2014 Fiscal Year Annual Research Report
免疫神経インターフェースにおけるシグナル授受の構造的基盤
Project Area | Analysis and synthesis of multi-dimensional immune organ network |
Project/Area Number |
24111006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高木 淳一 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (90212000)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 免疫-神経インターフェイス / X線結晶構造解析 / 電子顕微鏡イメージング / インテグリン / セマフォリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、X線結晶構造解析と電子顕微鏡イメージングという分解能の異なる手法を併用し、免疫-神経インターフェースの素反応を司る分子実体の構造生物学的解明を目指している。主なターゲットとして、(1)インテグリンを中心とした接着受容体の解析と、(2)セマフォリン(Sema)・プレキシン(Plexin)系を中心とした細胞間シグナル授受メカニズムの解析、(3)神経細胞やニッチ細胞の恒常性維持に働く蛋白質の構造機能解析、を行った。 研究1(インテグリン受容体系):α6β1インテグリンについては、構造安定性に関するこれまでの検討結果を元にデザインした組み換え蛋白質を大量に精製して結晶化を開始した。また、リガンドであるラミニン断片の結晶化に成功した。α5β1インテグリンについては脂質二重膜(ナノディスク)に組み込み、ネガティブ染色による電子顕微鏡を用いて一分子イメージングに成功した。 研究2(セマフォリンシグナル系):Sema3A受容体のPlexin A1について、企業との共同研究によってアゴニスト活性をもつ抗体の取得に成功し、そのエピトープ同定および複合体の電顕イメージングも達成した。また、Sema4Dシグナルを阻害する環状ペプチドとPlexin B1の複合体の2.8Åでの構造決定に成功した。さらに、神経系および免疫系で働くSema3Aについて、マウスとヒト両方の蛋白質を認識する活性阻害抗体の開発にも成功した。 研究3(神経、ニッチ細胞系):ニューロン特異的受容体蛋白質sorLAについて、それがアミロイドペプチドを結合している状態で複合体の結晶構造解析に成功し、その成果が論文になるとともに各種メディアにも取り上げられた。また、ニッチ細胞から産生され幹細胞の維持や分化に必須なWnt蛋白質について、活性を保ったままの精製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究1において、α6β1インテグリン自身の結晶化に先駆けて、リガンドであるラミニンの結晶化を達成し、世界初の構造決定がH27年度中には達成できる見込みである。α5β1インテグリンについてもナノディスクへの組み込みと電顕イメージングに成功し、β1インテグリンの「膜上での構造」を明らかにすることができた。研究2については様々な免疫関連疾患の治療法開発に役立つ抗体(プレキシンA1のアゴニスト抗体、Sema3aの阻害抗体など)の開発が進み、骨粗鬆症薬のリードとなる可能性があるペプチドがターゲットであるプレキシンB1に結合している状態の構造解析を達成するなど、予想を上回る成果が上がってきている。さらに研究3においては、上記のようにアルツハイマー病の新規予防法開発にもつながり得る成果を挙げ、新聞、テレビなど各種メディアに紹介された。それに加え、幹細胞からの様々な細胞分化誘導に必須なWnt蛋白質の安定な生産を可能にする発見があり(論文執筆中)、特許出願も済ませた。よって総合的には「①当初の計画以上に進展している」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、研究項目すべてで順調、もしくは予想を上回るペースで研究が進んでいる。研究1の中ではα6β1インテグリンの結晶構造解析のみ未だ確実に達成する目処が立っていないが、昨年度から続けているラミニンの構造決定は間違いなく見込めるため、今後はリガンド複合体の構造決定に向けてエフォートを注ぐ。研究2ではプレキシンB1の骨細胞における機能解析がうまく行っていないが、それに代えてヒト培養細胞株を用いた細胞機能試験の系を立ち上げる事に成功したので、領域内の細胞機能研究者との連携をさらに強めて、メカニズムの解明と創薬応用をともに目指していく。研究3においては、医学生物学的要請が非常に高いほ乳類Wnt蛋白質の構造解析(まだ世界で誰も成功していない)に高いプライオリティをおいて研究を進める。
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Research Products
(36 results)