2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
24109015
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉本 秀樹 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00315970)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 合成化学 / 金属錯体化学 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
1,5-ジアザシクロオクタン骨格に2-ピリジルエチル基を導入した配位子を持つ単核銅(II)エンドオン型スーパーオキソ錯体の反応性について検討した。低温、アセトン溶液中でTEMPOH (4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethyl-piperidine)を加えると、基質からスーパーオキソ錯体への水素原子移動反応が進行し、単核銅(II)-ヒドロペルオキシド錯体が生成した。同条件下でフェノール誘導体を加えると、単核銅(II)フェノレート錯体が生成した。また、反応系中から過酸化水素が約50%の収率で得られたことから、本反応はプロトン移動反応を律速段階として進行していることが示唆された。また、フェロセン誘導体などとの反応により、スーパーオキソ錯体の一電子還元電位を見積もるとともに、ペルオキソ錯体を生成させた。 配位原子を酸素、硫黄、セレンと系統的に変えた等構造をとるジオキソ-、オキソ-スルフィド-、オキソ-セレニド-モリブデン(VI)錯体を合成した。オキソースルフィド錯体およびオキソ-セレニド錯体は三級リンへの選択的な硫黄あるいはセレン原子移動反応を示した。原子移動速度はSe > S >> Oの順で速くなり、酸素とセレンの原子移動では10000倍違っていた。スルフィドやセレニド基を持つ錯体のLUMOの成分には硫黄とセレンの寄与がそれぞれ34%、35%程度含まれるのに対し、ジオキソ錯体では9%しか酸素は寄与せず、このことが原子移動反応性を支配していると結論した。 すでに合成に成功したアルケンのシスジオール化を触媒するオスミウム錯体をに用いると、脂肪族アルケンから電子求引基含有アルケンまで様々なアルケンに対して選択的なシスアミノアルコール化が進行した。各種分光学的手法や計算化学から、この反応における活性酸化剤はオスミウム(V)―オキソ-アミナト錯体であると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画研究では、「感応性金属酵素中心モデルの構築と機能発現」と題して、酵素触媒サイクル中に存在する準安定化学種を感応性化学種として積極的にとらえることを目的としている。つまり、構造面および反応面から合成化学的に感応性金属酵素をモデル化し、外部刺激応答性を解明するとともに、その機能と構造・電子状態との相関関係を調べて、酵素反応機構などを解明する。具体的には、分子状酸素を還元的に活性化する鉄や銅酵素、過酸化水素を酸化剤に利用する鉄や銅酵素、水を酸化的に活性化するモリブデンやタングステン錯体中に含まれる感応性構造を標的とする。さらには、感応性モデルから得た直接的情報を基に人工酵素の構築をおこなう。 1,5-ジアザシクロオクタン骨格に2-ピリジルエチル基を導入した配位子を用いて、低温下で単核銅(II)エンドオン型スーパーオキソ錯体の調整に成功し、その準安定状態の構造や各種分光学的性質を明らかにし、化学的反応性との相関を解明したことは、本領域「感応性化学種」の概念に合致する。 モリブデン酵素モデルに関しても、配位原子を酸素、硫黄、セレンと系統的に変えた等構造をとるジオキソ-、オキソ-スルフィド-、オキソ-セレニド-モリブデン(VI)錯体を低温下で準安定種として合成することによって、各種分光学的性質を測定することができ、化学的反応性との関係を明らかにすることができた。 人工金属酵素の開発では、アルケンのシスジオール化を触媒するRieske dioxygenaseのオスミウム置換モデル錯体を合成し、過酸化水素を酸化剤とすることにより、原子効率100%でジオール化が進行する系を構築し、酸化活性種の構造や反応機構などを明らかにすることができた。 以上のように、モデルの合成だけでもなく、化学的反応性だけでもない、両者を橋渡しする「感応性化学種」を構築できている。
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Strategy for Future Research Activity |
最も不活性な炭化水素であるメタンをメタノールに酸化するメタンモノオキシゲナーゼ(pMMO)の酸化活性種の構造が、最近、本領域A04班 九州大学 吉澤教授らにより提案された。その構造は銅(II)銅(III)の混合原子価二核銅種であり、合成化合物としてはいままで報告例がない。さらに、左右で配位ヒスチジンの数(2 vs. 3)やオキソ基とヒドロキソ基により架橋されている点が特徴である。この中心構造をモデル化するために、配位原子数や異なる配位環境を提供できるL3を合成し、その銅(I)錯体を合成し、分子状酸素との反応を調べる。さらに、配位子L3の銅二価錯体も合成し、電気化学的、あるいは化学的に酸化するなどして、混合原子価種を生成させる。この銅錯体に置いても、上記錯体と同様に必要に応じてキレート環員数や置換基などを導入して、安定性や反応性などを制御する。 モリブデン・タングステン感応性酵素中心モデルに関しては、アルコラト、チオラト、セレノラトーモリブデン六価錯体を合成する。合成したモデル錯体については酵素様反応を調べる。 バイオインスパイアードOs錯体触媒を用いて、アルケンのジアミノ化や1, 5―ジエン類の酸化的環化反応によるテトラヒドロフラン環の合成を試み、金属酵素中心を範とする人工触媒系を構築する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] A New Series of Bis(ene-1,2-dithiolato)tungsten(IV), -(V), -(VI) Complexes as Reaction Centre Models of Tungsten Enzymes: Preparation, Crystal Structures and Spectroscopic Properties2013
Author(s)
Hideki Sugimoto, Kohei Hatakeda, Kazuo Toyota, Susumu Tatemoto, Minoru Kubo, Takashi Ogura, and Shinobu Itoh
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Journal Title
Dalton Transactions
Volume: 42
Pages: 3059-3070
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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