラジアレンの遷移金属錯体配位子としての応用、の三つのテーマについて主に検討を行なった。 テーマ①については、安定な1,2-ジブロモジシレンAr(Br)Si=Si(Br)Ar(Ar:かさ高いアリール基)とN-ヘテロ環状カルベン(NHC)との反応によって、二つのNHCがケイ素上に結合した新しいタイプのケイ素カチオン種[Ar(NHC)2Si:]+の合成に成功した。このケイ素カチオン種は形式的にはNHC配位したシリリウムイリデンカチオン[ArSi:]+とみなすことができるが、実際には、二つのイミダゾリウム基が置換したシリルアニオン構造の寄与が大きいことが示された。 テーマ②では、安定なジゲルミンArGeGeAr(Ar:かさ高いアリール基)とアセチレンとの反応によって初めての1,2-ジゲルマベンゼンの合成に成功し、ジゲルマベンゼン部位が高い芳香族性を持つことを明らかにした。また、アルケンとの反応でもユニークな可逆的結合活性化が起きることを見出した。 テーマ③では、トリホスファ[3]ラジアレンと6族・10族遷移金属錯体との反応によって単座または二座で金属へ配位した錯体を合成した。トリホスファ[3]ラジアレンの高いπ受容性を反映して、金属からのπ逆供与が既存のホスフィン・ホスファアルケン配位子に比べ増大していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、高周期典型元素を中心とした小分子活性化触媒の開発を目的としている。前年度までに目的化合物の一つであるカチオン性低原子価スズ化合物の合成を検討し、その前駆体であるN-ヘテロ環状カルベン(NHC)が配位したハロゲノスタンニレン(R(X)(NHC)Sn:)の合成、構造や反応性について検討してきたが、目的としたカチオン性スタンニレンを得るには至っていない。そこで本年度の研究では、目的とする高周期14族元素化学種の一つであるNHCが配位したカチオン性ケイ素化学種の合成を検討したところ、1,2-ジブロモジシレンAr(Br)Si=Si(Br)Arを低原子価ケイ素等価体として用いることで、NHC配位子を有するカチオン性ケイ素二価化学種[Ar(NHC)2Si:]+の合成に成功し、その特異な電子状態を明らかにした。 また、前年度に行ったP=C二重結合を配位部位としたP,P-キレート配位子に関する研究を発展させ、さらに高いπ受容能を持つトリホスファ[3]ラジアレンの遷移金属配位子としての応用を検討した。実際に6族や10族の遷移金属に対し単座・二座型での配位が可能であることを確認でき、予想通り優れたπ受容性配位子として働くことを示唆する結果を得た。今後、トリホスファ[3]ラジアレン錯体を用いた触媒反応を検討する。 また、ゲルマニウム触媒への展開が期待される感応性化学種であるゲルマニウム間三重結合化学種ジゲルミンとアルキン・アルケンとの反応を検討し、アセチレンとの反応において初めての1,2-ジゲルマベンゼンの合成に成功し、その芳香族性を明らかにすることができた。ゲルマニウム低配位化学種による結合活性化に対する新しい知見を得るとともに、芳香族性の概念を拡張する重要な結果であると考えている。さらに、アルケンとの反応でもユニークな結合活性化反応を見出している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で合成したNHC置換カチオン性ケイ素化学種[Ar(NHC)2Si:]+と、アルケン・アルキンなどの不飽和化合物や、水素・一酸化炭素といった無機小分子との反応を精査し、高周期14族元素二価化学種を用いた分子活性化を検討する。また、ジゲルミンArGeGeArと様々な不飽和化合物との反応を行い、低配位ゲルマニウム化学種を用いた新規炭素-炭素結合変換反応の開発と、その触媒化を検討する。さらに、テーマ③で述べたトリホスファ[3]ラジアレン金属錯体の遷移金属上での基本的な反応様式を明らかにした上で、触媒反応への適用をはかる。
|
Research Products
(32 results)