2012 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms by which microenvironmental niches regulate production of immune cells.
Project Area | Analysis and synthesis of multi-dimensional immune organ network |
Project/Area Number |
24111003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長澤 丘司 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (80281690)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 免疫学 / 再生医学 / 発生・分化 / 微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄は免疫四次元空間の形成の中枢臓器であり、すべての免疫担当細胞は、骨髄で造血幹細胞から産生され、その種類や数がニッチ(niche)と呼ばれる特別な微小環境(場)によって精緻に制御されているがその機構は明らかでない。私たちは、造血幹細胞の維持や免疫担当細胞の産生に必須であるケモカインCXCL12を高発現し突起を持った細網細胞(CAR細胞)を骨髄で同定し、CAR細胞が造血幹細胞・前駆細胞に必須のニッチ細胞であることを証明した。そこで骨髄とCAR細胞に注目して、免疫担当細胞数の恒常性を維持する機構の解明を目的とした研究を行った。 (1)造血幹細胞や免疫担当細胞が大幅に喪失すると増殖が促進し、一定の細胞数に達すると増殖が停止する。この重要な現象に注目し、抗がん剤で血液細胞を枯渇させたあと造血幹細胞数の回復期と回復が終了する期間を特定し、それぞれの時期でCAR細胞を分離し、遺伝子発現量を比較し、差が大きい遺伝子をサイトカインや転写因子に注目して検索した。 (2) CAR細胞は、複数種類の造血幹細胞・前駆細胞と免疫担当細胞のニッチであるためCAR細胞の各造血細胞に対する特異的作用の存在が示唆される。Osxの骨芽細胞特異的プロモーターの下流にCreを結合した遺伝子を持つトランスジェニッックマウス(Osx-Cre Tg)とloxP-EGFPマウスを交配したところ、CAR細胞の約88%でCreが作用することが明らかになった。また、CXCL12 Floxマウスを作製し、Osx-Cre Tgと交配したところ、B細胞が著明に減少したことから、Osxを高発現する細胞由来のCAR細胞が産生するCXCL12がB細胞の産生に必須であることが確認された (Greenbaum, A., et al. Nature 2013)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨髄ニッチによる免疫担当細胞の維持機構の解明に向けた研究が順調に進んでいる。骨髄の造血ニッチを構成する細胞に関しては、従来の骨芽細胞、血管内皮細胞、CAR細胞に加えて、2010年以降、Nestin発現細胞、シュワン細胞、PαS細胞が報告されている。したがって、以前私たちが報告した「CXCL12-CXCR4シグナルやCAR細胞の造血幹細胞・前駆細胞における必須の機能」という本研究の基盤となる知見が米国の複数のグループにより確認された(Greenbaum et al. Nature 2013; Ding et al. Nature 2013)ことは、本研究を推進する上で重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究でCAR細胞の約88%でCXCL12を欠損させるとB細胞が著明に減少したが、造血幹細胞の減少は半分であったことから、CAR細胞による造血細胞の細胞数の調節機構は造血幹細胞とB細胞とで異なることが示唆された。このメカニズムはニッチによる免疫担当細胞の維持機構の理解に重要であるため、その解明を試みる。 更に、引き続き、抗がん剤で血液細胞を枯渇させたあと造血幹細胞数の回復期と回復が終了する期間を特定し、それぞれの時期でCAR細胞を分離し、マウスのCAR細胞やその他の細網細胞、骨芽細胞、骨細胞、血管内皮細胞等の骨髄間質系細胞を分離し、mRNA発現量とタンパク質発現量を解析する。免疫担当細胞の細胞数の維持に重要である候補遺伝子が見出せれば、その生体での機能を明らかにするため、CAR細胞特異的遺伝子欠損マウスの作製に着手する。 また、単離したCAR細胞と血球の相互作用を試験管内で観察できる系の樹立を進める一方で、生体内のCAR細胞でのシグナル分子の特異的発現と機能を明らかにするために、造血幹細胞・前駆細胞の細胞数の維持に重要である候補遺伝子のCAR細胞における発現を検討する。
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