2012 Fiscal Year Annual Research Report
Identification and Functional Analysis of Stimuli-responsive Chemical Species during Enzyme Reaction
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
24109017
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 豪 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20263204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 努 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (10357668)
松村 浩由 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30324809)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | ペルオキシレドキシン / スーパーオキシドディスムターゼ / 反応機構解明 / 中性子線構造解析 / Ⅹ線構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
超好熱性古細菌A. pernix K1由来ペルオキシレドキシン(ApPrx)が過酸化水素を水に還元するという活性の発現には、反応中心のシステイン残基(peroxidaticCys, Cp)とともに近傍のヒスチジン残基(His)が必須である。Cpのチオール基が過酸化水素を攻撃するさいに、その硫黄原子がHis側鎖の窒素原子と共有結合し、超原子価中間体(S-OH中間体)を形成する。本研究課題では、S-OH中間体の中性子線構造解析、およびS-OH中間体前後の過程の低温トラップ法による時分割X線構造解析を行い、詳細な反応機構の解明を目指す。また、新たな標的であるA. pernix K1由来の金属酵素スーパーオキシドディスムターゼ(ApeSOD)がスーパーオキシドアニオンラジカル(・O2-)を酸素と過酸化水素に不均化する反応の詳細な機構の解明をも目指す。 ApPrxのS-OH中間体は、硫黄原子のまわりの水素原子と不対電子の位置関係や、イミダゾール部分のプロトン化状態など、未だ観測されていない課題がある。また、SODの基質(・O2-)と生成物(O2, H2O2)はすべて酸素原子2個からなっており、X線結晶解析では区別がつかない。したがって、中性子回折を利用した構造解析が必要である。通常、中性子構造解析のためには1 mm角を超える大型の高品質結晶が必要となるため、24年度はApPrxの大量精製、ミクロ種結晶化法、マクロ種結晶化法を駆使した種結晶化を繰り返し、大型結晶育成のための結晶化実験に取り組んた。いずれも多結晶化が起こり、中性子線回折実験には至っていない。一方、ApeSODについても同様に大型結晶の作製に取り組んだ。これに成功すれば、直ちに構造解析を試み、反応機構の解明にも取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初の計画通り、専属の研究員を採用することができ、また様々な分子種の相互作用を測定できる等温滴定カロリメトリー装置を導入できたこ とによって、研究はおおむね順調に進展していると考えている。 ただし、大型の高品質結晶の育成では多結晶化が問題となっており、新たな蛋白質 コンストラクトの作成や大型結晶育成技術の構築が今後の課題である。 また、中性子構造解析が困難な場合に備えて、高分解能X線解析によってより詳細な反応機構を解明することも必要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、超好熱性古細菌Aeropyrumpernix K1由来ペルオキシレドキシン(ApPrx)の酸化反応中に生成する超原子価中間体(スルフラン中間体)の解析を中心に置いている。平成25年度は、Prxにおけるスルフラン中間体の一般性を明らかにすること、ApPrxの中性子解析を容易にすること、の2点を目標にして研究を推進する。 ApPrxのスルフラン中間体は、活性中心のシステイン残基(peroxidaticCys, Cp)と、その8残基上流にあるヒスチジン残基(His)が共有結合し、さらに過酸化水素由来の水酸基が加わった構造をしている。ところがそのHis残基はPrx全てに保存されているのではなく、Prxを6種類に分類したときの1つのグループ(Prx6)のみに保存されている。古細菌由来のPrxはPrx6に分類され、Hisが保存されている。ならば、スルフラン中間体はPrx反応の進化初期においては一般的であったのだろうか。この問いに答えるため、嫌気性超好熱性古細菌Pyrococcusfuriosus由来Prxの構造解析を開始し、スルフラン中間体の検出を目指す。 タンパク質の中性子解析には大型結晶が必要であり、ApPrxの結晶の大型化には従来から取り組んでいるところである。一方で、中性子解析を容易にするファクターは結晶の大きさだけではなく、格子定数の小ささ、対称性の高さなども考慮する必要がある。ApPrxはリング状の十量体であり、その結晶は空間群P1で、その非対称単位には10分子入っている。この現状では、格子定数・対称性ともに中性子解析には適していない。そこで、変異解析によりApPrxを二量体化し、より中性子解析に適した結晶を得ることを目標とする。
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